『ファブリカ』の絵師は誰だ?
最近、当方フォロワーさん内で人気が高いのがこの本であります。
A・ルーミス『やさしい人物画』
(左のですw)
当方も去年の秋に散々記事にしましたが(笑)いい本はやっぱりいいんですね。みなさんこの本について「人体の練習が楽しい!」とおっしゃる。
不思議なことに、人体モデルだの解剖図だのとムズカシイ、めんどくさいという人はいません。まあそう感じる人はわざわざ記事にはしないでしょうが、やってみればけっこう楽しいものであります。
さて、一口に人体解剖図といっても。
これは人体を解剖しなければ本来見られないモノではある。
といって、そんなこと医者でもないのに(時代によっては医者でもダメ)できるはずもなく、本来一般的な善男善女にはご縁のないモノでしょう。事実、正確な人体解剖図が出来たのは中世で、それ以前はなんかサルやらイヌやらを解剖して類推していたらしいですね。想像上の臓器なんかあったりして(^_^;)そんな歴史を描いたのがこの前図書館で借りてきた本、『図説人体イメージの変遷』(岩波現代全書)だったのですが…。
ひとつトリビアルな話題ですが、これは覚えておこうと思いました。
正確な人体解剖図を初めて一般的にしたのは誰か?
これはベルギー生まれのお医者さん、アンドレアス・ヴェサリウスである、とのこと(._.)こんな顔をしている↓
(自画像を模写しました。ちょっと中東っぽいお顔立ちである)
手づから多くの解剖をてがけ、実物を前に正確な図を画家に書き取らせた。16世紀当時普及し始めた印刷術によりたっぷりと図版の入った医学書『ファブリカ』を発表し、大変な好評を得た…と、どうもこれが嚆矢といって間違いなさそうです。特にこの図版は秀逸で、後発の医学書にだいぶパクられたそうです(^_^;)
そんなに秀逸な絵だったと聞けば見てみたくなるのが人情というものです(._.)
しかしこの『ファブリカ』は全7巻という大部な医学書で、買えば高いしかさばるし、古い医学書なんか読んでもアレな所が多いし…絵が見てみたいだけなんだけど…と、まあいちおう検索をかけてみたら
幸いなことに、図版だけ引き抜いた電子書籍が売っていた★
…いやあ、人間だいたい考えることは同じですね(笑)
で、興味のある方はここを当たっていただきたいが、
結論から言うと、当方は買いました。で、買って正解でした<(_ _)>
…これは個人的な感じ方かもしれませんが、どうも正確な(といわれる)3Dモデルを駆使した最新の解剖図巻より、こういう方が頭に入る気がするのですね。最新の正確な図鑑も持ってるに越したことはないでしょうが、なんでしょう、畢竟べつに正確に描きたいんじゃない、
カッコよく描きたい(結果正確なほうがいい)
という動機なので、画家が描いたものの方が心に突き刺さるのでしょう(笑)
その意味では、この『ファブリカ』の図版は
ほれぼれするようなカケアミである(^^)
といえます。特にペン線が非常に良く出ていますね、印刷術も初期の銅版画の時点でこんなにキレイに出るとは知りませんでした(昭和初期よりいいんじゃないのかw)。銅版画についてもまた知りたくなってきます。筋肉人(どうやら人体解剖図の世界では医学用語か美術用語化知りませんが、筋肉丸見えの人体モデルを「筋肉人」というらしいw同じ伝で「骨格人」「血管人」なども…)のポーズもノベタンな直立ではなく、ポーズにストーリーがあります。カンタンに言うと
絵としてオモシロイことになっている
のですね。
…どうもこの辺の感覚が洋の東西の違いかなと感じますが、遺体の解剖図をこんなに面白く(?)描いたらややバチアタリではないのかと思うほど、装飾的である(._.)人によっては刺激が強く、悪趣味に映るかもしれません。ご注意。
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さて、ここからが今日の本題です(前置き長いw)
不思議なことにこの『ファブリカ』、作者のヴェサリウスは有名ですが、これだけ好評価を受けた図版の絵師の名前がわかりません。
原典にも載っていないらしい(._.)
一説には『ファブリカ』以前からヴェサリウスの本の挿絵を担当していたティッティアーノ、あるいはその弟子ヨアネス・シュテファヌスではないか?と言われるようですが、どうも絵柄が違うようです。
さて、面白くなってまいりました(._.)
(べつにんなことどうでもいい、という方はそっとバックでお願いしますw誰が絵を描いたか、こっちには大問題なんです)
ちなみにこういう情報はすでにご紹介の『図説人体イメージの変遷』の範囲外で、気になってネットなんぞで調べるわけですね。ティッティアーノの名前なんかもそうして出てきました。といって当方中世イタリアの画家なんぞ全然知らんので(笑)さらにもう少し下調べをせねばなりません。
同時期の有名な画家や作品は何か?というとこれは
ダ・ヴィンチとかミケランジェロの時代
だそうですね。ほか有名どころはラファエロとかティンレットだとかポントルモとかブロンジーノだとか、まあそういうところらしい。絵画も彫刻も花盛りの頃…ですね。ファブリカの絵はどちらかというとマニエラというミケランジェロの手法に近いとされているようです。そういう手法を使えるのですから、まずシロートということはありえない。そうとう技術あるプロなのは間違いないでしょう。
(『ファブリカ』イラスト背景の遠景模写。すごくマンガっぽいですw)
はて『ファブリカ』にこれだけいい絵を描いたプロが、なぜ名前を明かさないのか。
これは…こっちはマンガ描き的には
ネタとして興味のわく
ところです(^^)
たとえば、大物が訳あって名前を伏せたのではないか?(絵の達者さからいって説得力のあるミステリーネタ)
または、人体解剖を描くのが如何に時代とはいえ、恐れ多いと思った絵師が故意に名を伏せたのではないか?(歴史や宗教を調べたくなる、ボリュームのあるウンチクネタ)
あるいは実力はあるが世に容れられない全くの新人が、このようなきわどい図版を描かされ、キワモノなりにゲージュツ的に燃え上がったのであろうか?(悲運の人間ドラマネタ)
…うーん、どれにしても描いてみたい、そして
描くのが大変そうなネタ
ではある(^_^;)ですが、ただ名前が載っていない…というだけで、さまざまな憶測、いや想像、というか妄想を呼ぶ良質の謎ではあります。理由もなく名前を載せないワケがないのですから…。
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これで、次からヒマなとき
・中世の解剖学についてもうちょっと本を読んでみよう
・印刷、銅版画についても調べてみよう
・教養としてルネサンス画家の名前くらい覚えるか
などなど、やりたいことが固まってくるのであります。
そして、ちょうどいいころあいで図書館の返却期限2週間が来るw
…だいたいこのような読書を繰り返して、当方はマンガ描きとしてのムダ知識、ムダネタを蓄積していき…そのうちの何十個にいっこかを実際紙に描き、あげく
地味なネタ描きやがって
と怒られるわけですが(._.)ごくまれに受けることもある。人生その繰り返しです。
…という、読書術wの一席でございました。お粗末様でした<(_ _)>
たくさんのサポートを戴いており、イラストももう一通り送ったような気がするので…どんなお礼がいいですかねえ?考え中(._.)