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【出産レポ②】弛緩出血、輸血、産後の不調

前回に引き続き、出産レポとなります。
今回は出産後に起こった事件とその他産後の体調や生活について書いていきたいと思います。

まだ完全には回復しきっていない今、母親になった人は皆この不調と闘ってきたのだと思うと、本当に母親は偉大だなと尊敬の念を禁じ得ません。

出産後、それは突然の出来事だった

さて、前回、予定日の朝7時頃、30時間の陣痛その他諸々を経て無事に出産を終えた所でした。
出産直後と2時間後の2回、血の止まり具合や体温、血圧などを見てもらうため、しばらく分娩台の上に横たわっていた私。
2日間寝れていなかったので途中眠りに落ちながら、半日以上食べておらず空腹だったので朝ご飯が出るのか心配しながら、硬い台の上で待っていました。
9時ごろの経過も問題ないとのことで、車イスで部屋まで戻ることができました。
この時すでに麻酔が切れていたため、切開&裂けていた会陰の傷やらが色々痛み、座ることができず、ベッドの角度や昇降、可動机の位置を調整しながらどうにか寝たまま待ち望んでいた朝食を食べ始めました。

しかし9時半頃、朝食を半分くらい食べ進めていた時、突然股の下からぬるい液体がどばっと出た感覚がありました。
あっ、なんか出た、と思うもそれは止められず、「うわーおしっこかな…ベッドの上で盛大に漏らしてしまった…」と申し訳ない気分になり、とりあえずナースコールで「尿漏れしたみたい」と伝えてから、残りの朝食を食べながら待ちました。
忙しかったのか少し時間が経ってから看護師さんが来てくれました。
それまでの間にまた同じく盛大に漏らした感覚があり、「多分尿だと思うんですけど…結構出ちゃって…」とこんなものの処理をさせることに罪悪感を抱きながら患部を見てもらいました。

「…これ血だね」

看護師さんが急に深刻な顔と声になり、「ちょっとどれくらい出てるのか測りますね」というと急いで出て行ってしまいました。
え、血がこの量出たのか…?
そう思っていると、人が呼ばれている気配。
その間にもさらに同じくらいの量の漏れを感じ、これが全て血液なら割とやばいんじゃないか…?と思い始めます。

弛緩出血、無麻酔処置、そして輸血

ここからは細かく覚えていないのですが、せまい個室に人がたくさん来て、朝食の乗った机は遠ざけられベッドは倒され、腕には血圧や酸素濃度を測る装置がつけられて、産前からつけていた点滴とは別に針をいくつか刺され、先生が来てからは内診もされました。
血を失ったと認識したからか、気づけば視界がチカチカし、瞼が重くなり、息苦しさを感じるようになっており、あぁ完全に酸欠だな、と思いながら近くの看護師さんにそれを伝えます。
酸素マスクがつけられて、遠のき始めた意識を呼び戻すように看護師さんが「大丈夫ですか?返事してください」と言うので、何とか「はい、大丈夫です」と言葉を発しながら、眠りそうになるのを堪えます。
そのまま個室のベッドの上で何やら応急処置を行われ、数人がかりでシーツごとストレッチャーへ移され、分娩台(=手術台)へ運ばれました。

そこからはより本格的な処置となり、麻酔もないまま、膣から止血のためのバルーンとガーゼを入れます。
無痛分娩で陣痛や出産、会陰切開の痛みから逃れたと思ったらまさかこんな痛みを経験することになるなんて、と思いながら、「痛い痛い」と訴えながら、ひたすら処置が終わるのを待ちます。
陣痛に苦しんでいた時のことを考えたら、終わりがすぐそこに見えているだけマシだ、と思い、何とか耐える。

意識を失うほどではなかったばかりに一部始終を感じながらではありましたが、「ルートどこでとろう…」と探す看護師さんに「いつも取りにくいのでどこでも…手の甲からとかも…」と助言?したり、「輸血いるね、うちにあったっけ、何型だろう」という先生に「B型です」と答えたり、なるべく協力しつつどこか他人事に思いながらの処置となりました。

気付いたら12時半頃。眠気もあったので処置後眠っていた時間もありましたが、分娩台の上でふと時計を見るとその時間になっていました。
酸素マスクや複数の点滴などは付けられたままでしたが、何とか無事処置は終わったようでした。
しばらくそのまま台上に横たわっており、何度か看護師さんや先生が様子見や現状報告などに来てくれました。
硬い台の上でずっと寝ているのが腰などに来ていて、もぞもぞと体を動かしながら待ちました。

14時頃、先生からどのような状態か、どのような処置を行ったか軽く説明があり、かなり血を失っているので輸血が必要とのこと。旦那さんにも経過と輸血についての説明するから、と連絡を取って、立ち会い出産後帰宅していた夫をまた呼び戻すことに。
15時頃に夫が到着、輸血について、感染症のリスクなど説明を受けた上で同意書にサインをし、説明の上、両手に繋がれていた点滴のうち片方に赤い液体が入ったパックを繋ぎ、輸血が開始されました。
もちろん、事前に私の血液を採取して拒絶反応など起こさないか検査の上での輸血でした。(ちょうどその時間に結果が返ってきていた)

16時過ぎにやっと解散となり、夫はついでに赤ちゃんを少し見てから帰宅、私はふらつきながら個室へ。
定期的に看護師さんや先生が見に来てくれる中、その日は終始ベッドで過ごしました。
硬い台に長時間乗っていた上にベッドから起き上がれずお尻や腰が痛んだり、尿道と膣に刺さったチューブだけ違和感がありましたが、それ以外は問題なく、ご飯の合間に爆睡する1日となりました。

その日の晩ご飯は、一応出産日ということでお祝い膳として豪華なコース料理が振る舞われ、食欲もあったので、頑張った自分にご褒美かな、と思いながら美味しくいただきました。
体力の回復には食が欠かせませんが、いかに食べたいと思える料理が提供されるかも重要だったんだなと知り、改めてこの産院を選んで良かったと思いました。

退院の時に改めて聞くと、出産時と合わせて2500mlもの血を失い、800ml(?単位曖昧)の輸血をしたそう。
調べてみると結構致死量。
後から思えば、目の前のチカチカと酸欠で「このまま失血死するのでは…」とぼんやりした意識の中で思っていたことも、あながち間違いではなかったのだと知り、妊娠出産はやはり命懸けなんだと身をもって感じることになったのでした。

Hbも5台まで落ち、1日延長した退院の時にもまだ7台までしか上がらず、しばらくはしんどいだろうと言われ、周りのサポートが欠かせない状態でしたが、その時は十分に受けられる環境ではなく…。
その話は次回のレポ③で詳しく話したいと思います。

産後の不調

出血が多く、母体の回復優先ということで、出産当日は1日ベッドの上で安静にし、生まれた赤ちゃんも産院の方で預かってもらっていました。

翌日、部屋に先生が来て、子宮の収縮具合などを見て、経過は順調そうだったので止血に使っていたバルーンとガーゼを抜くことに。
陣痛や出血後の処置の時の痛みを思えば一瞬で、少しすっきりしたような感じもあり、何とかこれで一安心。
その後歩けるようになると尿のカテーテルも外してもらい、自分でトイレに行くように。

そこから、真の「産後の不調」と闘うことになったのです。

産後は回復に時間がかかると言われていますが、実際どんな不調があるのかはあまり深く考えていなかった私。
正直なめてました。
私の場合、分娩に時間がかかったせいもありますが、こんなに色々あるんだな…と知り、世の中の経産婦に尊敬が止まりません。
とりあえず列挙していきたいと思います。これから出産を迎える方の準備などの参考になれば幸いです。

  • 尿失禁
    骨盤底筋ガバガバにより、尿漏れというレベルではない漏れが。ベッドから立ち上がった瞬間止まらないおしっこに、人としての尊厳が危ぶまれた。
    産褥パッドの保水力と産褥ショーツの防水性に少し助けられるも、入院中何度もパンツをダメにした。産褥パッドはもらえたけど足りなくなる可能性あり。パンツは多めに持参すべし。洗って履くなら干す為の準備も必要。
    こまめにトイレに行くように&骨盤底筋のストレッチ。

  • 悪露(おろ)
    私の場合出血もあったからか、かなり多かった。しばらく血が生理ピークよりも多いくらい出る。産褥パッド様々。しかしもらえる量も限りあるので安く買えるなら買っておくべき。(私は産院で追加購入した)
    1週間は生理ピーク以上、1週間は少し暗い色で生理並、1週間は生理4〜5日目くらい、1週間はたまに血が混ざるがほぼ黄色っぽいおりものレベル、で1か月くらい続いた。
    生理用品でも代用できるが2〜3週間はお産用パッドの方がおすすめ。尿漏れも含めて安心感がある。

  • 会陰切開の傷
    切開プラスさらに裂けていたとのことで、縫ってもらっていても座った時などに痛む。円座クッションの必要性を実感。
    退院時に抜糸、1〜2週間程は突っ張る感じが残るが、1か月経つ頃には特に感じなくなった。

  • 便秘
    会陰の傷もあるしいきむのが怖くてしばらく出ず。出口に詰まったような感覚が続く。
    酸化マグネシウムを処方してもらい、1日3回2錠ずつ飲み始めてからやっと細々と出るように。とにかく薬と水分摂取を心掛けた。服用している間は逆に下痢に近い症状に。

  • 痔…かと思ったら「皮垂」
    便が詰まった感覚に痔を疑い始め、シャワーの際に肛門付近に出来物があるのを確認。退院時に「痔っぽくて…」と言うと塗り薬(ポステリザン)をもらえたが、2週間程使い切っても変わらず、肛門科を受診すると「皮垂(ひすい)」というただの皮のあまり?だと判明。分娩のいきみで起こるものらしい。薬では治らずそのままでも問題ないとのことで…え、一生このまま…?←イマココ

  • 後陣痛
    生理痛以上本陣痛未満の痛さが突然不定期に襲う。授乳の時によく痛む。結構痛いのが2週間ほど続いていつの間にか感じなくなっていた。
    ただ便秘薬による下痢症状としての腹痛やその他原因不明の腹痛が1か月後でもちょこちょこあり、まさかまだこれだったりする…?

  • 骨盤痛
    骨盤から恥骨あたり、妊娠後期のそれと似ている骨盤痛あり。歩行時や立ち上がった時などに痛むので日常生活に割と支障あり。横向きに寝るのも辛くて寝返りできない。赤ちゃんと同じ。
    産前に買った骨盤ベルトが産後も使えるやつで結構助かった。けど家で寝る時までつけてはないから咄嗟の時に痛み、色んな動作が億劫に。

  • 貧血
    立ちくらみやめまいまではいかなくても、疲れやすかったり、マスクでいつもより酸欠になりやすかったり。
    とにかく鉄分を摂取。サプリでも食品からも。

  • 睡眠不足
    一般的だが3時間おきの授乳に加えて他の要因の泣きにも対応するため慢性的な睡眠不足。授乳中うとうとして哺乳瓶の傾きおかしくなってたり、あやすための抱っこ中に寝かけて赤ちゃんの首が反ってしまったり。それより睡眠不足が引き起こす他の弊害が色々あるので要注意。
    必要に応じて他人を頼って寝る時間を確保したらいいが母親が対応しないといけない部分もあるのでこればっかりはできる範囲で何とかするしかない。
    慣れてくると少々泣かせてても大丈夫と思える。あとは産後ケア制度を利用すべし。私も利用したのでいずれレポにします

  • メンタル
    ホルモンバランスや睡眠不足もあり自律神経の乱れによる精神的ダメージが。元々ストレス耐性があり楽観的で鬱にはならないと思っていた私でも、何か問題が生じた際にいつもよりキた。
    産婦用の問診票でメンタル聞かれるけど誰にでも起こり得ることだと実感。ただ問診票は「理由なく」という点が当てはまらず優等生回答しか出来ずにいる。
    周りに頼ろう。些細なことでも相談しよう。そういう問題を抱えているしそうなるものだと知ってもらおう。

周りにサポートと理解を求めることの重要さ

とにかくこんなに様々な不調があり、満身創痍になるとは思っておらず、身体的にも精神的にもつらい時期が続きます。
正直こんな状態で育児も家事もしていると大変です。
あちこちで言われていることですが、本当に必要最低限にとどめて、周りを最大限利用することが大切なんだと思います。

私の場合、実家は少し距離があり、実父母も義父母もフルタイムで勤務しているのであまり頼れず、夫は仕事の都合で育休が取れないという、サポート不足の環境にありました。
いずれ別途記事にするつもりですが、自治体(保健センター)が手配してくれる産後ケア施設を利用したり、その他にも保健師の方がサポート制度や家事代行サービスなど、利用できるものを教えてくれたりしました。
実家の方も、すべては難しくても、頼れる部分を見つけて遠慮なく甘えたりすることで、少しでも楽になることができました。

また、ただサポートを求めるだけでなく、自分が今どういう状態で、だからこれがしんどくて助けてほしい、こういう時にいてほしい、というのをしっかり周りに理解してもらうことも大切です。

私が弛緩出血で命の危機に瀕した際、夫にはあまりその事の大きさが伝わっていなかったようで、あまり仕事を休んでくれず、退院も「一人で何とかできるよな?」的な反応で、大変な状況だとわかってもらうのに時間がかかりました。
正直どれだけかは今でもわかっていないと思います。仕事の調整をしたり無理に育休を取ったりほどではないと思っているのですから。
そういう不満を溜めないためにも、いかに大変な状況にあるか、できれば客観的意見から知ってもらうことが必要です。

特に男性は自分がその経験をすることがないので理解しにくい上に、実際に産んで事情を訴える妻の言葉より育児経験のある友達や会社の同僚に聞いた話の方を鵜呑みにする傾向があります。
『コウノドリ』をコメント欄まで含めて読ませたり、実家の両親に味方してもらうのも良いかもしれません。一般的な感覚の持ち主なら大事な娘を嫁にもらった以上妻の両親に対して支える責任を果たす姿勢を見せるはず。
また、仕事と育児の優先順位など、価値観や考え方も事前にすり合わせておくか、少しでも歩み寄りをしてもらっておく必要があります。本当に助けが必要な時にも仕事を優先するようなら、実家に帰ることも視野に入れた方がいいです。それなら早めに連絡や準備をしておかなければなりません。

不満が溜まって感情的に訴える前に、冷静に客観的に見て助けが必要だとわかってもらう。
今、私がそうしておけばよかったと思うことです。

これから出産を迎える方、周りのサポートに不安のある方にとって、一助になれば幸いです。

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