身体感覚を考える(1)役に立つ身体感覚

・身体感覚は「心と体」に役立つ
 私は,身体感覚に注意を払い,「身体と対話する」ことが日常的にできれば,それだけでも十分「心と体」に役立つと思っている。例えば,身体に生じている異常を早期に察知して,適切な対応を取るといったことも可能だろう。この他にも沢山あると考えている。ただし,今のところ胸を張って主張するだけの根拠も自信もない。まずは自分自身の話をしよう。
 もうだいぶ昔のことだが,夕方になると無性にだるくてしかたがない日々が続いた。おまけに目を開けているのも辛い。このため,診療を続けるのが苦痛になり,話がくどい患者さんなどを前にすると「早く話を終りにして帰ってもらえないかな」と思ってしまうこともあった。
 それでも根が不精なため,特別の対策を講じることなく放置していた。そんなある日,メガネが壊れたので,やむなく新しいものに取り替えてみた。すると,とたんに夕方になってもあまり疲れを感じなくなったのだ。なんのことはない。私がだるさと感じたのは,年齢のために徐々に視力が合わなくなり,カルテに書き込んだり,パソコン画面を見ることに由来する眼性疲労だったのだった。私はそれを全身的なものだと勘違いしていて,メガネを取り替えようとは思い付かなかったのだ。
 眼精疲労と全身のだるさの区別がつかなかったというのも,後になってみれば不思議であるが,だるさがあってもそのまま放置したという私にも呆れてしまう。これが「身体感覚をテーマに」などと言っている当の本人の実情である。




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