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BDashCamp 2023 Spring:Pitch Arena出場企業10社を紹介

追記:本選の結果はこちら。

毎回参加させていただいているBDashCamp、スタートアップの登竜門的なピッチアリーナ参加企業の紹介と予想です。

直近の優勝企業は下記の通りで、優勝すると注目度も上がるので、その後資金調達しやすそうですね。

出典:BDashCampメディアキット

参考までに、前回記事はこんな感じ。

ピッチアリーナ予選参加企業は10社に減ったようですが、最近は別枠でCrypto系や開催地系のピッチイベントも併設されていて、分散されている印象もあります。

本戦進出予想:5社

3.MONO Investment(資産運用コンサルCRM)
4.NGA(AI採用)
6.オープンルーム(不動産情報SaaS)
8.SUPWAT (製造業向けR&DSaaS)
9.テープス(EC特化ノーコード)

優勝予想はMONO Investmentで。

1.batton 受発注自動化

調達状況:不明

発注書などバラバラのフォーマットをAI(GPT)で1つに自動統一する「FAXバスターズ」を提供。

印象的には、AI OCRが一歩進化した感じか。batton社は元々RPA事業も手掛けており、この辺の知見はありそう。RPAの顧客に対して、FAXバスターズでクロスセルというイメージは湧きやすい。

ただし、OCR的な技術自体がそこまで模倣難易度が高いのかはよくわからない。AI OCRで一世を風靡したAI Insideが下方修正で逆テンバガー化した例もあり、OCR領域自体のモートが堅牢にはあまり思えない。

2.Empath 2023/1/11 非公開額 商談解析AI(音声解析) B判定 リンク

投資家:SXキャピタル、ウィル、ベクトル

梅木:2023年1月に調達、UWでB判定。IP電話、オンライン商談を自動で要約・文字おこし・AI解析する商談解析AI「JamRoll」を提供。セールステックであり、セールス全般のDX、生産性向上ツールといえます。

議事録特化サービス、とかとはまた違いそう。AI議事録というサービスがあり、そちらは導入6,000社突破。

セールスイネーブルメントツールだと、ナレッジワークとかいます。

勝手な印象としては、JamRollは商談解析をベースに、セールスイネーブルメントツールとして解釈してほしいというポジショニングに感じます。個人的には、どちらかに振り切った方が顧客からするとわかりやすいので、その方が導入されやすいと思う。特にAI議事録とかは、低価格ですし、セールス不要でセルフサービスでマーケで売れていくイメージがある。

JameRollはそれなりの価格がしそうなので、セルフサーブではなくセールスが必要になりそう。JameRollを自社で利用して、どれほど強いセールス部隊を構築できるかが鍵になりそう。

3.MONO Investment 2022/5/13 1.3億 資産運用コンサルCRM リンク

投資家:INNOVATION HAYATE V Capital

梅木:UWでは扱いのなかった案件。MONO InvestmentはIFAに特化した
CRM×顧客資産見える化ツールとのこと。

単なる資産運用系は、ロボアド的なものはウェルスナビで限界が見えてきた。ロボアドのオチは、SP500積立の方が手数料も安くて良くね?というものであり、その比較検討を怠るであろう情弱層に対して深夜のTVCMをガンガンぶつけて積み立てを促すというスキーム。成長率が高いうちは高いバリュエーションが正当化されるが、成長率が落ちると株価も剥げ落ちる。

このMONO InvestmentはあくまでIFA特化のCRMなので、顧客の運用の成否は関係ない単なるツールである。疑問としては日本にIFAって何人いるの?という点だが、人数で言うと5,000人程度らしい。

IFA人数が爆増するとは思えない。顧客の最低資産規模がいくらかは不明だが、証券出身のIFAの平均顧客資産額は11億というデータがあった。

高齢者はIFAと大手証券会社の担当がいたりするが、経験上というか構造的に、証券会社のセールスやIFAの投資助言にそこまで大きな価値があるようには感じず、利幅の高い商品を売りつけてくるインセンティブ構造にあるように思える。今の30-40代はネット証券で育った人も多いので、資産規模が増えてもIFAを使いたいと思うかは怪しい。私は実際に興味ない。

顧客となるであろう富裕層は徐々に増えてはいくだろうが、若い富裕層はIFAを頼らなそうというロジックが上記であり、故にIFA市場が急速に拡大することはないと私は予想する。ただ、このツールが月額10万円とか取れれば、1,000人利用するだけでMRR1億取れる。その可能性はあると思う。ニッチに高ARPU商品を売る。という戦略はそれなりの妥当性がありそうだし、強い競合も現れにくそう。

4.NGA 2023/3/14 非公開 HR(AI採用) リンク

投資家:エンジェル

梅木:こちらもUWで扱いなし。第3世代AI採用アプリ『HelloBoss』を提供。リリースによると、ChatGPT関連の模様。

ChatGPT相当の言語モデル「GPT-3.5」が実装され、日本で初めて、求人サービスでの企業側の募集要項や求職者側の自己PRの自動作成が可能になり、ChatGPT技術による採用や求職に関するカウンセリングを受けることもでき流。

リリース

募集要項や自己PRが自動生成は楽だが、ChatGPT実装自体は技術的には大きな差別化要因にはならなそう。転職というやや重めの活動が、自己PR自動生成でライトに始められるという点は良さそうではある。

実際に、転職自体、ガチな面接を受けて進んでいくというよりかは、カジュアルに立食パーティーなどで「うち来ない?」みたいに誘う方が自然で良い気もします。

着眼点は良いと思いますが、なぜシードのスタートアップが虎ノ門ヒルズにオフィスを構えているのかは、謎です。

5.ONZO 2021/12/15 0.15億 サブスクコマースPF リンク

投資家:THE SEED

梅木:これも調達規模的にUWで扱いのない案件。当初はエンタメ系デバイス(ヘッドフォンとか)に特化したサブスクのONZOが主力だった模様ですが、ボタン1つでECサイトにレンタル機能を提供する「marvle」を展開。

ポジショニング的には、確実にmarvleの方が良いですね。ただし、レンタルと相性の良い商品と悪い商品はあるはずで、サイト上にサンプルとしてあるTシャツなどはレンタルとは相性が悪いと思います。

そして、レンタル特化サブスク(ラクサスやエアクロ)と異なり、通常のECがレンタルボタンをつけたからといって、バックエンドのオペレーションを売上比率が大して大きくもないレンタル用に最適化するのは非合理であり、通常のECがレンタル対応もしていく。というのは、あまり現実感がないハードルが高い世界に思えました。

6.オープンルーム 2020/2/27 0.25億 SaaS(不動産情報)A判定 リンク

投資家:KVP

梅木:UWでA判定。3年前の調達ですが、PRTIMESにはそれ以降のリリースがない。不動産業向け管理・編集SaaS「Forest」を提供。

不動産のマイソクをAI OCRでで整備するサービス。楽そう。ID単価月額5,800円。これあると、不動産事務の仕事が多少楽になりそう。ただし、営業マンが1人ずつ課金する意義はなく、不動産事務が課金すれば良さそうなので、導入ID数のスケーラビリティには限界がありそうな気もします。

3年前にA判定としたが、あくまでM&Aとかありそうだし、シードだし。という程度の後ろ向きな理由な気がします。

7.OptFit 2022/7/26 1.95億 プレA フィットネス(AIジム)  C判定 リンク

投資家:ディープコア、STATION Ai、ゼロイチキャピタル

梅木:UWでC判定。ジム運営AI化のGYMDXを運営。初期費用30万円、月額4万円。

ジムの監視コストを削減しようというサービスで、すでに150施設以上が導入。chocozapも導入企業に名を連ねる。

一方で私は4月まで2年半くらいjoyfitユーザーでしたが、仙台坂下の南麻布店は無人監視が基本でした。5月からchocozapに変わったのですがw

チェーン展開しているジムならば、1店舗に導入して良ければ多店舗導入しやすいので、セールスコストは低そうに思えます。

フィットネスクラブは2018年には国内で5,800件に上るというデータもあり、仮に3割のシェアをとって月額4万円で提供すると、MRRで0.7億に。悪くはないですが、スケーラビリティに欠ける印象もあります。パーソナルとかだと、構造的に1on1なので監視にコストを割かないですしね。

事業を見返すと、悪くなさそうと一瞬思ったのですが、アップサイドが限定的そうなのでC判定にしたと思われるのは、我ながら納得でした。

8.SUPWAT 2022/2/24 1.5億 シード 製造業向けR&DSaaS A判定 リンク

投資家:Scrum Ventures、ディープコア

梅木:UWでA判定。WALLという、製造業における研究開発・設計・生産領域において蓄積されたデータを活用した業務プロセスの標準化を促進するプラットフォームを提供。AIと機械学習を活用したSaaS型製品。

おそらくUWで書いた際は、SaaS型でR&D用にAIだから儲かりそう。と思った気がするのですが、見返すとこれってMust Haveな製品なのかな?という疑問を持ちました。「当社の業務の何かをAI化した方が良いかな」というファジーなニーズに対するソリューションにも思え、Nice to haveの域を出ない気もしました。

その点をどう判断すべきか、悩ましいなと。ぜひピッチで、Must haveであるという話を聞いてみたいです。

9.テープス 2023/1/5 0.5億 プレA EC特化ノーコード リンク

投資家:New Commerce Ventures

梅木:UWで扱いなし。ノーコード・ローコードのブームも過ぎ去ったようにも思えますが。EC業務を自動化する「TePs」を提供。HPを見た限り、結構使い方が難しそうにも思えました。多分、私程度のリテラシーだと無理w

使いこなせると、バイト一人分くらい削れそう。しかも、自動化だからミスがない。私は社会人2年目に半年だけEC企業に勤めましたが、受注処理をミスって隣の女上司に怒鳴られていたのは、パワハラだったなという苦い思い出があります。自動化できれば、そんなパワハラも減るはずw

料金は無料、1.5、3、5万円の4プラン。1月時点で500社導入とありますが、無料も含まれている。ざっくり300社で平均3万円とすると、MRRは900万円。ただし、内容的には小規模のECサイトでも十分使えるものだと思うので、導入企業数のアップサイドポテンシャルは多少はありそう。悪くないビジネスに思えます。

10.ザブーン 2023/2/22 1.6億 プレA 海事産業特化SaaS B判定 リンク

投資家:DIMENSION、インキュベイトファンド、SMBCベンチャーキャピタル、山口キャピタル

梅木:UWでB判定。海事産業に特化したSaaS「MARITIME 7」を運営。なぜかサービスページがなく、notionページしかないw 流石にnotionしかないのは手抜きではないでしょうかw

海事特化SaaSであり、機能は船員労務管理や船舶管理など。船向け特化であり、バーティカルSaaSといえる。ニッチなので強い競合が現れる確率は低そうだが、アップサイドもまた低そうな印象を受けます。ARPUを高められる施策が何かあれば、少し評価が変わりますが。あとはM&Aもされにくそうな構造ですね。

導入社数の上限はどの程度か、ID課金か否かなどは、ピッチを聞いてみたい。

以上です。札幌で適当にフラフラしておりますので、読者の方は気軽に話しかけていただけると嬉しいです!あわよくば、一緒にすすきのでウェイウェイしましょう。26金はまだ空いていますので、ジンギスカン相手が欲しいです。

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