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平成ウルトラの大傑作!!世界は美しい。ウルトラマンマックス「第三番惑星の奇跡」感想

どーも。ばぁどです。
たまには特撮の作品に対して感想とかつらつら書こうかなと思い、筆者が大好きな1話が現在1ヶ月限定で無料配信をしているので筆をとった(キーボードを打っている)次第です。

Stay At Home With ULTRAMAN

 円谷プロダクションは、世界中の皆様が、強い気持ちをもって明るい未来を信じ、一緒にこの困難を乗り越えられるよう「Stay At Home With ULTRAMAN」の名のもとに、2020年5月3日(日)から、無料でお楽しみいただける毎週更新の在宅支援プログラム「#ウルトラ空想科学時間」をスタート。
いま伝えたいメッセージと共に、厳選したエピソード10作品をお送りします。(ウルトラマン基金共同企画)
「ウルトラ空想科学」の世界で、楽しい時間、ほっとする時間、心が動く時間をぜひお過ごしください!

とてもありがたい限りでございます。
本日5月17日(日)配信の話は筆者が大好きな1話である、
ウルトラマンマックスの第15話「第三番惑星の奇跡」です。

(1ヶ月過ぎたので現在は非公開です。)

https://www.youtube.com/watch?v=mnQGAWKSoTU 

ウルトラマンマックスとは?

ウルトラマンマックスは2005年に製作・放映されたウルトラシリーズの一作品です。
2004年に製作され、新機軸、斬新さが目立ったウルトラマンネクサスから方向を一新し本作品ウルトラマンマックスは原点回帰に努めました。
昭和時代に活躍したレッドキング、バルタン星人、ゼットン、エレキング、メトロン星人など歴代の人気怪獣が再登場を果たし、ウルトラシリーズが持つ怪獣というキャラクターコンテンツの強さを認識できる、そんな一作でした。

筆者は当時中学2年生だったのですが、毎朝土曜日7:30に起き夢中で見ていたのを思い出します。総集編でしか見たことがなかった昭和の人気怪獣が、平成に生まれたウルトラマンと戦うシーンに胸躍りました。当時からウルトラマンを拗らせていた筆者にとっては、新しい怪獣より昭和の怪獣が登場する回の方が嬉しかったんですよね。

そんなウルトラマンマックスには数多くのクリエイターが参加しています。
約9ヶ月(3クール)の作品にもかかわらず監督11名、脚本18名の方が本作に参加されております。(Wikipedia参照)

そして数あるユニークな話の中でも、筆者が傑作だと評しているのが第15話「第三番惑星の奇跡」です。
この「第三番惑星の奇跡」の監督を担当したのは三池 崇史監督。
「着信アリ」や「クローズZERO」シリーズなどを手掛けた監督さんです。
三池崇史監督はもう一本ウルトラマンマックスで話を担当されているのですが、そちらはそちらで面白いです(よく、本作との温度差で風邪を引くと言われています)

 「第三番惑星の奇跡」の大まかなあらすじ

盲目の少女アコのフルートの演奏会が明日に迫っている。
地球防衛隊DASHの一員であるミズキ隊員はアコの発表会に行くのを心待ちにしている。

その発表会の会場付近に、正体不明の物質が宇宙から落下する。
DASHのカイト隊員(ウルトラマンマックス) と同僚のミズキ隊員は現場に急行。
正体不明の物質は、まるでマシュマロのような外観をしている。
正体不明のマシュマロのような物体の調査にあたるが、地球防衛隊DASHは危険がないことを確認の上焼却処分に移行する。

焼却処分を行うためにDASHの戦闘機がミサイルを発射するが、マシュマロのような物体はミサイルの能力を取り込み、ミサイルを発射するものに変貌した。正体不明の物体は自身が受けた攻撃を、そのまま吸収し、同様の攻撃を相手に与える物体だった。やがて正体不明の物体は醜い怪獣「イフ」の姿となり破壊活動を始める。

破壊活動を止めるために、ウルトラマンマックスが登場。しかし怪獣イフはウルトラマンマックスの能力ですら吸収し反撃を仕掛けてくる。ウルトラマンマックスの奮闘虚しく、盲目の少女アコの夢と共に発表会場である公会堂は大破する。

イフの猛攻は止まらず、街は破壊され夜空すらも照らすほどの火の海と化す。

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地球防衛隊DASHの隊長が呟く。
「太陽系第三番惑星地球。滅びるにはまだ惜しいものたちが住む星だ」

果たして、このイフを止めるものは誰なのか?

 考察・感想

まずはストーリー面から。
話の作り込みがとても良い。とても濃密で重厚な30分の番組内容ではないと感じました。また、30分番組ならではのテンポだったということもあり作品の完成度が際立っていると考えます。
物語冒頭で地球防衛隊DASHのミズキ隊員の語り口で語られる少女アコちゃんの物語は重めの話であり、それに続き序盤で描かれるウルトラマンの敗北(作戦的な退避)も絶望に拍車をかけています。
その分、最後の結末がとても美しすぎる。

役者さんの演技もピカイチです。
個人的に助演女優賞は間違いなく少女のアコちゃんですね。ストーリーの流れ的には主演でも良いかもしれない。
この話におけるウルトラマンは完全に脇役。
絵も音楽もできなくなったことを嘆いたりとか、燃え盛る街を徘徊する演技、終盤で怪獣に語りかけるシーンなどとても驚かされるような描写が多々あります。

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また、同じようにミズキ隊員を演じた長谷部瞳さんの演技もすごい。
序盤で銃を怪獣イフに向けて威嚇する際に「当てなきゃわかんないの?」と怪獣を挑発するシーンや、アコちゃんを探しに燃え盛る街を駆け回るシーン、全てにおいて見所となっていると思います。

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次に特撮描写。
まずは公会堂のミニチュア。
ストーリー内で鍵となるミニチュアが大きく作られることはありますが、今回の話での公会堂はストーリー内でのシンボルとなっていると考えます。
ストーリー中盤で炎上する街を徘徊する怪獣イフの描写もまた見どころ。
CG中心で描かれることが多くなった近年の特撮シーンですが、やはり本作でのミニチュア描写の本気度を感じます。

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最後にこの話が抱えていると思われるテーマについて。
究極完全態イフの能力は武力抗争を比喩していると考えます。
「火で焼こうとしたら火を吹くものに、ミサイルで攻撃したらそれを発射するものになったのでは?」
劇中のセリフにもありましたが、武力で戦おうとしたら武力で相手も対抗してくるという基本的な仕組みを、怪獣の能力を用いたわかりやすい比喩だなと感じました。

ウルトラ作品で武力抗争に対する疑問が投げかけられるのは初めてではありません。
昭和ウルトラシリーズの「ウルトラセブン」第27話「超兵器R1号」でも同じように武力に対する疑問が投げかけられています。
超兵器R1号で描かれているのは度重なる地球侵略者に対する対抗策として、惑星すら破壊する惑星破壊兵器を開発し惑星実験を行います。実験対象には生物が生存する可能性がゼロのギエロン星を標的として兵器実験を行います。
しかしギエロン星には生物が存在し、地球へとギエロン星獣が報復しに来ます。
最終的にはウルトラセブンにより、ギエロン星獣は倒されるのですが超兵器R1号という惑星すら破壊する兵器の開発を止めるべきだったと苦悩する異星人であるウルトラセブンの葛藤と、最後にウルトラセブンことモロボシダンが吐くセリフである「血を吐きながら続ける悲しいマラソン」というセリフは今でも胸に残ります。

このように昭和の時代からウルトラシリーズでは武力抗争に対する警鐘を鳴らしてきています。

今回の「第三番惑星の奇跡」で描かれている結末では武力では解決できない相手に対して、武力意外による解決方法がとられました。
世界中の人間が共感できるものは、スポーツ、美術、音楽などそういったものが世界平和に繋がるのではということを伝えようとしているのではないかと考える。

終盤に筆者が注目した印象的なカットがあります。
これは少女アコを救うためにミズキ隊員が怪獣に銃口を向けるシーンがあるのですが、該当シーンは銃口とアコの顔の二つで構成されています。

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「武力」と「武力以外の争いを解決するもの」の対比だと考えます。
その後のミズキ隊員は、この武力に武力で対抗しようとしていた自分に気づく一瞬のシーンもまた良いし、ミズキ隊員の表情も綺麗すぎるし、ふっと上を見上げた時のウルトラマンマックスの登場の仕方も美しすぎる。ずるい。

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この話、中盤は悲惨すぎる絶望を描いているにもかかわらず、結末はとても綺麗です。
この綺麗さはご都合主義的な面も感じますが、優しさも併せ持つウルトラマンの世界だからこそ成せる表現だったのかなと思います。

 1ヶ月限定公開です

STAY AT HOME の応援ということで、2020年5月17日(日)からの一ヶ月限定公開です。
ぜひ、この平成ウルトラシリーズの傑作の一本を見てみてください。

(1ヶ月過ぎたので現在は非公開です。)

https://www.youtube.com/watch?v=mnQGAWKSoTU


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