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「故馬銭奴氏との相聞句」

「故馬銭奴氏との相聞句」

彼が亡くなって20年経た。

今でも彼の胸の奥に秘めた深い苦悩をした顔相、眼差しを鮮明に覚えている。

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今年の夏に急死した馬銭奴氏との相聞句を掲載します。
2004年11月23日

「円空異聞」

声無き声を鑿に託したる円空よああ我が身を砕きし円空よ  (梅崎幸吉)

形ある総てのものは風化せん円空仏もまた然るかな     (馬銭奴)

           展開 

いとほりに きざみしちしを そこかしこ  
→  一念や乞食ぼうずが鉈と鑿

ふきあらぶ おのれくびりて なおきざむ  
→  先ずは聞き次には読んで木を彫らん

よにありぬ よよにありとて ほりきれぬ  
→  ただ一つ欲れども彫れず業となり

わきいずる そこなしぬまよ きりわびぬ  
→  草に寝れば地獄に落つる仏かな

てんてんと のたうつのみに いたみまし  
→  かたちなす木にいかで血のしたたれど

ほりてなほ ほりほるほどに そらあおぐ  
→  数知れぬ未完ぼとけよ薪となれ

ちりぢりぬ けんこんいってき のみにこむ 
→  歓びも悲しみもあり槌の音

なたふるふ もゆけふらんの はてきしむ  
→  十二万造の大言壮語にて

ほえくるふ よよやみめぐり ぎしぎしと  
→  せめて一万ほど彫るもし難きぞ

やむにまふ かくれぬとても みはなくも  
→  けふかずを木端仏とてこなしけり

みちなきか みちなきみちよ ちにふすも  
→  草むすぶ諸国行脚の挫折かな

いきしちに あらぬかぎりに いきしちに  
→  いざ帰りなん魂は苦に満てり

         *    

私のHPサイト『独り言』より

2004年7月26日 Mon  馬銭奴・苅部三郎氏の霊へ
          

照れ隠しの童子の如き笑み

その笑みにどれだけの苦悩懊悩が

底知れぬ悲哀が秘められていたか

初対面から溢れていた

空間が軋む如き哀しみが

己を貶め 自虐的な詩に

その痛みは胸中にて増幅され

さらに己を切り刻み

此の世に縛り付けんがために

肉体の在るの苦々しさを

固体の忌々しさを

のたうちまわりては

無能無力を嘆き

されど祈願は深く強く

眼光に隠されていた

メダカを慈しみ
動物を生物を慈しみ

あらゆるものを慈しむ

貴方の祈願は底知れぬ深みにあり

誰もそれを観なかった

名も無きものらがそれを知る

名もない故にそれを

御身は地に

霊は霊に

ゆかしき人よ

よく生き抜いた

イバラの道を

よく歩き通した

別れは言わぬ

では また

円空 - Wikipedia

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