エルゴノミクスを整えよう 【リモートワークのTips前編】
最近、リモートワークのコツ的な本とか記事とかは色々出てるので、いまさら私が言うこともないと思ってたんですが、外資系IT企業の経歴ゆえにコンサル先で「オンライン v.s. フェイストゥフェイス(以下F2F)の違い」について訊かれることが多く、自分は普通と思ってた情報も案外整理すると人に喜ばれると気づきました。そういうタナボタ知識は、ためこまずにブログで公開して社会に還元しようと思います。
オンライン会議って、実は技術的にはだいぶ前から使えるようになっていたものだけど、使い手のほうがなかなか慣習的なことから離れにくくて、今まで限定的なところでしか浸透しなかったんですよね。うまく使えばとっても便利です。リモートワークもどんどん活用したほうがいい。
今は、皆が一番必要としたタイミングで話題になったZOOMの独り勝ちだけど、私の記憶では個人が使いやすいP2Pのアプリを最初に出したのはAppleのiChat@2005年です。Steveのいた頃のApple製品は未来を手繰り寄せるワクワク感がありました。Googleでは、海外チームと日常的にHangout(今はMeetっていうのかな)を使ってましたが、マーケ下手だなあ…まあ、それをする必要のない会社だからね…。
ただ、人と人との協業は、基本としてはF2Fのほうが圧倒的にラクではあります。
改めてその「ラク」かどうか、という視点からオンラインの活用を考えるに、要素分解して、
①同じ姿勢でデバイスを見続けるのは身体に悪い
②視覚・聴覚以外の人間の感覚は侮れない
という、2つの文脈で説明したいと思います。今回はまず①について書きます。なぜそこからかって?
通常オンラインで仕事をしている私でさえ、この春、対数十人~数百人のZOOM研修を、終日(9時5時)数日間連続でやったら、かつてなく首肩が痛くなって、これは続けたらだめなやつだ(体壊す)と感じました。受講生の皆さんのほうが辛かったんじゃないかと思いますが、良い仕事をするには健康第一。自宅でオンラインやってると職場以上に陥りやすい「悪い姿勢で長時間」問題の解消に少しでも役立てばと思うからです。
今、パソコンでこれを読んでくださっている方(半分以上の方は携帯端末から見てる気がしますが)、首を突き出し、視線を落とし、背を丸くして画面をのぞき込んではいませんか?足は組んだり、浮いたりしてないですか?
あんまり話題にならないですが、いわゆるIT業界で長時間座ってパソコンに向かい合う職種では、年齢を問わず頸椎を痛めている人が非常に多いです。ぎっくり腰みたいなもので、ある日突然ピキッとなって外科手術が必要になる場合もあります。私は新卒1年目の頃に、それをきっかけに職場復帰できなくなってしまった先輩を見て、怖いなって思いました。
その大事さを知っているGoogleには、オンラインチケット切ったら、エルゴノミクス(人間工学)・チームが社員の机のところに来てくれて、ひとりひとりの体格にあわせて机の高さや椅子の肘掛けの位置、画面の位置の調整なんかをしてくれる福利厚生サービスがありました…というとなんか凄そうだけど、実はいたってシンプルなことなんです。まとめると要点は3つ。
☑ 正しい姿勢で座る
☑ タイピングの時に、肘の角度が直角になる
☑ 自然に前を向いた視線の先にディスプレイがある
まず、正しい姿勢というのは、椅子に深く腰掛け、座骨のうえにまっすぐ背骨と頭蓋をのせて、足の裏は地面にしっかりつけた姿勢です。(分かんなかったら「良い姿勢 パソコン作業」で画像検索してください)
私は自宅オフィスで仕事をすることが決まった際に最初に「いい椅子」を買いました。旦那がぎっくり腰をやった後の誕生日には「いい椅子」をプレゼントしました。何が怖いって、仕事ごときで体を壊すことです。自宅のワークステーションを整えるなら、まずは椅子がおすすめ。健康の事を考えたら、中長期的に絶対に回収できる投資です。
椅子・机を買い変えるのはちょっと大変ですが、それが整えば、残り2点を両立させるのは比較的簡単。できるところから着手していきましょう。
リモートワークの人も自営の人も、今はノートパソコンを使っている人が多いと思いますが、まず手に入れたいのは、外付けキーボードとマウス。美肌に見せるウェブカメラとか、耳が痛くならないヘッドホンとかより先に、肩の力を抜いて肘直角でタイピングするための道具を優先してください。お高い光学マウスとか最先端の折り畳みできるキーボードとかである必要はなく、安いので十分です。
それが必要なのは、ディスプレイの位置を目の高さになるようにするため。特別なパソコン・スタンドがなくても、図鑑や段ボールを下に噛ませるだけで実現できます。従来、机にノートパソコンをべた置きしていた人にとっては「えっ、こんなに?」って思うくらいの嵩上げになるはず。私だったら、子供の図鑑5冊を下に敷くかんじです。
正しい高さにできたかどうか自信がなかったら、タイピングの姿勢をとって画面に目をむけた状態で自分の首に訊ねてみてください。「ラクに頭蓋骨を支えられてますか?」肩には「余計な力がはいっていませんか?」と。
なお、外付けディスプレイはネックで高さが調節できるものが多いと思いますが、デュアルモニタで使うなら、嵩上げしたノートパソコンも画面の下のラインを揃えましょう。ヨコの視線移動に段差がないのが理想です。
こういうことって、この春急激にリモートワークで自宅から仕事をするようになった方は、なんとなく知ってはいても実践につながっていないことも多いと思います。ここまで読んでくださったのも何かのご縁。この機会に、自宅のワークステーションを見直してみてくださいね。
人によってはオフィスの環境も整える余地があるよーという人もいるかと思いますが、在宅で仕事をする場合、誰かに話しかけられることもないし、会議で席を立つこともなくて、思いのほかずーっと前を向いて座りっぱなしになってしまいがちなんですよね。意識的に水分をとるとか、こまめに休憩を入れるとか、Tipsを言い出すときりがないけど、まずは基本姿勢。凄く大事だから、是非、考えてみて。
では、どなたさまも、ヘルシーなライフ・キャリアを。
後編では、②「視覚・聴覚以外の人間の感覚を侮ってはいけない」についての知見を紹介します。
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