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中世のレザーポーチ作り ~その1~

中世前期、ヴァイキング時代と呼ばれる9-11世紀のポーチを作ります。

どんなものだったのか、こちら👇の記事にまとめてあります。

革の裁断

中世前期、ヴァイキング時代の革ポーチを作ります。
まずは目的の形に革を切り出します。
革によって仕上がりの印象は変わります。
ウルフバート トーキョーでポーチなどに使用するのは牛の本革です。

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(一枚の大きな革から切り出します)

ピット槽というタンニン剤の入ったいくつもの槽にゆっくり時間をかけて漬けてゆく、伝統的な製法で鞣 (なめ) された国産の高品質なサドルレザーを使います。
高価ですが芯が詰まっていてコシがあり、使い込むほどに風合いが出てきます。


染色

表面を革の世界では吟面といいます。
オイルアップして好みの色に染めます。
もともと芯通しの茶色ですが、色がウブいので染料を二種類使って深みを出します。

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(左がそのままの状態、右がオイルを入れて染めた状態)

断面の処理

切り出した革の、断面のヘリを落とします。
垂直だった断面の角を工具で斜めにし、最終的に丸みを持たせていきます。

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(ヘリを落とすことで90°だった革の断面が丸みを帯びます)

断面を磨いていきます。
私の場合、水を塗布して、磨いて、それを研磨し、ロウを含んだ仕上げ材を塗布して、また磨き、さらに研磨して、また仕上げ材を塗布して、また磨き、滑らかになるまで繰り返します。

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(切りっぱなしの断面と処理された断面)

ハンドメイド作品でヘリを切りっぱなしにしている革製品をよく見ます。
ワイルドに見えますが、断面の処理をしているかしていないかで、製品の耐久性も変わりますし、見栄えやさわり心地がかなり変わってきます。

全ての断面を処理します。
地味で面倒な作業ですが、作品の良し悪しを決める大事な作業なので時間をかけます。

高価で品質のよいレザークラフト作品で、断面が切りっぱなしというのは見たことがありません。

裏面の処理

荒れた裏面のことを革の世界で「トコ面」と呼びます。
トコをキレイに仕上げます。

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左から、
なにもしてない荒れた状態。
ロウの入ったトコ仕上げ材を塗布して、磨いた状態。
それを研磨した状態。

一番右の状態から再び仕上げ材を塗布して磨きます。
トコ面がツルすべになるまで繰返します。


縫製

縫い目となる部分に溝を切っていきます。

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溝を切ることによって、縫った後糸が溝に沈んで糸の対擦性が向上します。

この溝を目印に、縫い穴を開けていきます。
ファブリックではないので、普通の縫い針は通りません。
開けた穴に糸を通して縫製してきます。

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(菱目打ちで等間隔に縫い目を開けていきます)

等間隔にキリなどで開けても良いですが、菱目打ちという道具で菱形の穴を開けると縫い目がキレイに揃います。

革用の縫い針に、ロウを染み込ませた糸を通して縫っていきます。

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(ひとつの縫い穴に対して表と裏から二本の針を通して縫っていく)

機械縫いと違い、手縫いは二本の針を使って、一つの穴の中を二本の針と糸が交差するように縫っていきます。
大量生産の工業製品は革縫い用の機械で縫製されます。

裏表両側から糸を通していく手縫いと違って、機械縫いは片側からしか糸を通さないため、縫目こそ手縫いと同じ様に見えますが、糸が切れた場合ほつれていきます。


立体化

後ろ板~フラップになるパーツに装飾をつけ、縫い合わせた前板+マチを乗せてみました。

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さっきまで全て平面だったものが立体的になり、完成形が見えてきました!

しかし、まだ半分も終わってません。
このあと後ろと前を縫い合わせ、ベルトループ~フラップ止めを作って縫い付け、装飾を全て取り付け、最後の仕上げをします。

この作品ぐらいの大きさで、最後の仕上げに費やす時間は全体の1/3ぐらい。
全体の断面を磨きに磨きます。


中世のレザーポーチ作り ~その2~ に続きます👇

良い革作品をつくるポイントは

とにかく丁寧に、正確に!
断面の処理、裏面の処理は時間をかけて徹底的に。

縫い穴開けも、まっすぐキレイに等間隔に。
縫目は作品のパット見の印象に大きく影響します。
縫目が左右に暴れてるだけで素人臭い印象になってしまいます。

パーツの取り付けなど面倒臭がって目分量でやらず、きっちり定規で計測したほうが良いです。
真っ直ぐ、もしくは真ん中に見えていた場所が微妙にずれていて、完成したら傾いてたとか、左右どっちかに寄っていたとか、良くある失敗です。

ちゃんと作るにはそれなりの根気と、時間が居るものです。


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