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暇になると、まずは消費。「港区おじさん」は暇の象徴的存在

この記事は2020年夏?発売予定の書籍「暇の研究マガジン」から3本目の記事です。

人は、暇になるとまず何をするのか。

イメージしやすいであろうが、まずは消費である。

会社員を辞めて、フリーになった初日。昼間に渋谷の映画館で何かの映画を見たことを、僕は覚えている。

平日の昼から映画とか、空いてていいなあ!

平日勤務に縛られた会社員生活から解放されてすぐは、そんなことを思ったものだ。

それが日常となった今は、平日昼間の映画館に優越感を覚えることはない。土日は混むから、平日にしよう。と平日を優先する程度だ。

第二章ではどのような消費活動があるのか。その消費活動にはどのようなサイクルがあるのかを解説する。

2-1.高級グルメ、ギャラ飲み、不動産?2020年代アッパー層の代表的消費活動


「はじめに」で紹介した、暇人ポテンシャルが高い層を振り返ってみよう。

資産家が実家の人や、二世経営者は子供の頃から上流階級の暮らしに慣れていることが少なくない。その場合は、大人になってから消費行動が大きく変容することは少ないのではないかと思う。

一方でIPOやM&A、そして株式や仮想通貨などのトレーダーは一夜にして大金を得たり、インフルエンサー系や中小企業経営者系は一夜にして大金を得ることはなくとも、毎月太いキャッシュフローを持つようになっていく。

お金を持つようになる過程で、人は何にお金を使い、消費活動を楽しんでいくのか。

「衣食住」とはよく言ったもので、多くの人はこの順番に興味を持っていく。

学生の頃はファッションに興味を持ち、社会人になり一定以上の稼ぎを得ると、デートで使わざるを得ないこともあり、レストランを中心とした食に興味を持ち、自分の稼ぎに見合った、あるいはそれ以上の住宅に興味を持っていく。

死語のような話としては、「フェラーリ、タワーマンション、愛人」が富裕層三種の神器的に扱われたことがあるという記事を読んだことがある。

特にIPOやM&Aで一夜にして多額の現金を手に入れた人たちは、タワーマンションとは限らないが、不動産を買う傾向はある。自分の居住用不動産もあれば、投資用不動産もある。

「フェラーリ、タワーマンション、愛人」は2020年の東京において、さすがに死語だと思うが、その代わりに「高級グルメ、不動産、ギャラ飲み」が現代のアッパー層消費活動、三種の神器と言えるかもしれない。

2020年の東京で、しかも30-40代のアッパー層にとって、車は決して必需品ではない。Uberで十分だと思っている人もいれば、自分で運転するのはリスクと捉えて、社用車を買って運転手を付ける人はいる。ファッションはお金を持った後でブランド品を身につけ出す人もいる。

マンションは特に居住用としては、自分のための買い物の中では一番高額な買い物といえよう。賃貸派も存在するが、アッパー層が高級マンションを買うというのは、自然な行為に思える。

「(コミュニケーション手段となる)食」、「(投資活動による)金」、「女」がアッパー層にとっての最初の金の使い道と言える。

2-2.予約困難店の予約枠というステータス感と情報価値

高級グルメ活動に関しては、僕はそれなりに知見がある。もともと外食好きだったが、20代後半から様々なレストランに足を運ぶようになった。

そこそこレストラン事情に精通していないと、本来グルメ雑誌であった東京カレンダーWEBのプロデューサーなど務まらないし、2016年からは食べロググルメ著名人という食べログ公式レビュアーも務めている。

アッパー層の高級グルメ活動のサイクルを解説すると、最初は純粋に「美味しいものが食べたい」という単純な動機から始まる。

しかし、東京は世界でも稀に見る美食の街であり、2年先まで予約が埋まっているレストランも最近は増えてきている。食を目当てに世界中からフーディーが大挙しており、東京グルメバブルは収縮する様相を感じない。(あくまでコロナ前の話)

純粋に味を楽しむというよりは「予約が取れないレストランの予約枠を持っている」ということが、一つのステータスとなっている。レストラン側も意図的に「予約が取れないレストラン」としてブランディングしている場合もある。

その手のレストランは誰しもが予約できるわけではなく、店から認められた人が「予約ループ」と呼ばれる定期的に訪問する暗黙の権利のようなものを得る。

店から認められた人物であるということや、そこに至るまでのコミュニケーション能力も含めて、グルメ事情に精通する界隈では「あの人はあの店の予約が取れていいなあ」とか「私、ここの予約持ってるよ。すごいでしょ?」とドヤるようなニュアンスを感じないこともない。

人によってレストランとの付き合い方は十人十色なため、一概に否定しにくいが、「予約困難店の予約を持っている」というステータスは2020年時点の東京においては確実に存在する。

実際に直接聞いた例としては、事実上会員制となっている麻布十番の某高級てんぷら店に連れて行ってくれたら、一晩一緒に過ごしても良いという女性もいた。

こういうレストランを、僕は率直に「ヤレストラン」と呼んでいる。

その女性がインスタグラムをやっているかは不明だが、20代女性の中にはその年齢から推察するに自らの収入に不相応な高級レストランの食事を連日投稿する人も少なくない。

高級グルメ、言い換えると「予約が取れないレストランの食事」は「インスタ映え」の材料であり、それを彼女たちのインスタ写真には決して登場しない謎の人物たちがスポンサーしている。という暗黙の構図が存在する。

そしてそれらの高級グルメインスタグラマーのフォロワーたちは、彼女たちのグルメ写真と、決してインスタには映らない謎の人物たちとの関係を妄想したりして楽しむ。

たかが一枚の写真なのに、ある意味、俳句より行間を読んで楽しめるエンタメに昇華されている。

高級グルメ活動は、最初はピュアな気持ちで「美味しいもの食べたい!」「俺も自腹で銀座で鮨を食べれるようになったか」という優越感に浸るかもしれないが、徐々にアッパークラスの女性と知り合ったり、食事に誘う口実として、「予約の取れないレストラン」の予約を無駄に取り出すというサイクルに入っていく場合がある。

何を隠そう、僕自身がその一人だった。

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