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映画『シャンハイ』感想

現在も全国のどこかで上映中であろう上海映画『無名』に続く、この時代の映画鑑賞。崖上のスパイ、ラスト、コーションに続いて3作品めとなる。

アメリカによる映画、シャンハイをDVDで見た。あ、今調べたら、U-NEXTでも見られるらしい…くやしい。わざわざTSUTAYAディスカスを会員登録して、借りたというのに。

U-NEXTの画面で

2011年公開、1941年の上海を舞台にした作品だ。
ワンスアポンアタイムイン上海でもシャンハイのマフィアが出ていたけど、こちらでも同じようにマフィアが暗躍していた当時を彷彿とさせるものだった。確実にいたのだ、有名な3人として調べると出てくる。

映画無名とも、ラスト、コーションでも崖上のスパイとも違ったアメリカ作品は、日中の対立を外から眺めているというものだ。ある時点までは。

※ここからネタバレ感想含みます。
物語は1人のアメリカ人が友人を殺されたということで上海に来るというところから始まる。
なんだか複雑な人間関係が最初からあって、夫と関係が冷え切っているという主人公はすでに夫人と不倫関係にあった。
新聞記者という顔でスパイ活動をしている。

映画のキャストは、皆どこかで見たことある顔ばかりで、主演のジョン・キューザックにコン・リー、海外映画にだいたい登場する渡辺謙(悪い日本人をどう演じるのか?と序盤から気になった。だいたいこの手の外国映画、日本人は悪役のようだ)チョウ・ユンファと見応えのある役者ばかり。
やっぱり、スパイ映画でありがちなのか、女性が美しく、コン・リーに惹きつけられた(山口百恵に若干似ているような気がした。物憂げな表情が魅力的なところとか)。

ジョン・キューザックが窮地でも落ち着き払っているところがどこか不自然に感じたけど、それはアメリカという中立した立場だったからなのか、それとも何なのか、もしかしたら、この映画がこれだけの豪華キャストなのに、売れなかったのはそこにあったのかもしれない。
無名もラスト、コーションも、崖上のスパイも最初から最後までハラハラしっぱなしだったけど、なんかどことなく、落ち着き払っているところがあって、どことなくこの東洋の地で当事者じゃない感じだった。
最後に上海は今も僕を惹きつける、という言葉もどこか他人事感があって、美しい情景の描き方は無名とかとは違って見事だったけど、どこか物足りなさも感じたのは事実だったかもしれない。

にしても菊地凛子がどこかハマり役で、アヘン中毒者だというのも彼女の痩せ方や表情がそれを上手く体現できていたというか、引き出せていて、どことなく彼女の美しさが皮肉だった。

おそらく、この映画のもったいないところは最後のセリフだろう。
欧米人は助かる
なんだかこの、都合の良さが安心して見ていられる感じにつながってしまい、最後にタナカとすれ違うシーンもどことなく、予告されているかのような安心があって、緊張感はあるのだが、これが映画としての力のなさに変わってしまう感があるのかも。

でも、アメリカから見た当時の上海というのは貴重で、これは絶対に作品にすべきものだった。多少期待を欠くものになるのは避けられないとしても、俳優陣は間違いなくよかった。
ジョンもコン・リーも、渡辺謙も。(あ、そういえば、チェンアル監督の2作品ともがワタベが出てくるが、関係ないか)

この映画を見ていて思ったのが、3カ国語以上出てくるときは特に日本語であっても、字幕がほしい。その点では無名よりもわかりやすくてよかった。無名では日本語がいきなり始まるし、日本語というのはたぶん、他の言語に続いて出てくると、あまりに発音が違うせいか、わかりにくすぎる。

あと、思ったのは…
おそらく、恋人なりで近しい関係にならない限りは、アメリカ人が中国人や日本人と親しくするような雰囲気ではないなと映画を見ていて勝手に思った。だからちょっとこの映画の設定は特殊なのだとは思う。

この映画もやはり見終わった後も謎が残ったが、無名や崖上のスパイのように見返したいかというと、また違うかもしれない。
ただ、予告は意外に良かった。
本編を見てから予告を見ると、ストーリーがなおわかって良いかもしれない。それは無名でもそうだった。

意外と予告では、これがミソという場面をあんなにも見せていたのだ。

また、別の形で、別の国からの当時の上海を映画化してほしい、と切に願う。

なかなかに良い映画だったと私は思う。ちょっと酷評しかけたけど、やっぱり豪華俳優があれだけ出ていて、良くないわけがない。

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