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Skebという蜜と知りすぎる罠

ご存知の方も多いだろうがSkebというサービスがある。イラストを描かれている人に価格とお題を出すことで細かいやり取りをすっぱ抜きイラストを描いてもらえるという近年話題のコミッションサービスだ。

「投げ銭付き有料お題箱」と運営側が端的にスタンスを表明している通り、DMやメールアドレスでの直接依頼のようにアレはこうするこれはこうするという面倒な打ち合わせをせず、こういう風なイラスト(最近ではテキストやボイスも可能になった)を描いて欲しいという依頼文を書いて相手が提示してくれている価格を投げる→承認されたら納品されるのを待つという2回のやりとりで済む手軽さがウリのサービスである。匿名でも依頼が出来るので名前を出すのが恥ずかしいという人にも使うことが出来る

昨年末私はとあるイラストレーターにイラストをskebで依頼した。成年向けのため詳細は言えないのだけれど、昨年のボーナスが思いの外入っており、そのイラストレーターが結構リーズナブルな価格帯で募集していたからだ。
依頼し(まず依頼文を作るのが難しい。内容を推敲するのに約1週間かかった)
約2.3日で承認され(え?こんなに早く?という気持ちもあった。)
約10日くらい経過した後1通のメールが届いた。

[Skeb] 作品が納品されました

!!!!!!
膝と手が震えた。基本的にSkebでは納期は2ヶ月で設定されており、ギリギリになるということもザラでは無い。進捗などもツイートするクリエイターではないからのんびり待つか……と承認された興奮も冷めやらぬ矢先の納品である。アニメの視聴もトイレに行こうかな…という気持ちも、全ての思考の優先順位が納品された作品を確認することに切り替わり確認しにいくとそこで再び膝が震えた。
このコミッションの旨味を知ってしまった。

3000円でガチャが10連無料
という使い古されカビが生えそうな文句を私は鼻で笑っていたが、価値観をひっくり返され「あのイラストレーターはSkebたしか15000円だっけ…15000円あれば描いてもらえるのか…」とか「これ買う金3回我慢すればあの人にSkeb頼めるよな…」などと頭の中が駆け巡り世の中の銭の基準が◯◯のSkeb〜〜円になってしまった。

水道トラブル5000円 トイレのトラブル8000円
パイプのトラブル5000円
Skebのイラスト〜〜円
安くて早くて安心……かもしれない。

そうこういったことを繰り返し1年が経った。
約1年半前にこちらの記事を見た時爆笑してた自分は果たして今の自分をも見て笑うだろうか。大体こちらを見ればskebのメリット、デメリットがどういう感じかわかるのだが、私もそれなり味わった旨味苦みについて書いていきたい

マネーイズパワー

パワーで勝つ、それでいいんでしょ?
あぁバーニングだ。

タイトルの通りである。
このキャラが好きなんだけど全然イラストが無い。そんな時に人間にできることは2通りである。
自分で描くか、人に描いてもらうか、である。自分のパッションで絵を描き続けることもできる人もいる(そんな人は尊敬に値する)ができない人もいる。いやむしろできない人の方が多いだろう。

金さえ出せば「この人の絵柄は好きなんだよなぁ。このキャラ(作品)も描いて欲しいなぁ」という感じに特定のキャラ(作品)Aばかり描くイラストレーターにBやCを描いてもらうことも出来るのである。当然の事実だが実際にイラストを描いてもらい受けた衝撃は計り知れない
(Skebで特定のシリーズしか描いてない人もいるが思い切ってクリエイターが知らないシリーズの作品を依頼しても承認してくれることもある。Twitterで「知らない作品でもいいですよ!」「版権はNG」と募集ツイートをしてる人もいる)

私が依頼しなくてはそのイラストはこの世に生まれなかったと考えるとイラストを依頼することもやぶさかではない。私はとある二人組のイラストを依頼したこともあったのだがそのイラストはあまり供給がされない組み合わせのためpixivで投稿され半年以上経った今もそのハッシュタグの検索1ページ以内に燦然と輝いている。

skebにはコンテンツでの公式のイラストレーター(例えばラブライブ !シリーズでもいることはいる。ラブライブ!のイラストは権利の問題上受けてくれないが)もいれば成年向け漫画家も結構な数登録している。値段は張るが金さえ出せばその漫画家が過去に発表したオリジナル作品の新規イラストを依頼することも出来るのだ。

アニメや漫画の版権キャラを描いてもらうのとは異なり創造主による新規絵なのだから、それはもはや聖書の新たな1ページが発見することに匹敵するだろう。創造主がこだわりが強く(もしくは権利などが絡み無理などの場合もあるか)リクエストを拒否したらそれまでなのだが。私は2人ほど成年向けマンガのキャラのイラストをこのキャラがめっちゃ好きなんです!というラブコールと共に依頼したら無事承認され納品された。聖書の新たな1ページを描いてもらえたのである。
この全能感。いや神は私ではなくイラストを描いた人なのだが……。

Skebはどこまで行ってもギャンブルである

1番忘れてはいけないことであり、これが1番でかい。たとえばおまかせ金額を10000円でskeb募集している人がいたとする。最低金額(クリエイターが設定できる依頼を受ける最低ラインの金額)が10000円からで設定されていなければ、8000円で依頼も可能だしそれで承認され10000円で依頼した作品と同程度のクオリティで納品されることもあるのだ。「え!?こんなにハイクオリティなのにこんな安くていいんですか!?」と驚愕したこともある。逆に表情違いなどの差分を見込んで奮発して価格15000円くらいドン!!!としても差分無しの1枚絵が納品されることもある。完全に匙加減はクリエイター次第なのだ。
やったことは無いが最低金額で依頼してこの価格に見合うレベルで良いのでこのキャラを描いてください!ということ人によっては出来るのだろう。承認されるかはともかく。

身も蓋も無いことを言えばクライアント側からすれば高いクオリティのイラストは欲しいが、安く済ませられるなら安く済ませたいハズなのだ。人間の財布事情は無限ではない。上記は10000円を例に挙げたが、skebの価格帯としてはこれでもかなり安い部類で、自分の好みの画風と合致したうえでクオリティを求めるなら15000〜25000くらいはザラに必要になる。

しかもおまかせ金額というもののやっかいなところ(クリエイターからしたら利点でもあるのだが)は価格を固定してるクリエイターでない限りは価格が納品数や他の人のリクエスト金額などの統計により上昇することも下がることもあることだ。株価にも似ている。

とあるクリエイターはある時23000円くらいで募集していた。その時私は持ち合わせが無かったので内容を考えつつ来月くらいに依頼しようとしたら価格が45000円に跳ね上がっていたことがあり目を疑った。おそらく値段を積んで依頼をしたクライアントがいたのだろう(その後日pixivに投稿されていた依頼品らしきイラストを見ると20枚近くの差分が含まれていた)
今そのクリエイターは依頼が無いのか新規の納品がされてなく38000円くらいまで値段が下がっている。ひょっとしたらあと1週間くらい待てばもう少し下がるかもしれない。だが明日には作品が納品され40000円↑にまた跳ね上がるかもしれないのだ。それどころか依頼を締め切る可能性もあり得る。まさにギャンブルである。

そして、規約上クオリティが確約されていない。Skebにもはっきり書いてあるのだがクオリティ厳守を希望するなら直接依頼するなりSKIMAなどのリテイクが出来るコミッションサイトを使うべきなのである。例えばこれまでに納品されているイラストがカラーであったからという理由で依頼してみたらモノクロで納品されたとしても文句は言えないのだ。逆もまた然りではある。
私は納品されたイラストが想像以上のものだったことはあれ、露骨にガッカリした、ということは今のところ無い。それに10000円以内ならそれなりに期待に添えたものが納品されなくてもダメージは少ない。
が、10000円の時点で安い金額ではない。ゲーム1.2本買えるしライブの現地チケットも買える。奮発して寿司や焼肉を食べることもできる。3000円でガチャ10連回してSR1枚で終わりの比ではない。

それで2〜30000円も出したイラストが期待外れだった時ははさすがに凹むだろう。

ごちゃごちゃ言わないで提示された金額を出せば良い?それはその通りだが、クリエイターがあと3000円出してくれてたら差分の1枚くらい描いたのになぁと思っていたら…と考えると奮発したくなるだろうし、おまかせ価格があがってるから何にも言わないけど実はもうちょっと安くても受けます!と思ってる場合もあるだろう。逆に金がないから引き受けるけどこんな価格じゃ割に合わない…と思ってる人もいるだろう。(なので私としてはやきもきする必要が無いので価格は固定にしておいて欲しいというのが正直なところである。価格をつりあげる分には一向に問題は無いのだから)

私はクライアント側でしかないためクリエイター側の考えは察すことしかできない。そもそもSkebの価格というものは、細かい打ち合わせ無し、リテイクも無し、納品されたものに文句を言わないというクリエイター優先のシステムを担保することで本来ならもっとかかるイラストを安く描いてくれているのだ。

その天秤は頼むこっちとしては分からないことだらけだが、もし期待以上のイラストが納品された時の高揚感は言葉にし難いものがある。そのジレンマを常に抱き私はリクエストを送っている。

知り過ぎる罠

さて1年も使用してみたが当然良い側面ばかりではなく、負の側面も見えてくる。ということを最初は書いていたのだが、深みに嵌ってしまったが故に気づいた負の側面にあてられている自分というものにギョっとした。最初は好きなキャラクターのイラストを好きなクリエイターさんに描いてほしいからSkebを依頼していたのではなかったのか?
愚痴をこぼしながら私は一体何のためにイラストを依頼しているのか…?という当初の正義感を忘れ暴走したダークヒーローのような気持になってしまった。自省の為に残しておきたい

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価格の問題はさておき、自分の中で納得しリクエストを送った。となれば当然承認してほしいのだが、私は基本的に半月以上放置されていたらこちらからキャンセルしてしまう。
それは単純に送ったは良いもののしばらくすると描いてほしい意欲が萎びてしまうからだ。
これを読んでいる中に実際に依頼を送ったことがある人がいるなら分かると思うのだがまず依頼文を書いているうちに「いやこのキャラにした方が良いか…?あとこの文を追加した方がいいか?」などと考えすぎて我に帰り、送る熱量が消えた経験は無いだろうか?
文章を描いているうちですらこれなのだから依頼を送った時はいわば脳はのぼせているに等しい。クールダウンしてしまったら取り下げてしまいたくなるのは当然のことではある。(中にはマルチポストという複数の依頼をクリエイターに送信し一番最初に承認されたもの以外は自動的にキャンセルされるというシステムもあるのだが、マルチポストかどうかクリエイター側は知る由が無い…はずである)

もちろんクリエイター側とて一日中メールチェック出来るなどとは思っていない。既に別のイラストを受けていて終わるまで承認出来ない仕事が忙しい。体調不良。単純にメールが観れる状況ではない。このキャラを描いたことがないので受けられるか思案中etcあるだろう。
だから冷静になってもしばらくは待つ。ただ10000円〜30000円が宙ぶらりんになっている状況で焦らされると他の人にも目移りしてしまう。

趣味絵を描いていてもいい。遊びに行ったっていいが募集しているならちゃんと確認してほしい。中にはこの依頼は価格が安すぎる!という人もいるだろうが最近では条件付きでの再送も出来るようになったとのことなのだから何かしらリアクションが欲しいのだ。こっちからはアクションをかけられないのだから。

承認されずに放置されているならまだマシな方で、クリエイターの中には依頼を承認した後納品期限が過ぎてキャンセルされることもある。そういう場合は後日返金されるから金銭的な面でのダメージでは無いのだがそれまでかかった時間は一体何だったのか…となる。私はすでに2桁数依頼したがそのうち納期超過によるキャンセルがあったのは2件だった。
これはクライアントのエゴなのだけれど意外とクリエイターのことを見ているものだ。規約の問題から納期や承認の件などSkebに関してクライアントはクリエイターに話しかけることが出来ないのだが。(だからラフなり顔の一部だけなりでも進捗をあげてくれるとこちらとしてはあ、忘れられてないんだなと確認が出来るので非常に助かる)

無論体調を崩したとか仕事が多忙になってしまい…とかやむを得ない事もあるだろう。事実上記のうちその2人とも「すいません。スケジュール管理をミスって間に合いませんでした。後日リクエスト再送しますのでその時はよろしくお願いします」といった旨をツイートしていたのでまぁ仕方ないなと思った。(その方は後日リクエスト再送依頼があり送った後約2週間後くらいに無事納品され、もう1人は目下作業中である)

クリエイターがとんでもなく安い値段で買い叩かれているという話題は定期的にのぼる。それは私もおかしいと思う。おそらくSkebもそういうことを憂いてクリエイターファーストのシステムを構築しているのだろう。
しかしクリエイターの方からこの価格で募集しています!と募集していて依頼を受けるなら雑に対応せずちゃんとして欲しいというのも当然だと思う。せっかくのイラストが良いと思って依頼したのにほったらかしにされてケチがつくのも不快だし、わざわざ高額金額を出してまで依頼してくれるような固定ファンになり得る人をみすみす逃すようなことになっても良いのだろうか?

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なんなのだこの怪物は。コミッションというシステムに慣れたが故の傲慢が出ている。ずいぶん毒気にあてられている。一晩文章を寝かせたのちギョッとした。

しかし実際クリエイターもクライアントも人間であるから思い違いや個人の性格に依るであろうすれ違いも起こり得ることは事実であり、それは常に胸に刻んでおきたいことではある

総括

この1年間そこそこの数のイラストを納品してもらったがやはり上に書いたように「自分が頼まなければこの世に生まれなかったであろうイラスト」を眺めていると無性にニヤついてくるものである。良い面悪い面あるがこちらのコミッションにはまだまだ世話になると思う。
本日より1月4日までに承認されるとクリエイターの手数料が無料になるため承認されやすくなる(かもしれない)キャンペーンが始まった。ボーナスも入ったそこのあなたもどうだろうか。もしこれから頼もうと考えている人にこちらの文章が一考の助けになれば幸いである。ご利用は決して毒気にあてられたりしない程度に…だが。


2023年1月5日追記

1年かけてジワジワと読んでいただけているようでまさかの私のこれまでのnote記事の中で最大の閲覧数を記録してしまいました。BIG感謝……。
お礼といっても何もできませんが去年の年末に送られてきた私の2022年のSkebレポートでも貼っておきますね…。これにプラスして直接依頼させていただいたイラストもあるので累計30万↑くらいになりますね……。笑ってやってください

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