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前夜の魔物。

「大切な日の前日の夜」に、この文章を書いている。
正直、noteを書いている暇などない。早く明日の準備をして、ゆっくり寝た方がいいことは自分でも重々承知している。
ただ、何となく、「前夜」には魔物が居そうな気がする。

少し前まで卒業論文を書いていたときもそう。
提出日にソワソワが発生するかと思いきや、一番身を削られたのは、提出日前日の夜だった。準備は間に合うのか!?という、タイムレースみたいな不安とはまた違う感情。この夜が明けてしまったら自分が全く違う世界に行ってしまうような気がして、身体の全てが神経になったような感覚を覚えた。

他にもこの感覚を味わったのは…そう、数年前、緊急事態宣言が出る前の日。
コロナ禍において、何度目かの緊急事態宣言が出される前の日、私は用事があって渋谷のキラキラしたデパートの中にいた。近くの劇場では明日からは中止になる公演が上演されていて、デパートの中では明日からは休業するお店の商品が飾られていて……このときも、心がざわっ、と動いた。普段は流し見してしまう雑貨屋さんの商品を、なぜか一つ一つ丁寧に見てしまった。自分のいるその建物だけ、時空から取り残された気分になった。

夜と朝。
時間としては地続きになっているのに、どうしてこうも夜を越えることは難しいのだろう。そんなに削られるなら早く寝てしまえばいいのに、という声が聞こえてきそうである。たしかに。
でも、前夜の、感情という魔物と戦っているときの感覚が、何だか生きていることの象徴のような気がして、私は今日もまた性懲りもなく夜更かししてしまうのだ。

どうか、素敵な朝を迎えられますように。