拝啓 お笑い芸人の皆さん

はじめまして。
いつも楽しく拝見しています。

このたびは、皆さんに改めてお礼を言いたいことがあり筆をとりました。これから書くことは、私の個人的な話と、皆さんに心から伝えたい想いです。拙い文章で恐縮ですが、読んで頂けたら嬉しいです。

私は昨年出産をしました。
初めての土地、慣れない子供との生活にこのご時世もあいまって、ほとんど外出もできず孤独を感じることが多かったものです。

そんなときに私を支えてくれたのが、お笑い芸人の皆さんでした。

感染対策のため、赤ちゃんを産んでから誰とも会えずにひとり過ごしていた産婦人科の個室で、私は泣きました。

無事に子供を産んで幸せなはずなのに、気持ちが昂って眠れず、ひとり静かな深夜の空間はまるで独房のようでした。

寂しさと非日常の空間にたまらなくなった私は、何気なくスマホの動画配信アプリをタップしました。するとそこには、いつもの日常がありました。

いつもの番組に出ているいつもの芸人さんたちを観て、私はたくさん笑いました。久しぶりに友人と会ったような感覚でした。

知っているだれかの笑い声がするだけで、こんなにも安心できるのかと不思議でした。そして人知れず、涙を流しながら爆笑しました。

産後、家に戻ってからも、育児の合間に時間をみつけてはたくさんの芸人さんに笑わせてもらいました。外出が難しい時、人と会えない時でも、毎日心から笑って生活することができたのはとても有り難いことでした。

笑わせてもらっただけではありません。

芸人さんの心情を吐露する場面では、おおいに共感しました。子育て中の主婦と、お笑い芸人に共通の感覚などないと、思われるかもしれませんね。

ある番組で人気芸人さんが、自分は孤独だとおっしゃっているのを聞きました。孤独だと言うあなたに、孤独を癒された人間がここにいることを伝えたいです。勝手に戦友のように思っていました。

お笑いは、新しいことをやっていかないとダメだと叫んでいる芸人さんがいました。上の世代の価値観との違いに戸惑うことがあるのは、私の仕事も同じです。古い慣習や考えと闘っているのは、自分だけではないのだと心強く感じました。

うまくいかずに自信をなくしたり、落ち込んだりしたこともあります。けれど、自分は駄目人間だと笑う芸人さんを見て、まあいいかと肩の力が抜けました。

産婦人科では先生や助産師さんにたくさんお世話になりました。ひとの命を助ける仕事は、言うまでもなく素晴らしいと思います。そして、ひとが健やかに過ごせるよう支えることもまた、素晴らしい仕事だと思うのです。ご存知ないかもしれませんが、皆さんのおかげで闇に落ちるのを防いで頂いた人間がここにおります。

皆さんはときに、面識のない人から批判を受けることがあるかもしれません。自分の名前を検索して、良い風に書かれていないと肩を落とすというお話も聞きました。

ですが、それが全てではありません。事実、私はこれまでたくさんの方々に笑わせてもらってきたというのに、その方々のことをSNSで発信したことはありませんでした。

忙しい毎日のこま切れの時間のなかで、すぐに結果の出るツールはたいへん便利です。私も、何かを調べる際は足より頭よりまず指先を使います。

けれど、こうして遠くで温めたまま、まだ届いていない想いもあるということを知っておいてほしいのです。いつ、だれにどう言えばいいのか迷ってしまい、うまく言葉にできずに時間がかかっている感謝の気持ちがあることを、伝えたいのです。

あれから時間がたち、子供は無事にすくすくと成長しています。失敗してへこむ日も夜泣きで寝不足の日もありましたが、大きく沈むことなくここまでやってこられたのは、いつもたくさん笑わせてくださる芸人さん方のおかげだと思っています。

あのころ助けてくれた周りの人たちには、直接お礼を伝えることができました。しかし、私の心を支えてくれた芸人さんにはまだお伝えすることができていません。

全員に直接お礼をお伝えしたいのですが、それは物理的に難しいと思いました。書いたものの、出してはいないファンレターもいくつかあります。時節柄、手書きのものは避けて欲しいという方もいらっしゃるのではと思い、投函するか迷っています。

そして、お笑いは個人戦であり団体戦でもあるように思います。だれかひとりが笑いをとることもあれば、周りの芸人さんやスタッフの方々の力で笑いが生まれることもある、もっと言えば、それを支える事務所の方や劇場の方々にもお礼を伝えたい、そう考えるとどこまでの方にありがとうを言えばいいのか分からなくなってしまいました。

個人的な話を、こうして公の場で記すことも迷いましたが、こちらでは形式は問わないということでしたので、少しでもお笑いに携わる方の目に留まればと思った次第です。

人を笑わせたいという願いは、尊いと思います。もちろん、皆さんそれぞれお金持ちになりたいとか、有名になりたいとか夢や目標をお持ちだとは思いますが、笑ってほしくないという芸人さんはいないのではないでしょうか。

賞レースに出場する芸人さんの人数を知り、人を笑わせたいと思っている人が、こんなにたくさんいるなんて、世の中捨てたもんじゃないと心が温かくなります。

だから私はお笑いが好きです。

芸人さんが好きです。

いま読み返してみると、感謝の想いが強すぎて、自分の気持ちばかりが前のめりになっていて、少々気持ちが悪い文面になってしまったことは自覚しています。

いい話をされるとやりにくいんだけど、と言われてしまうかもしれませんね。でも、たまには熱湯や落とし穴ではなく、ファンからの感謝の気持ちにどっぷり浸かってもいいではありませんか。

自虐は得意でも、褒められると急に俯いて困り顔をする皆さんに、今回ばかりは真正面からありがとうを言わせてください。

胸を張ってお伝えしたいです。私は皆さんのおかげで今ここに立ち、楽しく毎日を過ごしています。ありがとうございます。

長くなりましたが、今後もご活躍を楽しみにしております。笑わせて頂くばかりで恐縮ですが、それが皆さんの一番の願いであると勝手に解釈をして、これからも大いに笑わせて頂こうと思っています。

応援しています。


敬具