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最近見なくなったカミキリ虫
仕事から帰ってきた母さんが、
玄関を開けるなり、
荷物を置いて、
外の花に水やりをしている様子だったが、
水やりを終えて、
なんだかぼそぼそと口を動かし、
けげんな顔をしている。
そして、
私がたっている玄関口の方へ。
私に気づいた母さんは、
『カミキリ虫』
と、
代車のボンネットの上を指さした。
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たしかに、
何かいる。
でも、
目が悪い私には、
はっきりとその姿をカミキリ虫だと認識できない。
つっかけを履いて近づいた。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/83365324/picture_pc_905e19ee6578fbc9a0fc0d2556001305.png?width=800)
正真正銘のカミキリ虫だった。
『昔はよーけおったのに、
今は見んようになったなー。
今度は生きて会おうな。』
そう言って、
母さんは、
カミキリ虫を
山の土に還そうと、
カミキリ虫をがしりと掴んで、
緑の中に葬った。
白の斑点模様のあいつは
草むらに消えた。
あとから聞いた話だが、
花に水をやっていたら、
植木鉢の中でカミキリ虫が死んでいたらしい。
最近見なくなったカミキリ虫だから、
私に見せようとわざわざ
ボンネットの上に、
その骸を置いたらしい。
私が虫嫌いだと知っているはずなのに、
そうまでして見せたかった虫。
母さんにはどう映っているのだろう。
立派な触角と
白い斑点をまとった昆虫。
私にはそんなことしかわからない。
生きてその姿を表すのは、
母さんの前だけにしてほしい。、
そして、
母さんに
なんでそんなに見せたかったのか聞いた。
『やっぱり、気候がおかしい。』
だいぶ壮大なテーマだった。
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ずっと、
虫や動物と共存したきた母さんにとって、
今までと異なる自然の変化は脅威なようだ。
そして、今、
とても敏感に感じ取っている。
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