だって、かわいくないんだもん
季節が巡る。
奥飛騨から眺める山々は、まだ雪化粧を解いていない。
それでも確実に、生命が目を覚まし始めているのが、わかる。
顔を上げると、春がこちらを見つめていた。
今週で、ちょうど1ヶ月になるこの奥飛騨暮らし。
その中で感じた一番大きな自分の感情の変化をしたためたい。
結論から言ってしまおう。
僕はネズミを捕まえることを、諦めた。
話は2週間ほど前に遡るのだけれど、ある日、奥飛騨の家にネズミが出た。始めはびっくりして、どうしたもんかとも思っていたが、今や、僕の日常はこのネズミとともにあって、僕はこのネズミが嫌いではない。
「嫌い寄りの好き」ぐらいである。
勿論そこに至るまでには、いくらかの変遷がある。僕自身の感じ方の変化と言ってもいい。それを記すのが今回の目的だ。
その変遷は、およそ以下の3段階を経た。
① 驚きと拒否
ある日、家を闊歩するネズミと遭遇し、深く驚き、これを害獣と見なした。すぐさま排除へと動き、昨今の事情からDIY精神を発揮した罠を自作する。「穀潰しのチュウ助」と名付ける。
② 競争と飽き
このネズミに対し敵対心が芽生える。あれこれ策を巡らし罠を変化させるが捕まらないことに若干の苛立ち、つまらなさ、てか、ちょっと飽きる。
③ 受容と愛着
罠に仕掛けるマヨネーズが、ただの餌として消費され続ける日々を過ごし、罠を自作し遊ぶ暇人の支配者と、あえなく捕まる哀れなネズミ、という構図が揺らぎ始める。よぎる不安。
もしかして逆なんじゃない?
遊んで貰ってる(遊ばれている)のは僕の方なんじゃない?
その知性、愛嬌、何より罠をすり抜ける運動神経。
それは僕の敵対心を萎えさせ、敵ながらあっぱれ。もはや何のために争っていたのかわからないね、と思わせた。
そもそもなぜ僕は彼の生殺与奪の権を持つことを、自然の理のように感じていたのだろうか。自然の理とは何だろうか。ダーウィンは言う。人をヒエラルキーの頂点とする動物史観は間違っている、と。生命とは一番最初は同じ祖先からスタートしていて、種とは枝分かれの歴史なのだ、と。
つまり、今の時代を生きている多種多様な生き物は、同じ生き物から出発してから、永久にも長い時間を変化しながら生き延び、枝分かれした最前線を共有している。今のサルはもうヒトに進化しない。今のヒトがサルに進化しないのと同じように。それぞれの種が進化の最前線に立っている。
芽生える、、、連帯意識。
僕らは、同じ時代を生きるフォームの違う生き物として、仲間になりうるんじゃないのか。もし僕が幼かった頃にネズミを見ていたら、果たしてそれを人類に仇なす害獣と思ったろうか。多分違う。素直に驚き、その存在を喜び、なんなら友達になりたがったんじゃないか。多分そうだ。
ここに「穀潰しのチュウ助」を改め「マサジャーノン」と呼ぶことにする。名前をつけるのも、おこがましいかもしれないが、友愛の証である。
そして罠によって相手にミスをさせることを自分の喜びとするのではなく、マサジャーノンの成功をこそ喜び、僕自身の人生の彩りにも変える。そんな関わり方もあるのではないかと考え始める。← New!!
とまぁこんな変遷である。ご納得は頂けたであろうか。
まだ無理だろう。
では、次にマサジャーノンの業績を紹介したい。
i 罠 B wiΘ U
これまでの罠の紹介と、マサジャーノンの偉業を振り返る。
ちなみに以下の③までは、前回のnoteに含まれた内容である。ご興味に応じて参照されたい。
①ネットで調べて作ってみました ver.
総評
・他所の何かをただ持ってくるんじゃなくて、個別具体的な状況に合わせた対応策を取らないと駄目ないんじゃない?的なメッセージを暗に発信
②辛ラーメン ver.
総評
・辛ラーメンもイケるという大人の口をアピール
・45度の傾斜で飛び出すことで最大飛距離を狙うというアルプス生まれ根性を見せつける
③先の罠を移設し、ホスピタリティも加味 ver.
総評
・届く!
④重心を逸してマヨ ver.
総評
・抜群のバランス感覚!
⑤重心など関係なく乗ったら終わり ver.
総評
・軽量!
⑥摩擦係数を抑えて、マヨも遠くに ver.
総評
・なおも軽量!
⑦いっそのことシンプルに穴 ver.
総評
・スベり知らず!
⑧攻略すべきは欲望 ver.
総評
・欲望の抑制も可!
⑨もはや何もせずとも ver.
総評
・(実は)出入り自由!
以上です。もう僕は疲れたよ、マサジャーノン。君の勝ちだ。誇っていい。これからも僕はきっと、罠の上に餌を仕掛けるけど、もはや罠はフレイバーだ。適当にアトラクション的に楽しんで貰いたい。どっちかというと、今はピタゴラスイッチ的な複雑な造形物の先に、餌を設置して、君の成功を祈るというのをやりたいと思っている。
***
閑話休題。
奥飛騨には、こんな風に日常を彩ってくれる動植物達がいる。気がつけば、自然に触れる時間が増えた。そしてどこかしら彼らに、連帯意識を持つことも覚えた。そんな今日この頃。
新種が現れた。
…コウモリだ!!!
こちらを見ている………のか?
これは怖い。さて、どうしたものか。
さすがにコウモリはちょっと…。
(お前ちなみに結構な風評被害を受けてるぞ!)
***
コウモリは言う(かもしれない)
季節は巡る。
(以上)
よくぞここに辿り着き、最後までお読み下さいました。 またどこかでお目にかかれますように。