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又兵衛は、以前に鏡作りの工場にいたのだそうだが、そこから独り立ちをして、今は自分の腕一…
盆を手に、火を小さくして隅々まで掃除された鉄砲鍛冶の現場を通り、棟梁・一貫斎の作業場へ…
国友一貫斎藤兵衛は、当代随一の鉄砲職人だ。 その名は近江のみならず、全国にとどろく。…
【月に届く鏡】 「佐平治様。お仕事終わりに大変申し訳ございませんが、お客様にお茶をお持ち…
八日後の朝、ニレの待つ山村は、あの日藤内の様子を見に行った時よりも拓けていた。四半世紀…
試射の二日後、「今宵、江戸から客人が来るんだが一緒に話を聞いてくれないか」と藤兵衛が云…
食事が終わり、囲炉裏の周りには私と藤兵衛二人になった。 「江戸では、得ることが多かったようだな、一貫斎」 藤兵衛は越後の本間平八から一貫斎の名を継いでいた。湯呑から酒を飲みながらうなずいた。 「今まで通り、藤兵衛と呼んでくれ。村に帰って真っ先に思ったのは、各家から槌音が当たり前に聞こえるということだ。帰参の途中に、そこの日吉様の中の伊都伎島様にもご挨拶をしてきた。なぜか境内の内堀を見た時に、故郷へ戻って来たと実感したがなあ」 国友一貫斎の家から北へすぐ。札の辻を
【星斗をつかむ】 文政五(一八二二)年の年が明けると、筆まめな藤兵衛は江戸からの帰郷を…
この傷が原因で藤内は床に臥せるようになり、三年後の寛政一〇(一七九九)年五月に亡くなっ…
大きな音で扉が叩かれたので、作業場の視線がそこに集まった。 藤内様が出発して数日。ち…
こうして、羆(ひぐま)用の鉄砲づくりが始まった。 翌日の晩、その日の作業が終わったの…