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君たちはどう生きるか、見てきました!

スタジオジブリ・宮崎駿監督の最新で、そして、「最後の」作品と言われている「君たちはどう生きるか」見てきました!ネタバレありで感想を書いてみたいと思います。

見終えての印象は「堅実な内容だなあ」

見たタイミングは3連休の最終日。なにやら難解と言う噂を聞いて、ビクビクしながら見に行ったのですけど、見終わった後の印象は「思ってたより全然手堅い『堅実』な内容だなあ」というものでした。それと同時に、この堅実な内容を、こんな形で1本の映画にしちゃうんだ、すげーな、という驚きがありました。

ストーリーをすごくざっくり言ってしまうと、主人公の少年が自分や世界の卑怯さと向き合い、それでも前に進むことを自分で決める、という内容でした。

物語の中では「前に進む」方法のひとつとして、少年の家系の大叔父が作り出した「卑怯な世界とは隔絶した綺麗な(でも危うい)セカイ」を引き継ぐかどうか、という選択肢も提示されます。

最終的に少年は「前に進む」方法、言い換えると「どう生きるか」という選択に対し、「大叔父の模索していた『理想を求めるセカイ』ではなく、自らが元居た卑怯な世界で、卑怯な自分や家族と共に生きる」事を選択します。世界も自分も糞だけど、それでも生きる!という着地ですね。

ぶっちゃけ、よくあるテーマですよね。すごく普遍的で、ありふれていて、だからこそ本質的で大切で、誰もが一度は考えるテーマです。着地の場所も「自分が卑怯な事を認める」という大切な要素が強調されているものの、割とよくある結論です。だから「手堅い」印象だったのかな、と思います。

でも、テーマや結論は堅実ですけど、映画的には「宮崎駿節」と言えるようなファンタジーと趣味にあふれています。ぶっちゃけよくあるテーマを、こんなファンタジーとして昇華して見せるのかあ、すげーな、という印象でした。

三輪人力自転車?のシーンがヤバかった

私は事前の情報をまったく知らないで、というか、ネタバレ見ちゃう前にまっさらな状態で見たい!と思って見に行ったので、最初に戦時中の話が始まった時は「は?」となりました。あー、そっち系なんだ、って。

正直、序盤は超退屈でしたが、主人公親子が疎開先に着き、三輪人力自転車?で迎えに来たシーンでハッとしました。あのシーンの人力車の動きですとか、人や荷物が乗り降りするときの「動き」、つまりはアニメーションですね、これがメチャクチャ細かくて、半ば偏執的と思ってしまう程に「動き」を表現してたんです。うおおお、すげーな、って感じでした。ストーリーとか関係なくあのシーンもう一度見たいです。

一般的に、「凄いアニメーション!」というと、派手で、けれんの利いたオーバーアクションやカットのシーンが目立つと思うんです。バトルとか、アクションとかダンスとかのシーンですね。元のアクションが派手な上に、そこをどう省略するかですとか、どうウソをついて凄みを出すか、みたいな勝負ができるシーンです。

でも、人力車のシーンは、ぜんぜんそういうシーンじゃないんですよね。「静かなシーンでもきっちり観察して動きを作ると、こういう事もできるんですよ」というアニメーターの矜持というか、「俺はこうしてきたぜ」感というか、そんな思いを感じるようなシーンでした。

語り口は「俺はこうしてきたけど君たちはどうする?」というスタンスなのかな

でですね、人力車のシーンで感じた「俺はこうしてきたぜ」感、他のシーンにもメチャクチャ感じるんですよ。動きや絵もそうですし、ストーリー展開やキャラクター造形、果ては音楽に声優さんなんかも。

見ているうちに、「ああ、これって宮崎駿監督のいろんな『俺はこうしてきたぜ』をなぞってるのかなあ。最後の作品とかいう触れ込みだったし、総まとめ的な?」という印象が沸いてきます。「ジブリ感」とはちょっと違う、「宮崎駿感」というか、そんなスタンス。

ぼんやりそんな事を考えながら見ていると、作中で「13個の積み木」というアイテムが出てきます。これは大叔父が世界中を駆け回って見つけ出した13個の綺麗なものであり、その13個の積み木をバランスよく積むことで、セカイはなんとか保たれている、みたいなアイテムです。

えー、それって宮崎駿監督の作った映画の数くらいなのでは? てことは、この積み木のひとつひとつが映画作品で、宮崎駿監督は自分と大叔父を重ねてるのかな? それでやけに「宮崎駿感」を、わざとらしいくらいに出してたのかな? と思っていると、「積み木のおかげでセカイは保たれているけれど、綺麗に積み木を積んでも1日くらいしか持たない(≒このセカイそろそろ危ないぜ)」みたいなセリフが。

ワオ、って感じですよね。「このセカイはもう危ない」というような展開は、ぶっちゃけ珍しくない展開です。でも、13個の積み木が映画作品をモチーフにしているとすると、「アニメ映画業界とかスタジオジブリとかこのままじゃ持たないぜ」と言ってるようなものです。トップを走っている方がそういう事を言うんかい。しかも、作品のテーマに絡めてくるんかい、と、そんな驚きが。

普遍的な問いかけであると同時に、業界の後進たちに問いかけているのかもしれません

映画のテーマは先に書いた通り、というか、映画のタイトル通りに「君たちはどうする?」なんだと思います。

嘘つきな世間と自分に嫌気がさしている少年が、そこから脱出して、ある意味「理想を追い求められる」セカイへとスカウトされます。が、断ります。その理由は「元の世界が恋しい」「今までの自分や仲間を肯定したい」というよりは、「自分は卑怯な嘘つきであり、理想を追い求める資格はない」というものです。

自分は、そして世間は嘘つきだ。それでもなお、そこから目を逸らさずに認めて世界の中で自分と関わりのある人と共に、できるだけ良きことをして生きていくんだ、と。少年はそう決意して元の場所へと戻っていきます。――で、少年はこういう選択をしたけど君たちはどうよ? と。

さらにそういう話にあえて「13個の積み木」を組み込むことで、「宮崎駿監督の周りの人たち」――これは私たち観客も含みます。という目線を提供しているのかもしれません。

大叔父であるところの宮崎監督が「自分は綺麗と思ったものを集めて13個の作品残したぜ」と。あの大叔父のセカイはディズニーランドならぬハヤオーランド的なテーマパークなのです。だからなんか見たことある建物やキャストやアトラクション満載なのです。

そのアトラクションには、自らは何も作り出せない観客や、ツイッター(鳥アイコン)上の困った「鳥」的なセキセイインコちゃんも所せましとひしめいてます。

少年の父はそのテーマパークの運営会社の宣伝隊長といったところ。世界の揉め事もビジネスチャンス。家族のピンチは心配するものの、会社を止めるわけにはいかないというバランスでテーマパークを守っています。

そして、そのテーマパーク経営の跡を継ぐ資格のある少年に対して、「継ぐ?」と聞くとそれを断り、しかし、自分にとっての「綺麗と思ったもの」を手にして前を向きます。

宮崎駿監督のご子息である吾郎監督を始めとした業界の後進の方々に対して、後は頼んだぜ、的な。そんなメッセージを発信しているようにも思えます。

と、好き勝手なことを言うセキセイのインコちゃんであるところの私は、そう思ったのでした。個人的には面白かったですが、面白いというか「すげーな」という印象の方が強かったです。

ともあれ、見て、そしてその後にあーだこーだとワイワイやるのが楽しいタイプの映画なんだと思います。巨匠の「最後の」映画、ぜひ見て楽しんでください。

……でですね、最後の作品って言っていて「託すぜ」的な内容の本作なんですけど、気が向いたらまた次も作って欲しいなあ。なんて思っているのです。

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