【ゲームレビュー】hellsinker.【優】
一般的にゲームを遊ぶ上で、作り手とプレイヤーは対等な関係にある。これはゲームという商品に対して対価を払っているため、プレイヤーにはそれで遊ぶ権利と、好き勝手に評論する権利が与えられるということだ。
しかし、同人作品においてこのような商売の基本は成立しないことが多い。なぜならそれらは、はじめに創作ありきであり、またその作品の需要/供給曲線による適正価格に対し明らかに小さい値段で頒布されるからだ。このような理由から、私たちは作品を「プレイさせてもらう」という立場にならざるを得ない。
なんて偏屈な言い方をしましたが、つまり創作者は売れようが売れまいがなんて割と関係なく作品を作り続けがちだし、その作品も労力とか必要なコストとかに対してめっちゃ安く売ってるから感謝しようねという、同人の消費者側の心得を偉そうに述べただけです。
あ、ここからいつもの調子と文体に戻りますね
上から二段落の語りは持論ですが、まあ人と関わるうえで下に出といて悪いことはそうないでしょう。今回私がレビューするのは、そんな下に出ざるを得ない我々の姿勢を存分に利用し、これでもかと不親切設計にしまくった同人作品「Hellsinker.」(980円)です。
総評と概要
良い点/悪い点
良い点
・操作をマスターした時の爽快感
・表現力と熱い演出
悪い点
・操作とゲームシステムに慣れるまでが苦痛
・ストーリーの解読が難しすぎる。また、内容はけっこう中二病
総評
弾幕STGという形式をとっていますが、その実態はアクションゲーム。アクションゲームとしてもちょい難くらいの操作感、かなり多めの情報量ですが、最近よく聞くなんとかビリティ的な親切要素は皆無と言っていいでしょう。しかし不親切であること自体が、難解なゲームシステムやストーリーを解き明かした時に訪れるカタルシスの連続を支える柱であり、その体験こそがこのゲームを名作たらしめているのです。
クリアまでのプレイ時間:20時間 (人によってそこそこ異なります)
ここから先未プレイ者向けの解説のため、専門用語を用いない不正確な説明となりますので、ご留意ください。
ストーリー
付属の取説がとっっっても分かりにくいので要約しますと、
人類の技術めっちゃ発展した
だけどその技術で文明が自壊
残された遺物とか使って一部の子孫が生き延びる
↓
ながーい時間がたって人々の生活に余裕も出てきたころ
過去の技術を再現しよう運動が一部で起こるが失敗
↓
主人公達の組織:その流れで作られたけど結局放置されてるやべー塔を破壊して、あいつ等の尻ぬぐいしましょう(結果2回の失敗)
↓
主人公達:今度こそラストチャンスっぽいから本気で壊しに行くぞ~
こんな感じ。
正直難解すぎてプレイ中はついていけませんでした。
難易度評価
最近妖ルナ(※)をなんとかクリアした私ですが、このゲームにはとても苦戦しました。ですが裏を返せばSTG力はそこまで必要ないということでもあります。この作品は弾幕STGというよりもアクション、しいて言うなら「hellsinker.」というジャンルですから、求められるのはやはり避け力よりへるしんか力。
hellsinker.の前では誰もが赤子に同じですので、「弾幕STG苦手だし……」と尻込みしている方は、余り気負う必要はないかもしれません。
アクションゲームとして見た時の難易度は、歯ごたえはありますが決して鬼畜ではないと言い切れます。少々の救済措置もありますし、フロムゲーやらその辺よりは手軽にクリアを目指せると思います。
※妖ルナ:東方妖々夢という同人弾幕STG作品の最高難易度
「理解」が重要となるゲームデザイン
理解させる気のない取説とチュートリアル
このゲームをインストールしてまず触れるのは、取説読む派の人間なら「手引きと概要.html」、読まない派の人間なら作中のチュートリアルでしょう。ですが、どちらもゲームを理解させる事を放棄しています。取説の方には難解な文体で書かれた、専門用語だらけで内容もまた難解なストーリー。操作説明も用語でごちゃごちゃ。かといってチュートリアルに進んでみればまた別の用語と、STGとは思えないトリッキーな操作があなたを翻弄します。
初心者を蹴落とす四面
さて、不透明度90%のストーリーと、途中で投げ出したチュートリアルから得たおぼつかぬ操作を駆使し、いざゲームプレイ!あなたは一面で死にまくりながら操作を覚えます。やっとの思いでたどり着いた二面、ここでSTG初心者は詰み、さらに頑張ってたどり着いた四面では、二面に息を飲んでいたであろうSTG経験者も次の息をしなくなります。
あまりに多い攻撃/防御の要素と、左右に散りばめられた沢山のインジケータからくる情報の渦に飲まれているなら、ただ凶悪なボス達に狩られるのみです。操作と各要素に慣れないとパターン構築すらままならない。私はこの辺で、「うわ、変なゲーム買ったかなぁ」なんて後悔し始めてました。
分かってきた頃に出てくる「わからない」何か
四面を安定してクリアできるころには、なんとなくゲームシステムも理解でき、良い/悪い行動も覚えはじめ、自機もそこそこ思った通りに動かせるようになってきます。この辺でじんわ~り「あ、このゲーム楽しいかも」なんて感じはじめました。
そのようにプレイが安定し、ゲームとしての楽しさが見いだせるようになったとき、まるで理解できないことが次々に起こり始めます。面の構成が変だったり、ボス戦で謎のギミックが始まったり、しまいにゃまったく意味不明なステージに飛ばされたりと、何の説明もなく不条理が押し寄せます。
しかし、今度の「わからない」は、今までの不愉快なそれと違い、むしろ探求心をくすぐられ、攻略の糸口を妄想させます。ここで送り込まれる情報の奔流は、ゲーマー心をくすぐられる「熱い」フレーバーであり、またスピード感のある演出なのです。
このように、演出の熱さとそれによる情報量は加速していき、結果遊べば遊ぶほど楽しくなるようなゲームとなっています。左側の各インジケータの全てが攻略するうえで重要な役割を担っていることを理解し、それらの表すリソースの運用を敵のパターンと照らし合わせ考える……そんなSTG的楽しさを見出すころには、あなたはこのゲームに魅了されていることでしょう。実際私は6面に挑戦するころにはすっかりゲームの虜となり、それから5時間くらい通してクリアまで遊び続けました。
良い点/悪い点の詳細と注意事項
良い点に関して
操作をマスターしたときの爽快感に関しては、総評や前項でも語りましたが、不親切だからこそ、操作やゲームシステムを理解し習得することそれ自体がそもそも楽しく、またマスターしたときの快感が非常に大きくなるということです。
表現力と演出に関しては……ネタバレになってしまうので詳しく書きませんが、特に心躍ったのは敵の動きや弾幕が音楽とシンクロする場面であったり、ボスの印象的な登場であったり、斬新な耐久弾幕等々……またラスボス戦はその戦い自体がストーリーを読み解くための鍵であり、それに付随する演出はこれまた鳥肌ものです。(もっとも私は東方上がりのシューターですから、音楽と弾幕の要素がシンクロするだけでうれしくなってしまいます。)
余談ですが、私はラスボス戦の盛り上がりが好きすぎて、初見時には山場にて「うぇほほほ、おわあーー」といった奇声まがいの笑い声をあげてしまいました。それくらい熱い。
悪い点に関して
操作とゲームシステムが複雑というのはいい点の一つ目と紙一重で、それを習得する楽しさのための必要な要素だと思っていますが、やはりこのような考え方をする人ばかりではありませんから、「ゲームはユーザーに対して遊びやすい配慮がされているべきだ」と考える方にはおすすめできないかもしれません。これが万人受けしない大きな理由でしょう。
ストーリーに関しては、個人的には情報量としてはこの程度でも問題ない、むしろ考察のし甲斐があるといったものですが、しかし文体が独特すぎて解読そのものに多くの時間を費やす必要がありました。これは個人的にマイナスポイントです。こういうのも嫌いじゃないけどね、ずっとこれだと…… また所々(というかたくさんの場面)が中二病的ですが、これにも少々胸やけを覚えました。
手引きと注意事項
もしhellsinker.を始めた方で、この記事にたどり着いた(あるいは逆の)方で、はじめに何をしたらいいかと悩んでいる方がいましたら、こちらの記事をおすすめします。非常に評判も良いらしく、私も何度も助けられました。このサイトでの情報量では物足りなくなったな~と感じたら、そこが、かの有名な「概要と手引き.html」と対峙するべきときです。
また、攻略情報に頼るのも良いのですが、このゲームは初見で驚かされる演出が多いためできるだけ情報は入れないことをお勧めします。特に写真付きのサイトなんかは驚きを半減させる恐れがあるため、到達した場面のみ利用したほうが良いでしょう。
そんなの知らねぇ!って方も、どうか八面だけは!八面のラスボス戦だけは画像を見ずに自力で最終形態までもっていってください!後生ですから!!
まとめ
というわけで今回は「hellsinker.」をレビューしました。個人的に好きな作品だったため大きなバイアスのかかった記事でしたが、まあ言いたいことが言えたので良しとします。
偉そうにこんな記事を書いておいて、私はSTGすら本格的に触り始めたのがここ1,2か月、hellsinker.については一週間程度のプレイのみですので、なにか間違った点などありましたら、先輩方、是非ご教授ください。
以上!
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