諭吉と夏目

こうめちゃんがまだ、二歳にならない頃の話です。
こうめちゃんが風邪気味で、お父さんとお母さんがお仕事に行くのでこうめちゃんのお家で留守番をしていました。
 
その頃のこうめちゃんの楽しみは、お財布の中身を全部出すことで、小銭を一つずつ「どーじょ」と言って渡してくれました。
クレジットカードは理解していないので、興味はないらしく、一番好きなのは小銭。持ちやすいし、音が出るから、そりゃそうよね。
 
が、しかし、小銭では将来生きていけない!
このままではいけない!と思ったUmeは、こうめちゃんに、『諭吉』と『夏目』を教えることにしました。
 
お札を並べて、「いーい? こっちが諭吉、こっちが夏目。これ、大事よ。諭吉さんをいっぱい集めると良いんだよ。」
 
脳みその柔らかいこうめちゃんは、すぐに覚えて、
 
「こうめちゃん、諭吉どっち!?」
 
と聞けば、すぐに一万円札を指差すようになりました。

さて、問題はもうお分かりでしょうか。
帰ってきた弟に自信たっぷりに将来役に立つ新特技を披露してもらうと、一言。
 
「いや、ねーちゃん、それ、夏目じゃなくね?」

そうです。夏目さんは昔のお札。今は『野口さん』だったのです。
こんなUmeちゃんを許しておくれ。
 
そして時代は流れ。
もはや、2024年には、諭吉さんも姿を消し始めるではないですか。
 
将来のため!という刷り込みは、
儚くも散りゆくのでした。