【詩】おじいちゃんへ。
おじいちゃん。こんばんは。
そっちは「こんばんは」じゃないのかな。
よくわからないけど。
続けるね。
会ったことはないけど、私、おじいちゃんのこと知ってます。
だって、小さい頃からときどきおじいちゃんの話、聴いてたから。
大恋愛だったらしいわよって、おばあちゃんと。
そうなの?
おばあちゃんは聞いても笑うだけで何も言わないから。
でもね、わたし、おじいちゃんの顔は知らないの。
仏壇の写真のおじいちゃんは、和服きて杖ついた姿で、お顔がよく見えないから。
おばあちゃんが選んだんだって。
なにか思い出がある写真なんじゃないって、ママは言ってる。
おじいちゃんの杖、白い杖って書いて白杖(はくじょう)っていうんだね。
目が不自由な人が使う杖だって。
調べたんだ、自分で。
あ、わたしはもうすぐ11歳。小学5年生なんです。
学校は行ってるけど。
つまらないし、学校の勉強もあんまり好きじゃない。
でも、本の感想文とか作文書くのは好きなんだ。
たいてい先生から褒められる。
褒められるとうれしいしね。
でね、今日も宿題で作文がでた。
家族の方への感謝の気持ちを作文に書きましょう、だって。
つまらないでしょ。
適当に書いたけど。
サイテー。
でね、おふろに入ってぼーっとしてたら、天井から水滴が一滴落ちてきた。
そのとき一緒に声が落っこちてきたの。
「ねえ、おじいちゃんに手紙を書いてみたら」って。
なんで気づかなかったんだろう!
ほんとだ、素敵!って思った。
すごい、すごいって。
おじいちゃん。びっくりしてる?
わたしもびっくりしてる。
こんなこと、あるんだね。
気づいてる人は気づいてるのかな。
おじいちゃん。
また、こうやって手紙だしていい?
ママもおばあちゃんもいい人だし、やさしくしてくれるけど。
わたしのこと理解しようとして疲れていくの見ると、落ち込むんだよね。
わたし、悪い子なのかなって。
あ、ママがきたみたい。
おじいちゃん、またね。
元気でね。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?