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「とりあえずBI化」からでも大丈夫。自社のデータ利活用をさらに進める次なるステップ【データ利活用の道具箱#11】

データ利活用を推進する多くの企業が最初に取り組むことの一つに、BI(ビジネスインテリジェンス)ツールを使ったダッシュボード化があります。

これは、Excelで作成・運用しているレポートをBIツールに置き換えるものです(本記事ではこれを「BI化」と呼びます)。これが、業務効率化や迅速な意思決定を支援する重要な一歩であることは事実です。

しかし、Excelで作成されていたレポートの見た目をそのまま移植したり、表をグラフ化したりしただけに留まり、活動が停滞してしまう企業が少なくありません。

実際、多くの企業のデータ利活用をご支援している当社には、以下のような相談が寄せられます。

「特定業務部門の経営層向けレポートをBI化したが、その先どうすれば良いかわからない。」

加えて、業務部門に要望を聞いても何も出てこないという切実な状況も見受けられます。

本記事では、このような事態に陥ってしまう原因を深掘りし、現在進行形でBI化を進めている企業が次に打つべき一手を紹介します 。


BI化の次のステップが見つけられない理由

解決方法を紹介する前に、BI化を進める現場で起きている問題や、その原因を深掘りしてみましょう。

「とりあえずBI化」を進めた企業では、以下のような問題を抱えて立ち止まりがちです。

  • 業務部門に要望をヒアリングしても他にやりたいことが出てこず、具体的な次の方針を見出せない

  • 一部門でのBI化の成功を全社に展開したり、BI化した部門のデータ活用をさらに高度化したりしたいが、やり方がわからない

  •  BI化の成功事例を広めるため、他部署にBI化の活動への協力をお願いしても、忙しさを理由に断られてしまう

こうした問題が起きる最大の理由は、”自社のデータ利活用が進むべき方向性が曖昧である”ことです。この曖昧さにより、業務部門の理解を得たり、プロジェクトの推進計画を明確に定義したりすることが困難になります。

重要なのはゴール設定だが、実際には難しい

問題の原因を取り除いて活動を停滞させないために、本来やるべきことは、BI化の前にゴールを設定することです。まずゴール設定から始めることで、BI化の先を見据えながら活動を長期的に継続できます。

特に、”組織全体で得られる成果を明確にしたゴールを設定する”ことで、組織が一丸となってデータ活用に取り組むための指針を持つことができます。

ここでいうゴールとは、現状も把握しつつ、自社のデータ利活用の目的や方向性を関係者全員が理解できるように言語化した「コンセプト」と、それを実現するまでの「ロードマップ」のことです。

ゴール設定によってできること

ゴールを設定することで、具体的に次の3つのことができるようになります。

  • 方向性が明確になる:ゴールを定めることで、データ活用の方向性が明確になります。これにより、各自がやるべきことも定めやすくなります。

  • 協力体制が強化される:関係者とゴールを共有することで、経営層から業務部門まで組織全体が共通の目標に向かって協力できるようになり、効率的に活動を進めることができます。

  • 持続的な活動がビジネス変革につながる:長期的なビジネス変革を見据えたゴール設定を行うことで、短期的な成果だけでなく、業務効率化を超えた大きな成果を可能にします。

ゴール設定を妨げる現実的な課題

しかし、現実的にはゴールの設定が難しい場合も多いです。例えば、組織全体のビジョンが明確でない場合や、業務部門のニーズを拾うことが難しい場合があります。

また、すでに活動を始めている場合には、いまさら「ゴール設定から始めましょう」と言われても受け入れ難いかもしれません。

そこで、ゴールの設定方法の詳細はまた別の機会に紹介するとして、今回はすでにデータ利活用の活動を進めており、いまさらゴール設定に立ち戻ることが難しい企業が、次にやるべきことを紹介します。

とりあえずBI化を始めた企業が次に打つべき一手

「とりあえずBI化」の次にやるべきことは、既存の成果を活かしてデータ利活用のレベルを高めることです。

組織のデータ利活用のレベルは、深さ(データの精度・活用方法の高度さ)と広さ(データ活用/連携の範囲)の2軸で考えるとわかりやすいです。

データ利活用のレベルを高めることは、この深さと広さの二軸で右上を目指すことに相当します。

ただし、広くする活動と深くする活動は異なるため、実際には斜めに一気に進むのではなく、深さか広さのいずれかを一歩ずつ上げていくことが効果的です。

次のステップの方向性を決める

「とりあえずBI化」をした次にどちらに進むのが良いかを考えてみましょう。

まず、BI化をした現状は、一部の部署において現状が可視化されている状態と言えるでしょう。

そこから一段階深くする場合と広くする場合に目指す次のステップは、それぞれ以下のような状態です。

  • 深くした状態:BI化した部署で、可視化された現状をさらに詳細に分析できるようになり、問題の所在や原因を特定できる

  • 広くした状態:他部署に成功事例が広がり、BI化が実現した部署が増えている

そして、多くの場合、次のステップとしておすすめなのは前者の「深くする」ことです。

なぜなら、一部の部署だけとはいえBI化が済んでいることで、以下がすでに実現できているからです。

  • 対象部門の業務内容やデータの理解が進んでいる

  • 目に見える成果を提供していることで、対象部門との関係性が構築されている

  • ダッシュボードやデータソースなど、次の段階のベースとなる成果物ができている

また、新たにBI化の対象部門を見つけるのは簡単ではなく、データや業務の理解にも時間がかかることから、まずは最初に仕掛かった部署での成果を増やしていくことが望ましいです。

では、データ利活用の深さを上げる(データの活用方法を高度化する)ために具体的にすべきことは何でしょうか?

自社のデータ利活用を高度化させる施策

施策を考える際は、“組織・人材”、”仕組み”、”手段・技術”の3つの観点で洗い出すのが良いです。以下に、具体的に紹介します。

なお、“組織・人材”、”仕組み”、”手段・技術”の内容は以下の通りです。
・ 組織・人材:社員のスキルや組織構造、体制
・ 仕組み:データの利用や管理に関わるプロセスやルール
・手段・技術:データの収集、加工、分析/可視化や管理をするための環境や技術

まず、一段階深くした状態を、この観点で具体化してみます。

  • 組織・人材:BIを活用した探索的なデータ分析や統計分析をサポートする体制が整っている、または、対象部門にこれらのスキルを持った人材が存在する

  • 仕組み:ダッシュボードで現状の問題を把握してから、原因に対する仮説を立て、分析をするまでの標準プロセスが存在する

  • 手段・技術:重要な指標を様々な切り口で探索的に分析できるダッシュボードが導入されている

この状態と現状を比較し、各観点でのギャップを埋めることで、前に進むことができます。

例えば、以下のような施策が考えられます。

  • 組織・人材:対象部門のデータ分析を支援する担当者を配置する・対象部門にBIを活用したデータ分析の教育を実施する

  • 仕組み:BIを活用してデータ分析を行い、問題の所在や原因を特定する標準プロセスを導入する

  • 手段・技術:指標を分析する際に重要な切り口に関わるデータを収集し、様々な切り口で深掘りできるダッシュボードを構築する

なお、優先度をつけるとしたら、まず最初に手段・技術の施策から取り組むことがおすすめです。

なぜなら、具体的なツールが存在しない状態で新たな活用方法の教育や業務プロセスの導入を試みても、業務部門がそれを理解し実行に移すのは困難だからです。

そのため、まずは小さくても動くツールを作り、実際に使ってもらうことが重要です。

業務部門がツールに触れることで、データ活用の具体的なイメージを持つことができます。これにより、データ活用に対する関心と理解が深まり、“組織・人材”や”仕組み”に関する施策がスムーズに進みます。

このように、3つの観点で分けて考え、課題の優先度を整理することで、現状が把握しやすくなり、次のアクションを具体化することができるようになります。

おわりに

今回は「とりあえずBI化」をした次にやるべき最初の一歩目をご紹介しました。

このように少しずつ自社のデータ利活用を進めていくうちに、徐々に高度化が進み、関係者も増え、やりたかったゴール設定が結果的にできるようになるでしょう。ぜひ活動を前に進めてみてください!

この「データ利活用の道具箱」では、データ利活用を推進したり、データをもっと活用したいと奮闘している皆さんに役立つ情報をnoteで発信しています。ぜひ他の記事もご覧ください!

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