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ChatGPTのような大言語モデルが浸透するまでには、Webシステムの席巻よりも時間かかりそう

大言語モデルがどう浸透していきそうかの予想については↓で書いたけど、
実際の浸透には時間がかかりそうな気がする。

大言語モデル以外の浸透例

Webサイト・Webシステム

Webサイトのようなシステムはこの20年で完全に浸透して、アーリーアダプター層まで広まり、あとはしらみ潰しのようにレイトマジョリティーへの浸透フェーズという感じ。

とはいえ、2000年初頭から2020年くらいに広まっていったこのWebでの仕組みって、実は超単純で、データベースに情報保存して、それをTPOに合わせてリッチに表示し、それをどこでもアクセスできるようになったということ。

「どこでもアクセスできる」や「データベースやリッチに見せる仕組み」自体は崇高な発明だけれども、これは「蒸気機関の発明」「電気の革命」のようなもので、誰かがめちゃめちゃ研ぎ澄ませてレベルを上げてくれたから、あとは使うだけで良いという感じ。電子レンジなんかいい例で、中の仕組み知らなくても使えて、やれることは「蒸すように温める」という1択ですごいシンプル。

ブログなんて好例で、Railsの最初のキャッチコピーの「15分で作るブログ」のように、仕組み自体はシンプルで、「何を表現する」の大喜利でビジネスが展開できるようになった。

つまり次の進化段階があり、「何を表現するか」がビジネスの本領発揮で、ビジネスになると一挙に浸透する

  • どういう仕組みなのか

  • どう使えば便利なのか

  • 何を表現するか

Webの場合、次の通り、早々に「何を表現するか」に至れた。

  • どういう仕組みなのか

    • Webの場合、大きいところは2000年初頭に固まった

  • どう使えば便利なのか

    • 仕組みとほぼイコールで、「データベースの値をリッチに表示する」一択。データベースに何を入れるかを考えるだけがミッションになった

  • 何を表現するか

    • 前段が早々に固まったので2000年代前半からこの大喜利が始まり、2020年である程度やり終えた感がある

2020年までのITの流行でできてきたものは、極端に言うと、ブログと大きな大差なく、ドメイン知識込み込みのデータベースとロジックを使ってリッチに表示するため、という感じで、やろうと思えば2000年にできたものが多領域に浸透した20年間と言える

ディープラーニングを生で使う機械学習

浸透した例ということでWebシステムを出したが、実力があるのにいまいち浸透しきれていないものの例として2016年に話題になったディープラーニングによる機械学習について触れる。

仕組み自体は、ある領域の判断について、分岐とかが多様すぎてifとかでルールベースの決め打ち判断ができないものについて、過去の膨大なデータを食わせることで、それなりに妥当な判断を下せるようになるというシンプルなもの。

ただ、この仕組みの説明は、プログラミングで言うところの 「変数というものがあって、x = 3と書くと、変数に値を代入できるよ」くらいのコアの仕組みであって、どう使えるかについての説明に至っておらず、Webで言うところの「データベースの値をリッチに表示できるよ」に相当するところで言えば、次のようなものがある。

  • いろんな要素がある中で、価格予想とかできるよ(回帰分析)

    • 例: 不動産の価格予想について、部屋数や窓の向きや駅からの距離とか多様な情報から家賃予想できる

    • 例: 去年の売上実績から、祝日数とか違う今年の売上予測できるよ(時系列分析)

  • 複雑なインプット投げ込んで、それが何かわかるよ(分類問題)

    • 例: 年齢や性格情報などを入れて、ある人と相性が良いか判断する

    • 例: メールをインプットにして、それがスパムメールか判断する

    • 例: 手書き文字1文字の画像をインプットにして、それにどの文字か判断する

    • 例: ある人のアクセス状況や工場フローで、問題があった場合に判断する(アノマリー分析)

Webのところで出した進化段階で言うと、次のとおりであり、何を表現するか大喜利までいけていない

  • どういう仕組みなのか

    • 2016年あたりにたたき台が出来上がり、その後順調に進化

  • どう使えば便利なのか(ここが今の段階)

    • ここでの理解が難しいため、参入できる人が少ない

    • さらに、ここでの発散もまだ続いているため、「バカでもこう使っときゃええねん」というデファクトスタンダードが固まらない

  • 何を表現するか

    • 今の段階では「どう使えば便利なのか」を超えられた人だけが考えることを許された場所になっている

    • さらに浸透を妨げるのは、生のディープラーニングができることは、「狭いけど重要な領域優秀な判断を行う」という、評価しにくい職人芸的な判断なので、成果物の強みが分かる人にしかわからないものとなってしまっている

この生のディープラーニングは囲碁などで話題になりその後失速していた感はあるが、実際大言語モデルと同様に得られた武器であり、ちゃんと頭使って組み込めれば、その領域に特化した判断ロジックとして強力なものが組め、その点で当意即妙なレスポンスを返せるが自然言語や内容の揺れに振り回されるChatGPTよりも信頼度が高いレスポンスが返せる優れものである。
実際、生のディープラーニングは流行的には失速した感はあるが、実質的に活用できているところは、水面下で新たな機械学習システムを今でも作成して組み込んでいる。
余談だが、目立たないところで数理モデルもディープラーニングと同じような陰にいる実力者感がある

※補足: わざわざ「生のディープラーニング」と表記する理由
ChatGPTでも裏ではディープラーニングが使われており、自然言語処理に特化して文章生成する仕組みが、大量の学習データで賢くなり対話型になったものである。そのため、ディープラーニングの言語特化型での進化がChatGPTなどの大言語モデルであり、それ以外のディープラーニングの使い方もあるという点で区別している。

ChatGPTのような大言語モデルの浸透

予想では、Webの浸透というより、生のディープラーニングのような浸透の仕方の方が近そうな気がする。理由はディープラーニングと同じく「どう使えば便利なのか」の発散が長くかかかりそうだから。

冒頭の記事のステップ1,2で挙げたように、個人レベルで生活を豊かにしている人は多いと思うが、その浸透範囲は「使いこなせる個人」に限られている感がある。

多くの人にとっては、わかりやすい使われ方である「文章要約」や「聞いたらそれなりのこと答えてくれる」マシンとしてしか認識されず、「別に自分はそれ使わんでもええしなぁ」という感じ。

幸いハード面での参入障壁は、GUIでChatGPTを使うだけというだけなので低いが、ソフト面はシンプルに社会の頭いい人大喜利という感じなので「どう使えば便利なのか」の発散にはそれなりに時間がかかりそう。

別に浸透は目的ではないけれども、多くの人が思考停止で「こう使えばいい」とわかると、ビジネスの人が「システムでこれ実現して」を提案しやすく、システムにも組み込まれやすく、多くのもので大言語モデルのメリットを享受できるようになる。

実際にシンギュラリティは始まった感はあるけど、流行りじゃない実質のポテンシャルが発揮されるのは10年後とかになるかもなぁ。
冒頭の記事で書いたステップ3,4も、個人の思いつきレベルであり、それ以上の広がりがあるかもしれないし、
それこそHUNTER×HUNTERのクラピカが鎖の念能力を鍛えたときみたいに、社会の熱狂的な人が四六時中いじって、舐めたり眺めたりすることで「どう使えば便利なのか」が深まっていく気がする。「猫も杓子もとりあえずこう使ってれば良いんだよ」というデファクトスタンダードが固まることを楽しみにしてる

余談

アイキャッチ画像をChatGPTを使って作ってみたけど、めっちゃ難しい。。。
オタ恋もそうだけど、AIっぽいとしても写真に見紛うような画像作れる職人へのリスペクトがすごく高まった

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