お茶の聞き方をご存じですか?
台湾や中国の茶館に行くと工夫式(クンフー式)という手間のかかった手順でお茶を入れていただく機会があります。小さな茶器たちを並べていれる工夫式のお茶は、味はもちろんですが香りを最大限に引き出す方法なので、ぜひとも余すところなく楽しみたいもの。
そこで今回は、台湾茶・中国茶を楽しむ為の『正式なお茶のいただき方』を少しだけご紹介いたします。
そう難しくはありませんし、これだけ覚えておけば旅先の茶館でお茶をいただく時もちょっと慣れたお茶通に振る舞えますのでぜひ試してみてくださいね。
お茶を飲むための茶器と香るための茶器
お茶の香りを楽しむことを「聞く」と言います。
元来、台湾茶や中国茶は香りを楽しむお茶でもあるので、飲んで楽しむための飲杯(茶杯)の他に、香りを楽しむための聞香杯(もんこうはい)という茶器も用意されています。
これらの茶器は日本で見かける事は少ないですが2点1組のセットになっている茶器で、お茶をいただく時にはまず聞香杯で香りを楽しみ、飲杯で味を楽しむ流れになります。
飲杯はお茶を飲むための茶器なので直接口をつけてお茶をいただきますが、聞香杯は香りを楽しむ為に作られた茶器なので口はつけません。細長い筒状の茶器に鼻を近づけてお茶の残り香を楽しみます。
それでは、茶杯と聞香杯で楽しむお茶のいただき方を見ていきましょう。
1.台湾茶は最初、逆さまの状態で提供されます
工夫式で正式にお茶を淹れる際は、茶壺(ちゃふう、小ぶりの急須の事です)から茶海(ちゃかい)という茶器に一度お茶を全て移してから各人の茶器へと注ぎ分けます。これはお茶の濃さを均等にしてどのお客様にも同じ味・香りのお茶を楽しんでいただくための心遣いで、お茶は最初、細長い方の聞香杯へと注がれます。
次に煎れ手は聞香杯に茶杯を逆さまにかぶせ、それをひっくり返した形でお客様に提供します。(写真下の状態)
煎れ手がお茶を提供する時の状態。熱々のお茶は聞香杯の中に入っています
2.まずは聞香杯で香りを楽しんで
飲み手のお客さまは自分の手元に提供された飲杯と聞香杯のセットをテーブルに置いたまま、聞香杯をそっと持ち上げてお茶を茶杯に移します。聞香杯の中のお茶はとても熱いので、ヤケドにはくれぐれもご注意ください。
そして空になった聞香杯を両手の平で包むようにして2~3回転がし、中の水分を飛ばして香りを広げます。
この作業も茶器がかなり熱くなっているので注意が必要ですが、北京や台湾等の茶館ではお店のスタッフの方が転がすところまでやってくださるお店もあります。また、慣れずに転がしてヤケドをしたり最悪、茶器を割ってしまう場合もありますので無理に行うことはありません。
香りが立ったところで聞香杯の中に鼻先に近づけて匂い立つ香りを楽しみます。聞香杯から匂う香りは飲杯のそれとはまた違った鮮烈なお茶の香りになりますので、中国茶を楽しむ機会があればぜひ、香りも楽しんでいただけたらと思います。
台湾の烏龍茶に多い清香(チンシャン)と呼ばれる香りの場合はお花のような甘く爽やかな香りが広がります。紅茶などは甘い蜜や棗の香り、岩茶の場合はこっくりとした滋味のある香りが楽しめますので、個性豊かなお茶の香りを楽しんでくださいね。
3.飲杯でゆっくりお茶の味わいを楽しみましょう
聞香杯の香りを楽しんだら、お茶が冷めないうちに今度は飲杯(茶杯)でお茶の味を楽しみます。飲杯は小さな茶器なのでお茶は100ccほどしか入っていません。ほとんど一口、二口で終わってしまいますが、凝縮された旨味がつまっていますので存分に楽しんでください。
茶海にお茶が残っていればいれ手の方がおかわりをすぐに注いでくれます。
もし茶海の取っ手をこちらに向けて手近な所に置いておいていただいた場合には「ご自由にどうぞ」というサインでもありますので、自分で注いでも問題ありません。
工夫式でいれる台湾茶や中国茶は基本的に3~4煎ほど、お湯を注いで繰り返しいれます。フレッシュないれたての1煎目と、茶葉が開く2煎目、3煎目では味も変わってきますので、ぜひ煎を重ねた時の変化も楽しんでみてくださいね。
台湾茶や中国茶は「おいしく・楽しく」がモットーです。堅苦しく考えずにゆっくりのんびりティータイムを楽しんでみてくださいね。
聞香杯のスマートな持ち方をご紹介
工夫式でお茶をいただく際にスマートに見える聞香杯の持ち方を少しだけご紹介すると、基本は右手で持つこと。
まず飲杯と聞香杯がセットされた状態で提供されたら右手で聞香杯のおしりをつまんでそっと上に引き上げます。
聞香杯に鼻を近づけて香りを楽しむ際は、女性の方は茶器を持った右手に左手をそっと添えてください。茶器を丁寧に扱うことで綺麗な所作に見えます。
男性は筒をぐっと片手で包むようにして鼻を近づけます。茶器は熱くなっていますのでくれぐれもヤケドにはお気をつけくださいね。
香りを楽しむもう一つの茶器、蓋碗
最後にもう一つ、香りを聞くのに最適な茶器と言われているのが蓋碗です。
蓋碗(がいわん)は大ぶりの飲杯に蓋とソーサーのついた3点セットの茶器で多くは磁器かガラス製ですが、こちらは蓋部分で香りを聞きます。
蓋碗は絵柄が蓋と飲杯、ソーサーまで続いているユニークなものも
お茶がはいったら、まずは飲む前に蓋の取っ手をつまんで顔の前まで引き上げ内側を鼻の前で二~三回軽く左右に動かして香りを立たせます。蓋の裏に付いた香りは聞香杯と同様にお茶の香りをダイレクトに楽しめます。
蓋碗もお茶を注ぐと高温になりますので取り扱いには注意が必要ですが、蓋の取っ手部分を持てば熱さはそれほど感じません。
蓋碗で香りを聞けばちょっとしたお茶通に見られることもありますので、優雅にゆったりと、茶器を大切に扱うつもりで香りを楽しんでみてくださいね。
いかがでしたでしょうか?
日本には茶館も少なく、あまり出会う機会のない中国茶器たちですが、もし、どこかしらの旅先で触れる機会に巡り会った時にはこうした香りの楽しみ方を思い出していただけたら幸いです。
ゆっくりと豊かなお茶の時間を満喫してくださいね。
台湾茶や中国茶の飲み方、ご質問などがありましたらmail@umehana.jpまでお気軽にお寄せください。中国茶芸師の資格を持つ店長ニルがご質問にお答えいたします♪お茶の販売、卸、引出物・内祝い等のご相談もどうぞ!
梅花茶楼楽天市場店 http://www.rakuten.co.jp/umehana/
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