データをビジネス価値に変えるとは?【データ利活用の道具箱#5】
前回の記事では、「データドリブン経営とは何か?」についてご紹介しました。要するに、データを活用して日々の業務における意思決定を効果的に行うことで、企業の競争優位性を高めることができるという内容でした。
本記事では、データ利活用に興味のある方、取り組んでいるものの成果が出ず悩んでいる方など、課題を抱える方に向けて、データ利活用の推進について考えるヒントをお届けします。
ところで、皆さんが勤める企業には、どれほどのデータが管理されているでしょうか?もし、そのデータが意思決定に活用されきれずにいるとすれば、それは「宝の持ち腐れ」かもしれません。
この記事では、そんなデータをビジネス的に価値あるものに変え、意思決定の精度を高めるステップを事例を交えて紹介します。
文字や数字の羅列に意味を持たせる
例えば、小売店のデータを管理するシステムは、POSシステム、在庫管理システム、顧客管理システムなど多岐にわたります。これらのシステムから収集した「データ」は、特定の商品の販売数や在庫量などが該当しますが、保存されたままの状態では、単なる数字や文字列などの集まりでしかありません。
そこで、人間が読んで理解できるように「データ」に意味や文脈をつけます。
ただし、まだこの段階では、「誰がいつ購入した」という事実しか読み取れないため、意思決定に活用できる状態ではありません。データから何かしらの洞察を得られることが重要になります。
データから洞察を得る
皆さんは、スーパーなどのレジ前に陳列された商品を、買うつもりもなかったのについ手に取った経験はありませんか?
このようについで買いをさせる商品を、店側がどのように選定するのか考えてみましょう。
レジ前陳列には、レジ待ちの間に衝動的な購買を促進するという目的があります。 ここに陳列される商品には、チョコレートやガムなどの気軽に手に取りやすい商品や、売れ筋商品や季節・イベントに合わせた商品、セット商品などがあります。
例えば、売れ筋商品と一緒に購入されやすい商品をレジ前に陳列してセット販売したいとします。
小売店にあるPOSシステムを使うと、商品ごとの販売実績から、人気商品と不人気商品を把握し、人気商品と同時に購入されている商品も特定することができます。 よく使われる分析手法の「ABC分析」と「アソシエーション分析」を使って、実際に売れ筋商品や、同時に購入されやすい商品を特定してみましょう。
・ABC分析
ABC分析を用いることで、人気商品と不人気商品を特定することができます。 まず、総売上の高い人気の商品順に並べA・B・Cとランク付します。
その際に売上の棒グラフと、売上の構成比の累計を表す折線グラフを組み合わせたパレート図を用いると、上位の「Aランク」は、人気商品、中位の「Bランク」は、中間、下位の「Cランク」は不人気商品と特定することができます。
・アソシエーション分析
アソシエーション分析は、商品やサービスの関連性や顧客の購買パターンを把握するときに使います。 要は、同時に購入されやすい商品の確率を割り出すことで、人気の売れ筋商品と一緒に購入される商品を特定することに役立ちます。
同時購入されやすい商品が特定できれば、人気商品の組み合わせをセット販売し陳列することで 売上向上につながります。
さらに、これらの情報に顧客データ(年代・性別)を組み合わせることで、より価値のある洞察を引き出すことができます。
ここまで、データに意味を持たせ、そこから洞察を得られるまでの一連の流れを見てきましたが、実はこれではまだ、意思決定には不十分です。なぜなら、具体的なアクションへ繋がる示唆を与えるにはあと一歩足りないからです。
洞察からアクションへ繋げる
データから価値を生み出すには、これまでに分析した結果を、ビジネス価値につながる具体的なアクションへ活かすことが重要です
商品P001を購入するボリュームゾーンが20代女性だと分かり、その商品P001とセットでよく売れるのは商品P005だということが分かれば、次は具体的な陳列を考えるステップです。
例えば、20代女性向けに好まれるセット商品を通常の商品棚と合わせてレジ前にも陳列し、POPなどで店内訴求を強化することで売上の向上を狙えるかもしれません。他にも、様々なプロモーションが考えられるでしょう。
是非、考えてみてください。
意思決定の精度を高め価値を創造するとは?
意思決定の精度を高め、データから価値を生み出すためには、信頼性の高いデータを収集しそれらを適切に活用することが不可欠です。データから洞察を引き出し、それを基にした意思決定が、組織やプロジェクトの成果を向上させる一助となります。
今後データを使った意思決定をされる際には、こちらの記事を思い出し、是非実践に活かしていただければと思います。
おわりに
この「データ利活用の道具箱」では、データ利活用を推進する際や、データをもっと活用したいと奮闘している皆さんに役立つ情報をnoteで発信しています。ぜひ他の記事もご覧ください!
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※参考 DIKWモデルとは?
DIKWモデル(Data-Information-Knowledge-Wisdom Model)とは、データを価値に変換するために、情報、知識、そして知恵へと進化させる様子を概念化したモデルです。DIKWモデルを理解すると、この記事の内容がより理解しやすくなると思います。