なにもかも嫌になって ~北条鉄道~
○年前の冬。
なにせこの年のどん底期、長かったんですよ。
人生の中でもあんなに落ち込むことってあまりないな、というレベルの落ち込み方をしていたんです。
どうしても立ち直れない自分にまた落ち込み、でも大人だから元気なふりをしないといけなくて無理を重ね、回復できないまま何か月も時間が経っていった感じです。
あーあ。
どっか行ってしまいたいな。
「赤い電車」とか歌いだしてしまいそうです。
そんなふうに過ごしていた頃、誰かとの会話の中で「北条鉄道」というワードが出てきました。
北条鉄道……?
さんざん路線図見て過ごすようになったけど、そんなのどこにあったかな?
と思ったらビックリ、兵庫県にあるというのです。近い!!
そういえば私が路線図で眺めているのって、ほとんど関西の外ばかりでした。
関西圏内はいつでも行けるからということで、あまり真剣に見ていなかったのです。
ちなみにですが、非テツの兵庫県民に北条鉄道の話をしても
「ほうじょう……てつどう……??」
と、未来から来た人みたいなリアクションをされることが多いです。
とりあえず近場だし、知らなかったことが悔しかったので、なにかの帰りに北条鉄道に立ち寄ってみることにしたのでした。
粟生駅で待っていてくれたのは、青虫みたいなかわいいワンマンカーでした。
シートもえらくレトロです。
エンジンの音がドゥルンドゥルンいって、それなりに揺れますが、粟生駅も含めてたったの8駅の小さな鉄道なので、特に疲れるほどのものではありません。
(※ちなみにこの訪問はキハ40がやってくる数年前の話。フラワ2000だけが走っていました)
列車が走り出すと、だんだん田園風景に変わっていきます。
とてものどかです。
法華口とか長とか、なんて素敵な木造駅舎でしょうか。
そんな素敵な駅舎たちも、クリスマスの仕様でちょっとはしゃいでいます。
北条鉄道に揺られていると、なんだかものすごくホッとしてきました。
ああ、いいな。(ドゥルンドゥルンしてるけど)静かだな。
車窓からは背の高い建物がほとんど見えず、ただもう田んぼと木々と少しの家。
いい感じの古民家カフェに行ったときみたいな気持ちになりました。
北条鉄道は本数が少なく、だいたい1時間に1本ペースなので、今回は下車はあきらめました。
とりあえず終点の北条町まで行って折り返します。
この頃にはすっかり陽も暮れて、手作りのイルミネーションたちが駅を盛り上げていました。
人間くさくてあったかい空気があちこちから香ってくる鉄道です。
私はとてもリラックスした心地で帰路についたのでした。
……この北条鉄道にはこの後も何度も遊びに行くようになるのですが、それはまた別のお話ってことで。
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