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23-24 厳冬期 BC SKI ビバーク装備

更新します。前回は21-22シーズンに公開していました。基本的にはあまり変わりませんが、調理方法の改善によりストーブセットが軽量化できたことがトピックスです。私の山行自体は比較的緩いので、場合によってアイゼンやピッケル、ビーコンなどの装備を省くこともありますが、今回はフルセットで組んでいます。それでもベースウェイトは6kgを切っているのでほめてほしいですね。練り上げた信頼できる装備ですので迷いなく雪山に向かえます。

※山と道さんの雪山特集に掲載された記事と合わせてご覧ください。

注、私の装備は上信越県境エリア、標高2000メートル未満を想定しています。アルプス系や東北、北海道エリアには対応していません。それでも最低気温マイナス20度程度までを想定しています。

前提
厳冬期は荷物が増えて重くなると思い込みがちですが、雨の降らない厳冬期だからこそ、そぎ落とせる装備や感覚があります。
例えば、
雨は降らないのでテントやバックパックに防水性は不要
そもそもハードシェルを着ているので雨具は不要
汗はあまりかかないので着替えや寝間着は不要
水は雪を溶かせば良いので行動中に余分に持たなくても良い
浄水器も不要
雪上でペグの類は不要
無雪期のハイキングとは違い、持っていく基本アイテムの数はむしろ減らすことが可能です。もちろんスキー関連のギアや安全上必要な特殊なギアは増えますが。それでもベースウェイト自体は春秋の基準である4.5kgにプラス1.5kg程度で収まります。

以下、Soyon姉さんばりにバックの中身をご紹介
Red five diamonds my bag

①バックパック
1泊のビバークならCRUXのAX30を使用しています。30リットルに厳冬期の宿泊装備が全て入り、2食分+αの食糧が余裕で入ります。スキーで滑走するため、小さなアルパインザックにみっちり詰め込んだほうが背負い心地は安定し、より軽く感じます。仮に泊数が増えたとしても、基本装備は変わらず、食糧が増えるだけですので、バックパックを泊数に応じて大きくするだけで対応可能です。

②シェルター
定番のツェルト2枚使い。春の雪山では雨も降りますが、1月~2月なら防水性のないツェルトの特性が活かせます。インナーがあることにより外気温と約10℃近い温度差を意図的に作り出すことが可能です。その分寝袋と防寒着は軽量化できます。設営はスキー2本を柱にし、2セクションのスキーポールを分割して4隅を固定します。サイドリフターはピッケルやシャベルを使って引っ張ります。ツェルトは雪上での設営のほうが簡単です。インナー側のツェルトは結露で凍るので朝には取り外しできるように工夫しています。残された外側のツェルトは乾いているので、朝の着替えや食事の際はストレスがありません。所詮ツェルトなので2枚合わせても僅か600gです。凍り付いた結露が溶けて濡れるので念のためスタッフサックは持ちます。

③寝具
手持ちの寝袋で一番温かいものを選びます。冬季に寝袋を軽量化するのは愚かな行為です。行動中に着ているベースレイヤーが高性能なため、そのままパジャマ代わりにしています。寝袋に入れば防寒着も要りませんが、テント内での作業や食事の時は上半身が寒いので、行動中に使う化繊の防寒着を着用します。ダウンパンツやブーティーの類は持ちません。保温性は寝袋に全振りします。結果それが一番軽量化に繋がります。万が一足先が冷える場合はスキーブーツからインナーを取り出し、ブーティーの替わりにします。結露から寝袋を守る為、プリマロフトアクティブを使ったOMMのシェラフインナーを改造し、キルトタイプのシェラフカバーとして使います。顔まで覆っても呼気が抜けるので、結露だけでなく寝袋をあらゆる濡れから守ってくれます(※この手法だと2泊目も寝袋が乾いた状態となり、完全ではありませんが今まで難しいと考えていた厳冬期の連泊に対応できそうです)。
マットについてはより軽量な商品もありますが、パンクした場合でも最低限の保温性が保てるプロライトを選択しています。過去にダウンマットを愛用していましたが、やはり山行中にパンクさせています。リッジレストなどのウレタン系マットは小さなアルパインザックには入らないので雪山では使いません。私の場合、雪上でも断熱性はR値4程度あれば充分なので、R値3.9のマットを使っています。空気を沢山含んだ新雪の上でのビバークする場合、意外と下からの冷気は感じにくい為、過度な保温力をマットに求めなくても問題ありません。その代わり全身用サイズを選びます。

④防寒着
近年は化繊素材の進化が目覚ましく、ダウンやメリノウールの衣類を着用しなくなりました。寝間着は行動着と兼用し、プリマロフトアクティブやアルファダイレクトのベースレイヤーをそのまま使います。就寝用のソックスも同様の素材の物を使います。防寒着も同じく行動中に使える化繊綿のインサレーションをテント内でも兼用します。昨年まではモンベルのサーマラップパーカを愛用していましたが、より保温力のあるアークテリクスのニュークレイフーディーに変更しました。サーマラップパーカは化繊綿が薄いシート状でしたが、ニュークレイフーディーはより天然ダウンに近い膨らみのある素材の為、高いロフトが生み出せます。フードがあるのでニットキャップは持ちません。

⑤調理器具
昨年まではプリムスの高効率ガスストーブを愛用していましたが、SNSで話題になった調理方法を導入したため、よりミニマムなセットで厳冬期に対応させることが可能になりました。200ml以下のお湯を沸かすだけなので、鍋は550mlサイズ、ストーブは簡易な中華製ガスバーナーです(長期山行の場合はジェットボイルに切り替えます)。燃料のガスもその都度必要な分だけ充填して使います。主食はサトウのご飯とコンビニ惣菜。パックパックが小さい為、軽量化よりもむしろサイズダウンの恩恵が大きくなります。500mlの保温水筒の中に常にお湯を入れて持ち歩きます。

⑥小物類
厳冬期のテント泊での必需品、それはピーボトルです。絶対に忘れてはいけません。最初は慣れが必要ですが、作法を身に付ければこれほどマストなアイテムはありません。寝る前と朝で計2回は使うので1.5リットルのナルゲン・フォールティングカンティーンを愛用しています。

⑦スキー関連ギア
アイゼン、ピッケル、シャベル、スキークランポン、ビーコン、プローブ等、必要なものは一応持ちますが、私がうろつくようなエリアでは殆ど使いません。なので極力軽いものを選択しています。

以上でベースウェイトが6キロ以下。多少ずるをしてビーコンやモバイルバッテリーはウェア内に収め、ベースウェイトには含めていません。そもそも歩く時と滑る時でバックパックの中身や身に着けるものがガラリと変わる為、明確なベースウェイトは存在しませんが、一応歩く時を基準に算出しています。

ウェア類
レイヤリングは3層構造です。保温性の高いベースレイヤー、ハイクアップ時はウィンドシェルのみとし、稜線に出た時と滑走時にしかハードシェルは着用しません。停滞時は化繊ダウンを着用します。ジャケットの上から着用できるように保温着は1サイズ大きなものを選択しています。グローブも3層構造とし、薄いメリノグローブ、メインの皮グローブ、風が強く寒い時のみ薄いオーバーミトンを着用します。それでも寒い時は貼るタイプのカイロを手首に付けてからVBL化します。ビニール手袋は常にジャケットのポケットに入っています。厳冬期はヘルメットとゴーグルは最初から着用します。どんなに吹雪いても電熱ゴーグルがあれば冷静さを保てます。

スキー用具
スキーは雪質と降雪量によって選択が変わります。板がより太くなればブーツも滑走重視のタイプに変更します。全てのスキーのトップを改造し、ツェルト設営に対応させています。今回選択したのは最も汎用性が高く、バランスの良いセットです。来年はブーツを新調したいですね。

未来の話
冒頭で寝袋の軽量化は愚かと発言しましたが、ツェルト2重化による恩恵もあり、実は寝袋を1ランク軽量化することが出来ると考えています。実行する場合、単純な軽量化ではなく、ダウンから化繊への移行を検討中です。目星を付けているマイナス6℃対応の化繊キルトなら重量的にダウン製品との差が少なく、更に濡れに強い為、冬季の連泊においてはダウン製品よりも可能性を感じています。先ずは残雪期から徐々にテストしていく予定です。


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