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映画「100日間生きたワニ」感想 あまりにも不憫な作品だった。

※ネタバレあります

一年前くらいにこの映画の原作である100日後に死ぬワニのレビューだかなんだかわかんない感じの記事を上げた。その最後に「映画の公開楽しみだな~~」とかほざかせてもらったが遂にその時が来た。200%コケることがわかっているだろうに公開せざるを得なかったのだろう。公開前から爆死するのが目に見えている作品はごまんとあるが、その中でも一際目立つ爆弾だったと思う。

公開100日前から映画の公式Twitterアカウントがカウントダウンをしていたが、あれは原作の「100日後に死ぬ」という要素を完全再現していたのではないかと思う。

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そもそもなんで映画化にGOサインだしたんや?

100万回言われていることだとは思うが、ここまで致命的に映画化に向いていない作品も無いと思う。あれはTwitterという媒体で、毎日死に向かっていくワニを見るのが面白かった漫画だ。「どうやって死んじゃうんだろう」とか「もしかしてワニの友人の中に犯人が・・・?」とかTwitterで予想するのが楽しかった作品だ。毎回最後に「死まであと〇〇日」と出ていたのもいい味出していた。実質宇宙戦艦ヤマトだ。

・・・それを一時間の映像作品にしてもなんの面白みも無いのはわかりきっているだろう。映像化するなら毎日数分のアニメをYou Tubeで公開するとか朝の情報番組の枠を数分使わせてもらうとかが良かったんじゃないか。

前提条件からしてめちゃんこ厳しい企画だったのに、更にまずかったのが原作が度々炎上していたことだ。兎にも角にも原作100日目が更新された瞬間にコラボショップ、コラボカフェ、コラボ動画に映画化決定・・・などなど。まるでワニの死を喜ぶようなマーケティングが展開されたことが本っっっっっっ当に良くなかった。いやあんなん誰でも気分悪くなるよ。嬉しそうに追悼!!ってやるの流石に悪趣味だよ。俺はワニが死んでそれなりに悲しかったから結構気分悪かった。

あと書籍版が出たときも描き下ろし漫画28p収録とうたっておきながら実際は8pくらいしか追加の4コマ無かったとかでプチ炎上した。

そんなこんなで絶体絶命、背水の陣にまで追い込まれていたこの映画だがなんとか公開することができた。途中で脚本をほぼ書き換えるとかいろいろあってそれなりに難産だったみたいだ。

・・・まあ、公開する劇場はそこそこおさえられているみたいだったが公開初日から一番小せえスクリーンだったし、俺が行った回もガラガラだった。10人くらいだったかなあ・・・ものの見事に興行的には爆発四散した。南無阿弥陀仏。

映画の内容はそこまで悪くない。が・・・

映画も公開前から架空の酷評書き込まれるわ、席の予約で遊ばれるわで散々だった。観てもないのにドヤ顔で酷評するのは俺が一番キライな行為だ。映画館に迷惑かけんのもちょっとオタクくんさあ・・・って感じだ。

前置き長くなりすぎた。すんません。本題の感想としては100ワニを1時間の映画にするならまあこれがベストだったんじゃないかなといった感じだ。さっきも述べた通り、そもそも致命的に映画化に向いてない題材なのだ。つまらなくなるのはもう必然と言ってもいい。そんななかよくやったほうだとは思う。

開幕、いきなり原作の100日目のワニが死んでしまうシーンから始まる。そこから「100日前」とテロップが入って原作を再現するパートに入る。

正直いきなりワニが死ぬシーンから始めるのはなんだかよくわからなかった。まあオチは周知の事実だろうからいきなりそこから始めて、回想といった形で展開していくって方式にしたんかな?・・・なんで?

まあ内容としては原作をほぼそのまま再現している感じだ。ゆるい日常が展開するだけ。まあその、あんまり面白くは・・・ないかな。別に原作を変に改変しているわけもなし。原作の雰囲気はばっちりだ。だからこそその・・・退屈だったという話ではあるのだが。

あと原作から付け足されたシーンもあるのだがこれは普通に良かったと思う。ワニがセンパイと一緒に映画を観に行くシーンが追加されているのだが、普通に初々しい感じのワニとセンパイのやり取りは普通にみててほっこりした。続編を観に行く約束をするっていうちょっぴり悲しくなるシーンもあるし。これも原作っぽい雰囲気出てたね。

それとこれも結構言われている話ではあるのだが、「間」のとり方がかなり上手い。多くを語らないが登場人物の心情とかが伝わる空気感になっている。・・・ゆるいアニメ絵だから退屈に感じたりもどかしくなったりはするけど。普通の実写映画だったらかなりいい味出してたと思う。

あとこれはどうでもいいのだが上裸にマフラーとかいう漢ファッションのワニがしきりに寒いよーというのはあれなんなん?だれか突っ込めよ。

それと基本的に動物が擬人化している世界なのに馬は普通に4本足の動物として出てくるシーンがある。この世界でも馬は家畜なんやね。うまだっち。

俺はそんなに新キャラのカエル嫌いじゃない

そうしてまた冒頭のワニが死ぬシーンがながれて前半の原作パートは終わる。じゃあ後半はなにすんねんという話なのだがワニが死んでから100日後までとんでその後の話になる。がっつり後日談をするのだ。

ワニが死んでしまいなんとなく疎遠になってしまったワニの友人達がカエルという新キャラが引っ越して来たことによってまた関わるようになっていく・・・といったストーリーが展開される。

このカエルが結構賛否両論・・・というか基本的に不評なのだ。それはわかる。かなりウザい。ほぼ初対面のネズミに対して「俺らタメっしょww?タメ口でいいwww?」とか言ってたり。いやまあカエルとねずみは同じバイクという趣味があるんだけどいきなりそれは馴れ馴れしすぎへんか。

ワニの恋人だったセンパイのところでカエルがバイトすることになるのだが、そのときもバイトのヘビちゃんにすげえグイグイアプローチしてうざがられたりとかすんげえヘイトを買う立ち位置になっている。オタクが一番キライなタイプの人間だ。俺も知人に似たような人がいるからすげえわかる。本気でウザい。劇中でネズミも「なんなんだよアイツ・・・」って毒づいてるし。

その後バイト先のヘビちゃんに告白するも振られてしまい、とぼとぼねずみの職場のバイクの整備工場ところにやってくる。調子が悪いバイクを預けていたのだが、ねずみ曰く「どこも調子悪いところなんかねえよ」とのことだ。でもまあピッカピカには磨いてくれている。カエルがいたく感動しているが「いや仕事だし・・・」っていうねずみツンデレか?

そしたらいきなりカエルがワンワン泣き始めるのだ。振られた事がそんなにショックだったのかと思いねずみも慌ててフォローしようとするがその事ではないらしい。なんでもカエルは少し前に親友を亡くしてしまい、あまりにも辛かったので心機一転するためにここに越して来たらしい。バイクの調子が悪いと言っていたのもまあ・・・そういう事なんかなあ。

ここでカエルが感極まってしまった理由はあまり語れない。前述の通りあまりにも人との距離感をわきまえない感じでちょっと疎外感を感じたせいなのか・・・それともキレイにしてもらったバイクを観て親友を思い出したのか・・・ここらへんの「間」の使い方とあんまり語らない感じは凄くいい。

そこでネズミはカエルをツーリングに誘う。今までさんざんカエルの誘いを断ってきてはいたがまあこんな姿見せられちゃね。行き先がネズミがかつてワニを連れてきた夕日がキレイに見えるスポットなのも俺はなんか良いと感じたなあ。そこでネズミがワニがやってたギャグをカエルにやって元気づけるのだが、そこではネズミが感極まって泣いてしまう。・・・ようやくワニが亡くなってしまった実感がどっと押し寄せてしまったんかな。

その後、ねずみが友人達に「久々に集まりません?」とラインをする。そこで「もうひとり呼んでいい?」とカエルも連れてくる。

最後はワニはいなくなってしまったけど、カエルというニューフェイスを加えてぼちぼち元気にやっていきますよって感じで終わる。

人によっては「ワニの代わりにこんなウゼえ奴おくんか?気分悪いわ。」ってなるかもしれないけど、俺は別にそんな悪意が込められたとは到底思えなかった。ワニが亡くなってしまったのは確かに悲しい。でもそれでもねずみ達の人生は続いていくし、何時までも引きずっていられない。確かにカエルはちょっとうぜえ奴だけど憎めないラインではギリギリあるし、みんなと同じ悲しみを抱えている。カエルが距離のつめかたを間違えたのも親友を亡くしたショックでちょっとメンタルやられていたのかもしれない。カエルは決して単なるワニの代わりでは無く、新しい友人なのだ。

まあ見れば分かるがカエルは本当にウザい。拒否反応を起こす人が大勢いるのもわかる。でも「ワニなんかいなかったことにして新キャラのカエルをあてがえばええやんwww」って配置されたキャラってのはいくらなんでも受け取り方に悪意ありすぎると思う。

「100日後に死ぬワニ」の映像化作品としては完璧に近い

さっきも述べたが原作のゆるい雰囲気はばっちり再現できている。オリジナルのシーンも俺的には結構良かった。センパイがワニと観にいこうとしてた映画の続編を他の友人に誘われるもそれを断って一人で観に行くシーンとかそれなりにグっときた。

オリジナルの後日談も全然ありだとは思う。タイトルが「100日間生きたワニ」変わったのも、前半のワニは死ぬまでの100日間をこう生きたよとか、死んでしまってからも友人達は100日間、実感が持てなかったが、カエルという少し強引な野郎のせい・・・おかげでワニの死をゆっくりと受け入れ始めることができた・・・っていう事なんかなあ。

しかし、俺が原作で好きだったのはゆるい雰囲気の日常ものという中身ではなく、Twitterでのライブ感なのだ。完全に中身というよりも企画が面白い漫画だったと思う。ゆるい日常漫画の下に「死まであと〇〇日」と表示されるあのいい意味での場違い感。ワニが絶対に体験することはないだろう出来事を楽しみにするブラックジョーク感。あれが好きだった。

その俺が100ワニで一番好きだった要素が一時間の映画で楽しめる訳が無いのだ。それはもう見る前から明らかだった。それに平坦な日常が大部分を占めているこの作品を映像化しても・・・ってのもある。

が、本当にこの作品は頑張っていると思う。映画化に一番向いてないまであるジャンルの漫画を1時間の映像作品にするにあたって本当に頭を捻って作られたと思う。それでいてあんまり原作のゆるい雰囲気はなるべく壊さないようにしつつ、カエルというちょっとした刺激物も混ぜ込んでそこまで退屈しないように・・・と。

いやホント、不憫な作品だったと思う。アホみたいに炎上したりしなければこんなに悪意をもって受け止められる映画にはならなかったと思う。炎上騒ぎが無くても商業的にはコケてたかもしれないけど。「そういや去年くらいに流行ってたあの漫画の映画、そこそこだったよ」くらいの受け止め方で終わっていただろうに。ほんまに不憫や。

結局、一番悪いのは最初の連載終了後の宣伝をミスったところだと思う。あれさえなければほんとに・・・こんな事にはならずにすんだだろうに。

正直映画館で金払ってみるのはオススメはできないが、将来アマプラとかで来たときに見るくらいの価値はあると・・・とは思う。そこそこ褒めてはきたがやっぱり退屈な時間が長かったのは間違いないので。

・・・映画が終わって外にでたとき、隣のスクリーンから大音量で「閃光」が聞こえてきたときはこれ見るくらいならもっかい閃光のハサウェイ見りゃよかったなって気分にはさせられた。


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