R6司法試験 再現答案:民法
こんにちは。からかさです。
最近Xを見ていると全科目で自分のミスが浮き彫りになってきてあれやばいんじゃね?ってなってますが頑張って再現してます。
再現答案
5.5枚(4枚弱+1.5枚弱)
第1. 設問1(1) (以下民法について法名省略)
1. アについて
(1) AはCに対して、所有権に基づく返還請求として請求①を行っていると考えられる。同請求の要件は①Aの甲土地所有及び②Cの甲土地占有であるところ、同要件充足性は本件では明らかである。
(2) これに対して、Cは占有正権原の抗弁として反論アを主張していると考えられる。
BとCは賃貸借契約(601条)として甲土地を賃料月額5万円、賃貸期間30年間で契約①を締結し、CはBから契約①に基づき甲土地の引渡しを受けている。しかし、上記契約時点で甲土地の所有者はAであるから、契約①は他人物賃貸借(559条、561条)に該当する。そして、他人物賃貸借は物権的に無効であり、追認すれば遡って物権的に有効になるものと解される。しかしながら、Aは請求1を行なっており追認する様子は認められない。ゆえに契約①は物権的に無効であり、占有正権原にはならないと思われる。
(3) もっとも、Bが死亡し(882条)、Aが当事者たるBを相続(889条1号)している。判例は、無権代理について、本人が無権代理人を相続した場合でも、本人が追認(115)を拒絶することは何ら信義則に反せず許されるとしている。所有者と他人物賃貸人の関係もかかる本人及び無権代理人と類似の関係になるから、同様のことがいえ、他人物賃貸人を相続した所有者は追認を拒絶することが可能であると考えられる。
甲土地所有者Aは契約①の賃貸人たるBを相続したものである。したがって、Aは契約①の追認拒絶が可能である。
よって、Aが追認拒絶しているため、Cにおいて占有正権原の抗弁を主張できない。以上より、反論アに基づき請求1を拒むことはできない
2. イについて
(1)Cは、反論イをもって留置権の抗弁(295条1項)を主張しているものと思われる。
ア Aは「他人の物」たる甲土地を占有している。
イ Aの主張する損害賠償請求権は「物に関して生じた債権」といえるか。
留置権は留置的効力により債務の弁済を事実上促進する趣旨である。そこで、留置権成立時に債権者が引渡請求権を有しない場合には留置的効力が機能せず、物の引渡請求権を有する第三者に対して「その物に関して生じた債権」であるとはいえないと考える。
本件特約は、甲土地の使用収益が不可能になった場合について、損害賠償額を300万円とする旨を内容とするものである。そして、BのCに対する使用収益させる債務は、所有者であるAがCに返還請求を行なった時点で履行不能になっている。そのため、CのBに損害賠償請求権は同時点で発生したといえる。しかし。この時点において、Bは他人物賃貸人であり所有権に基づく引渡請求権はない。
もっとも、返還請求時点でAはBを相続しており、この時点でAが契約主体であると同時に所有権に基づく引渡請求権を有しているとも思える。しかし、前述の通り、Aは他人物賃貸人たる地位を相続しているものの、追認の拒絶が可能である一方で特約の存在等については相続により拘束されるのは妥当性を欠くというべきである。そこで、このようなAとの関係では、特約に拘束される契約者たる地位はAに帰属していないと考えるべきである。
よって、Aとの関係では「物に関して生じた債権」であるとは言えない。
ウ ゆえにCは反論イに基づいて請求1を拒むことができない。
第2. 設問1(2)
1. アについて
DはAに対して不当利得返還請求(703条)として請求2を行っていると思われる。
ADは乙建物について、賃料月額12万円、期間を2年間とする約定で賃貸借契約としての契約②を締結(601条)している。そして、DはAに対し令和4年9月分の賃料として12万円を支払っている。そうだとすると、かかる12万円についてAに「利得」があり、Dに「損失」があるといえ、両者の間に因果関係が認められる。
そして、令和4年9月初めからの大雨で、同月11日に乙建物の「一部」である丙室で雨漏りが発生し、同日以降30日まで丙室の「使用及び収益をすることができなくな」っている。かかる大雨による雨漏りは、D「の責めに帰することができない」事情であるといえる。そうだとすると、令和4年9月分の賃料は、丙室が使用収益できなくなった分の割合に応じて当然に減額(611条)される。したがって、減額分についてはDの上記支払いは「法律上の原因」がないものといえる。
よって請求2は認められる。
2. イについて
DはAに対し、608条1項に基づく必要費償還請求として請求3を行っていると思われる。
(1)「必要費」とは、目的物の使用収益において不可欠となる維持等のための費用をいうところ、607条の2に反する修繕により支出した費用は「必要費」に含まれるといえるか。
同条項の趣旨は、修繕の時期や方法などについては、第一次的には管理処分権を有する賃貸人の意思を尊重する点にある。そこで、同条に反する修繕により支出した費用は「必要費」には含まれないと考える。
本件では、丙室の雨漏りをDが修繕しているところ、かかる修繕は乙建物の使用収益において必要不可欠なものである。しかし、DはAに対し「修繕が必要である旨を通知」せず、令和4年9月13日に本件工事をEに依頼している。その上、Aは請求3がなされて初めて雨漏りが発生した事実及びDがEに本件工事を依頼した事実を知ったものである。そうだとすると、607の2条1項を充足していない。また、本件工事の実施において急迫の事情は認められないから、同条2号も不充足である
したがって、本件工事のために支払った30万円は「必要費」には当たらない。
(2)Dは、Aに対し、不当利得返還請求を行うことが考えられる。
608条は賃貸借契約における196条の特則であり、その196条は不動産の占有の場合における703条の特則である。そのため608条と703条で整合性を図る必要がある。そこで、608条で認められない必要費の不当利得返還請求については、賃借人が現に利益を得ている限度で不当利得返還請求を認めるべきである。
DはEに対して本件工事の報酬として30万円を支払っている一方で、適正な報酬額は20万円である。そうだとすると、20万円についてAに「利得」がある一方で、30万円につきDに「損失」が生じたといえる。また、両者の間には因果関係が認められる。そして、かかる20万円については「法律上の原因」はないといえる。
よって20万円の限度で請求3が認められる。
第3. 設問2
Iは、Fに対し、所有権に基づく返還請求としての請求4を行っていると考えられる。その要件は①Iの丁土地所有及び②Fの丁土地占有であるところ、本件では②は明らかである。
(1)以下、①について検討する。
ア GはHに対し、令和5年12月6日に離婚に伴う財産分与(768条)として契約③を締結している。これにより丁土地所有権がHに移転し、その後契約③に基づく登記も具備されている。さらに、HI間で令和6年1月10日に売買契約(555条)として契約④が締結されている。
イ Fは、令和6年1月15日にGが契約③を錯誤取消し(95条1項1号)した旨反論することが想定される。
(ア) そもそも、財産分与:婚姻中に形成された財産の清算という側面がある。そうだとすると、財産分与に伴う課税対象が誰であるかは、法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるといえる(判例に同旨)。
Gは、契約③により課税されるのは贈与者Gであるにもかかわらず、受贈者Hであると認識していた。そうだとすると、Gには「法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤」があるといえ、またかかる錯誤は「重要なもの」といえる。
(イ) Gは、課税対象がHであるとの錯誤に基づいて、Hに対し気遣う発言をしている。これに対し、Hは「大丈夫…」と了承する旨発言している。かかるやりとりを踏まえると、契約③において課税対象がHであることにつき、法律行為の基礎とされていることが表示されている(95条2項)といえる。
(ウ) しかし、Iは「第三者」(95条4項)にあたり、錯誤取消しを退行できないのではないか。
同条項の「第三者」とは、取消し前に当該法律行為を基礎として新たに独立の法律関係を有するに至った者をいう。そして、IはFによる取消しに先立つ令和6年1月10日に契約④を締結しているから、「第三者」にあたる。
このようなIは、契約③にかかる課税についてGが誤解していたことを契約④の締結時に知らず、かつそのことについて過失はなかった。そうだとすると、Iは「善意でかつ過失がない第三者」にあたる。
したがって、Iに対してはGの錯誤取消しは対抗することができない(95条4項)。
(2) Fは、対抗要件の抗弁を主張することが考えられる。
Fは「第三者」として登記がないIの所有権取得の主張に対して上記抗弁を主張できるか?
「第三者」とは、登記の欠缺を主張する正当な利益のある者をいうところ、不法占有者はこれに当たらないと考える。
占有の性質は占有開始時に定まるところ、Fは当初Gに無断で丁土地を占有しているから、不法占有にあたる。そうだとすると、Iとの関係ではFは不法占有者であり「第三者」には当たらない。したがって抗弁は認められない。
(3) よって請求4は認められる。
感想
設問1(1)
留置権については、直前に短答のわからない選択肢の復習で道垣内民法を読み返していた部分が出てラッキーでしたが、構成はぐちゃぐちゃです。牽連性を否定した構成に自信はありません…
設問1(2)
請求3は608と703の関係性と703でどこまで請求を認めるべきかという問題で迷いすぎて、右往左往しました(そもそもこの問題意識が合っているかすら怪しい)。
設問2
設問1に時間かけすぎました…なんだよ50点って。こちらも短答で離婚に伴う財産分与が錯誤取消しの対象になるという判例があることは知っていました。しかし、その問題の所在を十分に示すことはできず、かつ対抗問題についても不法行為で始まった占有はその性質が変わらないというとんでも理論を展開して強引にまとめるという始末…。
IはGから順次承継で丁土地の所有権を取得し、すでにHが登記を具備している本件ではFは対抗要件の抗弁を主張する余地はないよな、と整理していたのに何故か答案に書くまでもないと判断しての愚行です。本当になんなんだ??
予備試験でダントツで成績が悪かったのが民法なので、思ったよりは沈んでいないことを願っています。
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