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九七式艦上攻撃機

さて、うみラボとして、初のコンサルティングの仕事をしてきました。

水中文化遺産の調査、保存、活用に関するサポートを行ないますが、今回は「保存」のアドバイス。大分県宇佐市に行ってきました。

宇佐と言えば、宇佐神宮が有名ですが、海軍航空隊が設置され、特攻基地として有名でした。今では田んぼや畑の広がるのんびりとした町で、どことなく懐かしく過ごしやすさを感じる町ですが、米軍による空襲を受けています。基地があったことを知らないと、「こんなところで空襲があったの?」と思ってしまいます。バクダン池なども有名です。


お仕事の内容について…

宇佐市は、種子島沖で発見・引き揚げられた「九七艦上攻撃機」を引き取り、保管しています。

97式は、造られた機体の数は少なくはないものの、実機が全く残っていません。アメリカとイギリスに船体の一部が残されているのみでした。以前より、種子島の北の沖に、飛行機が沈んでいるとの情報があり、調べたところ97式であるとのことでした。

機体がひっくり返っており、コクピットの中に遺骨が残されているのではないかと話題になり、引き上げが計画されました。このプロジェクトには、私も種子島の関係者と一緒になりいろいろと関わっておりました。夏に引き上げられ、宇佐市が引き取ることになりました。


考古学に詳しい方はご存じでしょうが、海水から引き揚げた遺物は、保存処理をしないとどんどんボロボロになってしまいます。塩を含んだまま乾燥すると、内側から金属が崩れていく…。せっかく残っている期待も、数十年で崩れ去ってしまっては、大変。

保存処理と言えば、様々な薬品を使って脱塩処理を行ない、金属の表面を樹脂などで固めて錆が進行しないように処理をします。考古学遺物の場合、この作業は、慣れればそこまで大変ではないのですが…。

これは、飛行機。かなりの大型な遺物。さらに、鉄や銅、木材、ガラス、船体はジェラルミン...。様々な素材のパーツが組み合わさってできています。銅にはセスキ炭酸ソーダを使うと良いけど、鉄や木材には悪影響が出たり...。木材には特殊な樹脂が使えても、鉄にはダメ...。

異なる種類の素材が組み合わさっている遺物は複合遺物と呼ばれますが、これだけ複雑な遺物は、他に例がありません。また、ジェラルミンの保存を実施したケースも多くはありません。

このように海水に浸かっていた飛行機をしっかりと保存処理を行なった例は、国内にはほとんどありません。

なかなか大変なお仕事ではありますが…。海外では機体を保存した例があるので、海外の研究者にアドバイスのお願いをすることになります。

ちなみに、宇佐市は平和ミュージアムを建設する予定で、この97式を展示したいそうです。市では、きちんと保存したい!という気持ちをしっかりと感じ取ることが出来ました。

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余談ですが、時間的に余裕がなく、宇佐神宮には行けませんでした。そのかわり、五百羅漢を見てきました。こじんまりした場所でしたが、ちょっと立ち寄るには、良い場所かと思いました。

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今後も、宇佐市とはお仕事をすることになるかとは思います。確約は出来ませんが、度々、新しい情報をお伝えできればと思っています。最終的には、展示までお手伝いしたいな~。

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