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硬水とのお手合わせ

住むことになったのは家具の揃っているファービッシュド・アパートメントで、何もかも(食器やクッションまで)センスが良いものが揃っていて「わーい」と思ったのも束の間、家電が日本のものと全く違い、一筋縄では暮らせないことに、すぐに気がついた。

素直に使えるのは冷蔵庫くらい。

まず、電気コンロ。

電気コンロが、めっちゃパワフル。電圧の基準が違うとはこういうことなのか。10段階火力の最高の「ブースト」を選んだら、本当に「秒」で湯が沸騰して怖い。さいしょ勝手がわからず、オートミールを焦がしてしまった。

コンロがガスじゃないのは物件探しで妥協したポイントだ。日本からわざわざ船便で送ってる大きなWACが使えないのは無念(あれで何でも美味しくできるのに)だが、ガスを条件にすると物件が激減するので。

そして、洗濯機がわからない。

14種類ものコース選択ダイヤルがあるが、お湯の温度40、60、90度って、どんだけ熱湯?!

でも日本の家電って直感でなんとかなるじゃん?

だから同じノリで「これっぽい?」のを選んで回し始めたら、えらく長く濯ぎが続く。はっと気がついて、もしかしてこれは全自動じゃないのかと疑いかけたら、2時間くらいで乾燥に辿り着いた。で、その乾燥がまたとにかく長い。マニュアル読んでも、こちらの人にとって常識的な前提は書いてないから、いまいちよくわからない。

機械に頼らず外で干したても、ベランダがない。だいたい薄曇りだし小雨多いし日照時間短いからか、ロンドンの街中で洗濯物がはためく景色を見ることがない。あれってアジアの風物詩なのかな。

この熱湯ジャブジャブと長々しい機械乾燥に頼ってるなら、生地が痛むはずだよ。イギリス人が妙に色あせたパーカーとか着てる理由がわかったよ。

さらに、食洗機が動かない。

これも硬水と関係しているんだが「水を柔らかくするソルト」という特別な塩を洗剤とは別に入れないと機械が動かない。それがないと数ヶ月で石灰みたいなのが詰まって動かなくなるらしい。

マニュアル読んでそのソルトとやらを買ってしばらく格闘したけど、やはり動かない。とりあえず手洗いで凌いでいるが、故障の可能性もあるから不動産屋に連絡しなくては。

半分以上は硬水との戦い・・・

三日目くらいになって、家電との戦いのほとんどは硬水のせいだと気づいた。どうも、当地の水がミネラルを含む硬水だから、熱湯で長々と洗わないと汚れが落ちないらしい。なんてことだ、敵は家電以前に、水だった!

イギリス全土が硬水というわけではないがロンドンの水はガチガチ。洗濯機の説明書にこんな地図がのっていて、地域によっておすすめのコースも違うと書いてあった。

「硬水」というと強そうだけど、汚れを落とす力については日本の軟水のほうがずっと有能だ。硬水はむしろいろいろ残滓をくっつけていくので、お風呂だって、毎日強めのスポンジで綺麗に磨かないとすぐ白っぽいミネラル?石灰?が薄くくっつくし、シャンプーや化粧水も、日本で10年以上愛用してきたやつでは肌と髪がパッサパサになる。ここに来て、自分に合うものを探し直さねばとなっている。

生活のOSともいえる水がこれだけ違うのだから、その上に乗るアプリ・・・意識も変えなきゃだよね。掃除はこまめに、洗濯の頻度はおさえめに、化粧は必要な時だけ、と、なるわけだわ。

日々「なぜ?」にぶちあたって新しい頭の使い方をしているので疲れるけれど、部屋がピカピカで居心地いいので、今のところ基本は「移住ってボケ防止になるわー」と前向きに捉える気持ちの余裕はある。

でも、日本の軟水のなんとありがたいことよ。

「水滴石を穿うがつ」どころか、こっちの水は(鍾乳石しょうにゅうせきみたいに)石を築いてしまうのだもの!

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