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9言語ラジオ学習日記 (第6週): 会話のモッヂボール(誤)

"This is a pen." という文を習って、こんな文どういうシチュエーションで使うんじゃいとツッコミを入れる。
もはやこれは語学をやるうえでの通過儀礼みたいなものである。

誰もがそう思うんだ。どうして最初に習う文が実用性のカケラもないやつなのかって。でも今はとりあえずスルーしておくんだ。みんなそうやって大人になってきたんだ。

……というわけで、初心者向けの例文というのは教える側にとっての頭痛の種である。

ある程度学習が進んでいけば新聞記事や児童文学なんかを教材にできるが、初級の教材はそうもいかない。
その単元で教えたい文法表現や単語を盛り込みつつ、きちんと成立する文章に仕上げる。この両立が難しいのだ。

しかしながら、ストーリーを重視しすぎて学習に使えない文章になったら本末転倒なわけで、どうしても学習内容が優先されることになる。
そういう事情で、語学のテキスト上では時折「そうはならんやろ」という展開の会話が繰り広げられる。

Sophie: Tu aimes écouter de la musique ? (君は音楽を聴くのが好きなの?)
Ken: Oui, j'aime écouter de la musique. (うん、僕は音楽を聴くのが好きだよ。)
Sophie: Tu aimes regarder la télé ? (君はテレビを見るが好きなの?)
Ken: Non, je n'aime pas regarder la télé. (いや、僕はテレビを見るのが好きではないんだ。)
Sophie: Tu aimes voyager ? (君は旅行するのが好きなの?)
Ken: Oui, j'aime beaucoup voyager. (うん、僕は旅行するのがとても好きなんだ。)

NHKテキスト『まいにちフランス語講座』 2022年5月号 (p10)

質問を投げかけておきながらその話題を 1ミリも広げずに次の話に移るソフィー。
ケンも律儀に答えていて、なんというか、生真面目な人柄がにじんでいる。

翌日の対話文でも質問を続けるソフィーは、ハチャメチャっぷりがエスカレートしていた。

Sophie: Tu aimes le sport ? (君はスポーツが好きなの?)
Ken: Oui, j'aime le football. (うん、僕はサッカーが好きなんだ。)
Sophie: Tu aimes la viande ? (君は肉が好きなの?)
ken: Oui, mais je préfère le poisson. (うん、でも僕は魚のほうが好きなんだ)
Sophie: Tu aimes les chats ? (君は猫が好きなの?)
Ken: Non, je n'aime pas les chats. Je préfère les chiens. (いや、僕は猫が好きではないんだ。僕は犬の方が好きなんだ)

NHKテキスト『まいにちフランス語講座』 2022年5月号 (p14)

スポーツの話から肉の話に飛ぶアクロバティックさ。すごいぞソフィー。

"会話文" と呼んでいいのかすら躊躇するほど破綻した会話だったが、こうした例文のおかげで「〜するのが好き」という表現や、非定文での「あまり〜ない」という表現、「〜の方が好き」という表現を学ぶことができた。語学の教材としてはこれでいいのである。
ともあれ、例文を担当された方には本当にご苦労さまでしたと言わざるを得ない。

不思議な会話は、今週のポルトガル語にもあった。

娘: Quando é o aniversário de vovó? (おばあちゃんの誕生日はいつ?)
母: É no próximo sábado, dia 14. (来週の土曜日、14日よ。)
娘: E quando é o aniversário de vovô? (じゃあ、おじいちゃんの誕生日はいつ?)
母: É un dia antes. (その1日前。)
娘:Uau! Bem na sexta-feira, 13? Isso é sorte ou azar? (うわあ!ちょうど13日の金曜日じゃない?ついてるのか、ついてないのか、どっちかな?)

NHKテキスト『ポルトガル語講座 入門/ステップアップ』 2022年度 4- 3月号 (p30-31)

13日の金曜日が誕生日の人がいたときに使える便利なフレーズ。ぜひ丸暗記して、とっさのときに言えるようにしておきたい。


第6週のポイント!

表現あれこれ

  • 初対面のときの「あなたと知り合えてうれしいです」という中国語の定型句に认识你, 我很高兴。」 というものがある (第25課)。认识 は「認識」の簡体字。こういうふうな表現をするんだなあ。

単語あれこれ

  • イタリア語で nonno 「祖父」 という意味になる。女性向けファッション誌のイメージからは対極すぎてウケる。
    なお、"あの" 雑誌の名前の由来はアイヌ語だったりする。

「愛のあるファッショナブル・マガジン」のキャッチフレーズを持つ「ノンノ」の意味については、初代編集長の茅野力造が、「non-no (ノンノ) は、アイヌ語で、"花" ということばです。北海道の原野に咲く野生の花をイメージして名づけました。素朴な愛らしさ、永遠に変ることの無い美しさ……私たちはノンノをそうした雑誌にしたいし、愛読者であるあなたに、花のように愛されたいと願っております」と語っている。

助川 敦子「文化女子大学図書館所蔵 服飾関連雑誌 解題・目録 (2005-09)」(pp108-110)

音写あれこれ

  • 固有名詞を外国語で書くのは案外難しい。
    アラビア語の榮谷先生いわく「小野さんも大野さんも宇野さんも(中略) おんなじ綴りになってしまいます」ということで、どれも أونو と書くんだそうだ。
    フィッシュ竹中さんがアラビア語をしゃべったら「宇野イナフ」的な発音になるんだろうか (意味がわからない人は『ギャグ漫画日和』をチェックだ)。


第6週の聞きどころ!

中国語: フーテンのプリンス

セイラ: 今週は自己紹介ができるようになるのが目標ですね、先生。
小金井: はい。ここではあえて「〜 は … です」というシンプルな表現を使って自己紹介をしていきます。
梁源:「え〜、私は生まれも育ちも葛飾柴又です」…。
セイラ: …す、すごい(笑)。

まいにち中国語『言いたいことから中国語』 第21課 ('0:40 ごろ)

どこでそんなフレーズ覚えてくるんだ……(笑)。


冒頭でポルトガル語の例文を挙げたが、その際の講座では曜日の表現を習った。これがなかなかおもしろかった。
土曜日・日曜日以外は (あえて直訳すると)「第2曜日」「第3曜日」……という言い方をするらしいのだ。

英語で曜日をどう言うかを思い出してみると、Sunday や Monday のような「太陽」「月」の語に由来するものや、 Tuesday・Wednesday のような神話の神様の名前に関連したものになっている。
他のヨーロッパの言語でも、曜日を表す単語はこれと同じような成り立ちになっているものが多い。ポルトガル語はきわめて例外なのだ。

ポルトガル語にあるような曜日を番号で呼ぶ発想は、なんと中国語と共通している。中国語でも曜日を言うときに数字を使うことは、第3週めに習った (第14課)。

たまたまだけど、おもしろい一致だ

まぁこれは偶然の一致というだけで、別に関連性はない。
そんなわけで、番号の振り方が微妙にズレてる。

ちなみにポルトガル語の segunda や terça は序数詞に由来する単語、つまり英語で言うところの second や third だ。
ちなみに、テキストにはこんな説明があった:

feira は「市、定期市、縁日」などの意味を持つ言葉で、曜日の表現の由来は諸説あり、〜 feira 「〜番目の市」と言う意味からきているとも言われています。

NHKテキスト『ポルトガル語講座 入門/ステップアップ』 2022年度 4- 3月号 (p32)

この feira という単語の元になったのはラテン語の feria (「祝日」「祭日」) という言葉で、英語経由で "フェア" というカタカナ語にもなっている。
"フェアプレー" のフェアじゃなくて、"バーゲンフェア" の方のフェアね。

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