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黒ヤギと白ヤギ 中

ある春の日のこと。

雄の白ヤギのヤーは旅の途中に小さな家を見つけました。
小さな家は、玄関の周りが自分の頭が出るくらいの壁で囲まれている不思議な家でした。
ヤーはその家が何故だかどうしても気になりました。

☆  ☆  ☆

家に近づいて壁をじっと覗いていると、こちらに気づいたのか家の主と思われる小さな生き物が背伸びをして壁の向こう側からこちらを見ていました。
その生き物が何なのか気になったヤーは、壁を飛び越えて向こう側へ入りました。
すると、自分の半分も無いんじゃないかと思うくらいの小さな雌の黒ヤギが一匹。
黒ヤギは驚いたようにキラキラと輝くまんまるの赤い目を大きく開き、小さな口をぽかんと開けてヤーを見つめます。
「僕はヤー。君は誰だい?」
とヤーが聞くと「…セラ・クリスタ」と黒ヤギは瞬きをして、まじめな顔になって言いました。
「不法侵入ですよ。犯罪です」と言いました。
ヤーはごめんと何度も謝って、何とか許してもらいました。

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