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ミステリと言う勿れ~宇宙人と小宇宙人の話~

こんにちは。くま子です。

今回は私が紹介するまでもなく有名な“ミステリと言う勿れ/田村由美著”の読書感想を書いていきたいと思います。

今月よりドラマ化も開始され、今からドラマも楽しみにしているこの作品。

今作の主人公の久能整(ととのう)は大学生だが、大人の顔向けの理論武装と柔軟な思考でミステリーを解決していくというお話である。

こう書くと、理論思考の頭の固い奴(いうなればガリレオ的な)が想像されるが、整から出てくる言葉は人間の本質や現代社会の問題を痛いほどについてくる。

誰しも(特に女性ならば)抱えているモヤモヤした感情を、男性である整がそれはおかしいと思うと周囲に明言してくれるだけで、こちらの肩の荷が下りたような気がする。

そういった事を伝えようとするとどうしてもきつい意見になってしまうことも多いが、整が伝えると人の心にすっと入ってしまうから不思議である。

整のようなバランス感覚や物事の本質を考える癖がついている人がこれからも沢山増えて欲しいと切実に思う。

もちろんタイトル通り、ミステリ―としても一級品で決して一筋縄ではいかず、ハラハラドキドキを一緒に体験しながら、綺麗ごとだけで終わらせていない所も心をつかまれてしまった。


そして、この漫画では子供たちもたくさん登場してくる。その中で、整が何度も繰り返し伝えているのは、“子供は大人が思うよりもしっかり大人を見ている。心の柔らかいうちに、大人が勝手に価値観を押し付けてセメントが固まる前のように何かを落として跡をつけてはいけない”ということであった。

いつの間にか、生まれてから「女の子だから」「男の子だから」「お兄ちゃんだから」「お姉ちゃんだから」「もう良い年齢だから」「結婚しないと」「子供を産まないと」「親の面倒は子供がみないと」「大手企業で働かないと」など、大人からテレビから沢山のブロックを柔らかいセメントに落とせれ、まあるいつるつるとした心もとげとげ、ぼこぼことした歪な形に歪んでしまう。

その歪みは自分も子供や周囲にも当たり前の様に押し付け、また相手のまあるいつるつる心を同じようにとげとげ、ぼこぼことして歪な形へと変化させてしまう。そうやって、代々引き継がれていってしまうのだろう。

この本の好きなところは、子供の心が歪な形になりそう時に、必ず手を差し伸べてくれる大人がいる事である。しっかりと、その場で「違う、あなたはなにも悪くない」「あなたは大丈夫」と歪みそうになった心を訂正して、救ってくれる。

そういった大人がしっかりといることで、読んでいてい救わられるし、安心できる。

こういう大人が沢山いて、子供のまあるいつるつるした心をしっかりと育ててあげられる社会が出来れば良いのになと未来を想像してしまう。

整のように視野を広く持ち、人も自分も尊敬することが出来る大人に憧れてしまう。


そして、この本を読み終わった後ににふっと過去の事を思い出した。

それは、中学生の頃病気によって1カ月程度入院しないといけなくなった時の話であった。

その病院は親付き添いが許可されており、母親がそれなりに付き添いをしてくれた。

入院も半ばになったころ、ふっと母親が何かを書いている紙を覗くと、「○○通信」として勝手に入院中の私の様子をまとめていたのだ。それは何かと念の為確認すると、先生に渡して学校に張ってもらうのだと意気揚々と答えていた。

この時の私の絶望が想像できるだろうか。

小学生ならまだしも、中学生。そんな紙をわざわざ貼られても、「なんだよ、こいつ自意識過剰なの」としか思ってもらえないのが当たり前。どう考えてもそんなの恥ずかしいし、嫌である。

母親は友達が喜んでこれを読むと本気で思っているのだろうかと感覚を理解することはできなかった。

その後は、キレ気味でそれをやめるようにと伝えたが、子供が騒いでいる事とはぐらかされて終わってしまった。

そして、学校に再び登校した私が見たのはしっかりと教室に貼られたその紙であった。

心のどこかでそうなるだろうなとも思いつつ、再び母親への失望しかなかった。

なんで、やめてって伝えて嫌がっている事をここまで無視して、堂々と学校に渡すことが出来たのか私には理解出来なかった。

なんで、娘の為の行為がただの嫌がらせになるって一ミリも考えないのだろうか。

そこから、もう自分のことは相談しないで自分で決める性格になった気がする。

結局親子だろうと、同じ感情や同じ価値観なわけではなく、お互いに何を言っているかわからない宇宙人と小宇宙人なのである。

だからこそ、相手の話を聞いて自分の子供であろうとしっかりと子供の意見(ある程度の年齢であれば)を敬わないといけないのではないか。

自分の子供だからと言って、嫌がっていることをして良いわけではないし、気持ちを尊重しなくて良い理由にはならない。

親子と言ってもお互いが宇宙人と小宇宙人なのだから、言葉で意見を交換しないと何も伝わらないし、伝えられた方もその感情や意見をないがしろにしてはいけない。

そんな事をこの漫画を読んで、改めて思いました。今の時代は様々な価値観にSNSを通して触れることが出来る時代になっている。

その価値観を相手に押し付けて相手の心をとげとげ、ぼこぼこにするために使うのではなく、まあるいつるつるした心で他の人の歪な形の心も包んであげられる人になって欲しい。相手を受け入れらる社会こそが誰もが生きやすい社会に繋がる気がする。

兎にも角にも、ミステリ―としても、ハートフルな話としても「ミステリと言う勿れ」は人の心に刺さる漫画としてお勧めである。

それでは、またの投稿でお会いしましょう!


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