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刑務所の中の語り ・・・扉は開かれた

刑務所の中で、受刑者は語る。「なぜ自分は罪を犯すようになったのか?」
私が刑務所で更生支援ボランティアを始めてから足掛け7年になる。その活動の中で、私は多くの受刑者の語りに耳を傾けてきた。しかし、ここで書くことはできない。「刑務所内部で見聞きしたことは外で話してはいけない」という条件でボランティアを行っているのだから。

https://www.sankei.com/life/news/160529/lif1605290046-n1.html


日本人の受刑者が日本語で刑務所の中で語るのを見聞きする。今までは、それは、国家公務員である刑務官と、教誨師や準公務員扱いの『篤志面接員』という特別の市民だけに許されてきた特権だった。そして、その語りの内容は秘密とされ、他の市民に知られることはなかった。

https://www.asahi.com/articles/ASK320FQXK31UTNB016.html


その壁が破られたのは2020年1月25日のことだった。映画『プリズン・サークル』が日本で公開された。坂上香監督に取材許可が降りるまでに6年の月日を要した。それから2年間の撮影を経て、やっと公開上映された。
なぜ自分は今ここにいるのか?いかにして償うのか?


彼らは勇気を奮い自分の言葉にし、仲間の力を借りて絞り出す
犯した罪、貧困、虐待、いじめ、差別、親との離別・・・などの経験
そしてそれに伴う、痛み、恥辱、怒り、悲しみ、恐怖・・・などの感情
犯したくないのに再び同じような罪を犯してしまうのではないか?


虐待したくないのに自分も親にされたように子供を虐待してしまうのでは?
言葉にする、しかし言葉にするには耐えられない、苦しい、言葉を失う、涙する・・・そして、同じ境遇にある受刑者が慰めようと寄り添う
ぜひ、この映画『プリズン・サークル』を観てほしい。今はコロナ禍で映画館も閉館している。代りに、今はネット上の『仮設映画館』 で観ることができる。


https://www.temporary-cinema.jp/prison-circle/


ここで私の話もしたい。7年前のことだ。私はスピーチサークル『トーストマスターズ』会員の弁護士とともにアメリカに渡り、8つの刑務所で『トーストマスターズ』のプログラムを使ったボランティアに参加した。そこで直に多くの受刑者の語りを聞いてきた。そこで出会った受刑者たちには異口同音に「私はこのトーストマスターズのお陰で人生をやり直すことができる。ぜひ日本でも始めてほしい。」と言われた。

https://vimeo.com/7714777


しかし、私も坂上監督と同じような経験をしてきた。日本の刑務所の壁は高く、厚かった。刑務所に企画書を提出してから刑務所長と協定書を結んで定期的にプログラムを施行するまで4年を要した。2015年6月26日のことだった。このプログラムを知って準備を始めてからは、実に15年の月日が経っていた。


映画『プリズン・サークル』では、観客は声や言葉を聞くことはできる。しかし、顔にはモザイクがかかっていて、その表情を見ることはできない。
私たちの活動では、市民ボランティアは、彼らの目をまっすぐに見て、表情の変化を感じながら、彼らの語りに耳を傾けてきた。私は多くの市民とともに受刑者の語りに耳を傾ける機会を分かち合いたいと思い『NPOガベルサポーターズwww.gavel-supporters.org』を設立した。


ガベルgavelとは、裁判所で裁判長が判決を言い渡すときに使う木槌のことだ。ガベルを叩いて裁判長は彼らを自分の言葉を持たない囚人にした。私たちボランティアは、彼らにガベルを渡し、自分の言葉と人生を取り戻し、再び社会に戻れるよう支援するサポーター(支援者)だ。

https://www.tokyo-np.co.jp/article/32227


コロナ禍が収まり次第、再開したい。市民なら誰でも立ち直りを支えるサポーターになれる。ぜひガベルサポーターズの扉を叩いてみてほしい。扉を開くこと。もしかしたら、私の人生は、そのためにあるのかもしれない。
Gavel Supporters  ”Change Talk, Change Life”
「語りが変われば、人生も変わる」 ガベルサポーターズ


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