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1つの魂のお話 4

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私の番がきた。
「神様、私は人間にはなりたくありません。次はてんとう虫にしてください。」
「・・・・・」
初めての要望だったのか、神様は一瞬無言になる。
「いいけど、てんとう虫は、命が短くて生と死が早く来るよ?それでもいいの?」
この世界では生と死の瞬間が最も辛いと言われている。
確かに、生と死は苦しい。
でも人間に生まれるよりはマシだ。
人間で何十年も生かされるより、寿命が短くて生と死を何度も経験した方がマシだ。
「神様、それでもいいです。私はてんとう虫になって、命をまっとうします。どうかお許しください」
「本当は人間に生まれるべきですが、良いでしょう。今回はてんとう虫になりなさい。しっかりと命をまっとうしてくるのですよ。人間から還俗したからと言っておごってはダメです。てんとう虫として真面目に生きるのですよ」
「はい、わかりました神様。てんとう虫としてしっかりと命をまっとうします。」

日の光に包まれ、緑の巨大な葉っぱの上で目が覚めた。
あれ?何だっけ?
ここはどこだ?
そっか生まれたのか。
今回は、随分と見える景色が違うな。
全てがとても大きくて、日差しが暑い。

あれ?飛べるんだっけ?
うまく翼が動かないけど、いつか飛べるようになるかもしれない。

ふと辺りを見渡すと、仲間がいた。
今回の仲間は黒と赤の模様で、面白い形をしているな。
自分も同じ形をしているのだろうか?

みんな、もそもそ動いて食べ物を探している。
あぁそうか。
もう何も恐れる事はない。ただ食べ物を探すだけでいいのだ。
話す必要もない働く必要もない。

あぁなんて平和なんだろう。
なんて美しい世界なんだろう。
次の瞬間もう、命が終わってしまった。

あれ?もう終わり?
あっという間にてんとう虫の命が終わってしまった。

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