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U Tunes Track 06:エイリアン・ビッグ・キャット

思えばTrack 01のスコットランドからスタートして渡り歩いたので、一周して今度は、ヨーロッパはイギリスへ戻ってみる。Track 06となると、レコードやカセットで言えばB面に入った感覚。仕切り直しつつ、懲りずにMy Wayで行ってみよう。

エイリアン・ビッグ・キャット

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イギリスに現れる未確認動物、通称ABC。エイリアン・ビッグ・キャットはヒョウかピューマなどの、やや大型なネコ科動物に似た外見を持ち、家畜を襲うなど獰猛な気性の生物とされている。目撃談によれば、一般的なイエネコと比べて脚が長く、全体的にがっしりした体格だという。イギリスでは、近代以降これらの特徴に該当する野生動物の生息は確認されていない。

Tom Misch

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写真:Wikipedia

エイリアン・ビッグ・キャットの不気味さ、緊張感漂う雰囲気に相対するのは、サウスロンドンが生んだ天才シンガーソングライターのTom Misheと同郷の個性派ジャズドラマーYussef Dayesによるコラボ作より、Lift Off (feat. Rocco Palladino) をピックアップ。

Tom Mischはジャズ、ソウル、ヒップホップ等様々な音楽を融合した洒脱なサウンドと高いギタープレイでブレイクし、日本でも星野源との共作で話題となったのも記憶に新しい。

一方、Yussef DayesはUKジャズシーンを引っ張る個性派ドラマー。同郷でありながら音楽的背景が異なる二人による実験的で、型にはまらない予測不能なケミストリーが堪能できる今作。空気が張り詰めた緊張感、ディープな雰囲気を感じてほしい。


ロンドン温故知新(音楽編)~London Calling~

ロックの聖地とググると、ロンドンという言葉が多く出てくる。アメリカで生まれた音楽であるのに、ブリティッシュロックは世界中に多大な影響を与え、人々の印象に深く残っているのだろう。

かく言う筆者も、断然UKロック派である。学生時代を過ごした90年代はマッシュルームヘアに、ドクターマーチンと細身の服を着て、UKロックを聴き漁る毎日。叙情的でメランコリックな世界観が、内向的な自分の性格に合っていたのかもしれない。また、当時のロンドンの空気感、若者の衝動を描き、当時のUK音楽が情景を表す映画「トレインスポッティング」に魅了されたことを思い出す。そういえば、放映された渋谷スペイン坂のシネマライズは数年前に閉館したらしい。残念。

それはさておき、ポップカルチャーとアンダーグラウンドが交じり合い、独自の音楽文化を形成するイギリス。特にロンドンの音楽シーンについて、時代背景を含め年代ごとにざっくりと振り返ってみたい。

1950年代

戦勝国でありながら国力低下による失業率が高まり労働者階級の生活を圧迫する中、米軍が駐留するリバプールではアメリカのロックンロール、リズムアンドブルースが米軍放送で流れ、現地の人々に影響を与え始めていた。(のちに登場するビートルズはリバプール出身)

下記は英国ロックの祖、ロニー・ドネガンによるアメリカのフォークソングをアレンジ。イギリス・アメリカで大ヒットしたらしい。後半はテンポも上がりノリノリ。いいっすねぇ。


1960年代

景気回復が進み、若者が自由や解放を求め始める中、スウィンギング・ロンドンと呼ばれる、ファッション、音楽、アート、映画のストリートカルチャーが世界中の憧れとなり、イングランドのワールドカップ優勝がそれを更に勢いづかせた。この時代、アメリカのロック、ブルース、フォークに影響を受けたロックバンドが多く誕生し、20世紀の音楽シーンに多大な影響を与えた。

【The Beatles / The Rolling Stones / The Who / Cream / The Yardbirds / The Kinks / Small Faces】


1970年代

70年代には、エキゾチックで浮遊感のあるサイケデリックロック、複雑な拍子や構成を持つプログレッシブロック、キャッチ―で煌びやかなグラムロックなどの発展形が生まれるものの長続きはせず、景気減速、社会の腐敗、人種差別が横行する中、若者は怒り・失望・孤独をパンクロックにぶつけるようになる。

【Led Zeppelin / Pink Floyd / Queen / King Crimson / Deep Purple / David Bowie / Sex Pistols / The Clash / The Jam】


1980年代

ニューウェイブと呼ばれるエレクトロニックミュージックとロックが融合した音楽が台頭。MTV登場を機に特徴的なメイクやファッションのビジュアル効果で爆発的なムーブメントとなり、第二次ブリティッシュ・インヴェンションと呼ばれた。(第一次は60年代のブリティッシュロック)
その後、社会、政治、体制を批判するロックバンドが表れ始める。
【Depeche Mode / Duran Duran / The Smiths / The Police / 
New Order / The Cure / XTC / The Style Council】


1990年代

80年代後半からクラブシーンに端を発するレイブ(大規模なパーティイベント)やドラッグの流行と共にダンスミュージックが発展し、ロックとの融合はマッドチェスターと称された。一方、ニルヴァーナを筆頭にアメリカのグランジロックが世界を席巻するもブームが去ると、明るくキャッチ―なブリットポップが社会現象となる。
【The Stone Roses / Happy Mondays/Primal Scream / Oasis / Blur / Radiohead / The Verve / Kula Shaker / The Chemical Brothers】


2000年代

ミレニアムを境に、音楽スタイルは更に進化、他ジャンルとの融合を深めていく。ガレージロックのリバイバル、イーストロンドンで生まれたグライム(UKクラブ音楽+ラップ+レゲエの音楽ジャンル)、シンガーソングライターの注目などが挙げられる。
【Coldplay / Arctic Monkeys / Muse / Franz Ferdinand / Adele / Amy Winehouse / Dizzee Rascal / Skepta】


2010年代

2000年以降ポップカルチャーの中心はアメリカだが、Dua Lipaを筆頭としたダンスポップ、今一番クールな街サウスロンドンのインディシーン(ソウル・ジャズ・ロックが融合)に端を発したムーブメントが起こりつつある。
【Dua Lipa / Ella Mai / Sam Smith / Ed Sheeran / Disclosure / One Direction / Tom Misch / Cosmo Pyke / Oscar Jerome】

最後に

ブレグジット後で迎える20年代。社会の分断が起こる中で、これまでの歴史のように、若者を中心とした新しい価値観や多様性がエネルギーとなり、ロンドンから新たなカルチャーが生まれるのかもしれない。


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