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暇を生み出したビジネスモデルと、暇に対するメンタル

本稿は2020年夏発売予定「暇の研究」の一部を紹介したものである。
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前回の記事では、「暇を持て余している、暇な富裕層7つの属性」について紹介した。

暇の研究にあたり、まずは「いかにして暇という状態を作ったのか」を僕の実体験を元に紹介したい。

1-1.サブスクビジネスの収益性の高さ


自分自身の話で手前味噌ではあるが、「暇の研究」は自らの実体験を通した研究であったため、僕が暇になった背景を自己紹介とともにまずはお話ししたい。

1984年生まれで北海道出身、一浪後に慶応義塾大学に入学し、一年留年し2009年に卒業した。新卒ではサイバーエージェントの子会社に入社するも、1年経たずに退社。以後3年で3社の転職を経て、2011年冬に独立した。

独立初期はスタートアップ企業複数社のマーケティングのコンサルなどをしていたが、2012年春には世界初のオンラインサロンであるUmeki Salonを開始。2016年にはnote上でスタートアップの資金調達データベースを提供するウメキワークスを開始した。

2015年から2017年半ばまで雑誌東京カレンダーのWEB版を立ち上げプロデューサーを務めたり、M&A仲介の仕事もしてきたが、2020年現在はクライアントワークはゼロ。基本的にオンラインサロンとnoteのみで生計を立てている。

2020年は独立して9年目となるが、独立後に忙しいと感じたことはほぼない。局所的に、一週間だけ忙しいということは若い頃はあったが、クライアントワークがなくなってからは輪をかけて暇になった。

暇という言葉をビジネス文脈で言い換えると、短い労働時間で自分が生きていける程度には稼げるくらい、生産性が高いといえる。

独立当初、コンサルティングをしていた頃は、時給1万円で働いていた時代もあった。コンサルティング業は末端は時給的な労働集約型になりがちだが、上流工程にいくと月額顧問料モデルとなる。月ごとに稼働時間の上下動はあるが、時給換算すると1万円を切ることはなくなってくる。

だが、基本的には大口顧客からの大型受注がメインとなり、一定の時間を割く必要があるという点では、労働集約的であるという構造は変わらない。

一方で僕が現在も手がけているオンラインサロンやnoteはコンテンツビジネスであり、どちらも月額継続課金(サブスクリプションモデル、以下サブスクと略して紹介)を前提としている。

このビジネスモデルは、たとえば最初は1,000円の記事を書いて10人しか購読者がおらず、1万円にしかならなかったとしても、これが1,000人に読まれれば100万円になる。

同じ記事1本を生み出す労力はさほど変わらない。僕が実際に有料のnoteを1本執筆するのに割く時間は平均3時間程度だ。

実際に有料記事が1,000人に読まれるようになるというのは、さほど簡単なことではない。僕のウメキワークスの購読者数も850人強であり、1,000人に到達していない。

ただし、僕はホリエモンのような有名人でもないわけで、ただ地道に毎週スタートアップ関連の情報を集めて、自分の意見を加えて発信し続けただけである。

しいて言えば、コツコツと真面目に取り組むことが比較的得意という話で、特段すごいバズる記事を書ける才能があるわけでもない。

コンテンツビジネスのメリットデメリットを自分なりに理解しているつもりであり、ダウンサイドリスクがほとんどなくて初期投資も自分の時間以外は必要ないから、とりあえずやってみようと思った。続けてみたら、なんとか形にすることができた。

コンテンツビジネスは軌道に乗れば投下時間に対する生産性が上がり続けていく。平たく言うと、同じ3時間をかけて制作した記事が、当初は1万円しか生み出さなかったのに、いつの間にか100万円生み出していることもある。

時給にして3,000円から30万円になることもあるのだ。

しかもコンサルティングのように労働集約ではなく、大口顧客一本釣りではなく、数百人から数千人単位の月額課金のお客さんがいる。

前回の記事で説明した通り、メンタリストDaigo氏は月額550円で13万人の購読ユーザーを抱える。13万人が翌月一気に10万人まで減ってしまうことは考えにくいのではないか。

コンサルティングのような大口顧客がいるビジネスと、個人向けサブスクのような数千人単位で月額課金するユーザーを抱えるビジネス、どちらの方がリスクが低く、アップサイドが高いだろうか。

いうまでもなく、コンテンツビジネスだ。

「記事を書いて稼ぐ」となると、安易に既存の雑誌やウェブメディアに寄稿しがちだ。たいていの原稿料は良くて3万円程度だろう。

特にnoteが本格的に普及する前は、僕も自分自身の会社名でもありブログメディアである「The Startup」に記事を書くだけではなく、東洋経済オンラインや月刊事業構想という雑誌に寄稿したことがある。

自分でnoteで500円に設定して販売した記事は、最初は1本も売れないかもしれない。媒体に寄稿した方が、確実に労働の対価は得られる。だが、繰り返し言うが、原稿料は良くて3万円だ。

悪い言葉で言うと、原稿料をもらって寄稿しているライターは、媒体に搾取されているのだ。目の前に現金というニンジンをぶら下げられて。

媒体に寄稿することで「寄稿実績」としてプロフィールに書けるようになるかもしれないが、自分自身がメディアとしてコンテンツという資産を蓄積していく価値と比べると、他媒体に寄稿するのは目先の現金を得るための、スタートアップで言えば「ラーメン代稼ぎ」と呼ばれる受託ビジネスにすぎない。

目先の現金のために安易に媒体に寄稿して原稿料を稼ぐのではなく、じっくりと自分の媒体を育てた。メディアやインフルエンサーは農業ビジネスと似ており、何か一つホームランコンテンツを生み出しただけではそれだけで長く生きていくことはできない。

僕が暇になった背景は「コンテンツビジネスによるレバレッジ(テコの原理)が効いたこと」が主な理由である。

コンテンツビジネスの性質を見極め、コンサルティングビジネスを捨てて、地道にオペレーションを続けたという結果でもある。

ちなみにこれは僕自身の体験談にすぎず、他にはもっと株式や仮想通貨のトレーディングで短時間で巨額を稼ぐ生産性が高い人も存在する。

しかし、投資は資金がマイナスになるというリスクも忘れてはならない。自らのビジネスであれば、広告費や人件費をかけなければ、コストは自らの時間くらいであり、手持ち資金が減ることはない。

サラリーマンの時給は高年収のキーエンスですら8,000円程度と聞いたことがある。サラリーマンは労働市場という相場が存在し、その相場の範囲内でしか稼げない仕組みとなっている。

僕のように規模が小さくとも自分で商売をするビジネスマンはそのビジネスモデルのリスクの範囲内での収入を得ることができる。

その中でもコンサルティングのような労働集約的で結局は時間単価の相場内に縛らられるビジネスもあれば、コンテンツビジネスのように売れなければゼロ円。当たれば青天井というモデルもある。

どのビジネスモデルを選択して、そこに時間を投下するのか。僕のようなインフルエンサー・コンテンツモデルは初期投資が自らの時間以外はほぼ不要なこともあり、地道に諦めずにやり続ける精神力があり、コンテンツの勘所が良ければ花開く場合が多々あるだろう。

YouTuberを中心に成功したインフルエンサーを見る機会が増えたことで、インフルエンサーモデルを選択して生計を立てていきたいという人が増えてきていると感じる。

子供のなりたい職業の上位にYouTuberが入るようになってきており、子供にとってのスターになっていることを嘲笑うような風潮も社会にはあるが、YouTuberはローリスク・ハイリターンなビジネスモデルであり、サラリーマンよりよほど経済的期待値が高い職業である。

自分が得意なことややりたいことと、その市場のマネタイズモデルを冷静に見極めて、最適な掛け算のスポットを探すことが大切である。僕の場合は、それが比較的上手くいったといえる。

少なくとも、今のところはお金のために暇を捨てる必要はない。

2年前に書いた記事だが、実際の僕の労働時間と収益性に関する記事は、リアリティありすぎる数字が興味を持たれたのか、よく売れた。


1-2.なぜ売上を伸ばさなければならないのか


コンテンツビジネスのスケールにより高い生産性を手にした結果、僕は暇になった。という話をしてきた。

しかしそのビジネスモデルだけで、暇になった。と説明するには不十分である。

人によっては、投下できる時間をできるだけ多く投下して、稼げるだけ稼ごう!24時間働けますか?というワーカホリックな昭和的サラリーマンマインドを持つ人も、未だにいるかと思う。

ただ、僕の場合はあまりそういう気分になれなかった。

以下有料です。

こちらの記事は単品でも500円で販売しますが、「暇の研究マガジン」は10本収録予定で980円で販売予定となっています。マガジンの方がお得ですので、マガジンのご購読をぜひ^^

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