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 「或る異端の書 」白闇秘聞

「或る異端の書 」

                
白闇秘聞

一体、誰がこの秘界の光景に耐えられ得ようか。

あらゆるものが混然かつ一瞬に変容する様を・・・

空間や時間が融合しつつ歪み捻れ、そのなかに異様なる形態、色彩、叫音が明滅しては絡み変化する。

この界の一切のものらは全体の断片であり不可視の神経のような糸に繋がれてもいる。そのものらから放たれる名状し難い響音や色、様々の光りの乱舞、その軋みたるやおぞましくもまがまがしくもあり、何とも例え難き・・・

        *

 おお われらわれわれらのいようのさまの

 おぞましさよ このよのものとにてもにつ

 かぬこのすがた このありようよ さても

 はてもおのれのいんがとはいえたえがたき

 たえがたきおのれをたえるもならじ ああ

 このよあのよとよまよいごとのかつてのく

 らしのなつかしき よまようことのなつか

 しき しきしきくるいの ああなつかしき

   *

 狂気正気や空からまわり 

 ひとのころころこんころり

 いんかねいしょんこんころり

 さてははてはさてはてて

 ぽじねが反転空転転

 いろはにほへとちりちりり

   *

さて、我等の本源の在りようを探求する者後絶たず、と言いたいが事はそう簡単ではないようである。だが、それとこれは別物としたたかに生存するものの皆無というわけではない。

世が如何なるありようであれ常に戦う者は存在するのは自明である。たとえその存在が他者の眼に不可視的であろうともだ。

色即是空空即是色の識を日常的生の根幹とすべく悪戦苦闘しているにしても誰が何と云おうがいつの世にも存在する。

 

                      二〇〇一年 五月二十九日

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