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ていねいな絵本

幼児向けの絵本の紹介です。

わたしはもともと、本を読むのが好きで「気になった書籍はどんどん買う」主義で生きてきました。でも息子が生まれてからは、そんな贅沢な(雑な)乱読をする時間がなくなり、そのぶん(?)息子には良質な絵本を与えたい、という志向がはっきりしてきました。

子供に本を買うのは、話題の新著にどんどん手をだす自分の本買いとは全く違います。「月に1冊」という緩いルールで買い足していますが、絵本の世界には、何十年の世代を超えて愛されている名著が沢山あり、つい、自分が子供の頃に好きだったものから手に取ってしまいます。結果として、惚れ惚れするような古典絵本コレクションが積み上がって来ています。

でも、それが子供の興味に一致しているかというと、また別です。来月2歳になる息子がねんねの前に引っ張り出してくる「お気に入り」は、むしろおじいちゃんやパパが買ってきてくれた乗物系の絵本や図鑑ですね。

毎晩「ッガガガ、ゴゴゴゴ〜!」とドスの効いた真似音を発しながら、熱視線で電車やバスの写真ページをめくる息子。彼の指差し指示にあわせて「はやぶさ...」とか「かもめ...」とか、色んな電車の名前を読み上げるわたし。なんか...わたしが思ってる「母子の絵本タイム」とは、ちょっと違う。

しかし、そんな最強乗物図鑑と並んでほぼ毎日選ばれ、イメージ通りの「絵本タイム」を実現させてくれる彼のお気に入りもあります。それが、今回紹介する「バムとケロ」の絵本。

実は、こちらもわたしセレクトの古典絵本ではなく、友達がプレゼントしてくれた、比較的最近の作家「島田ゆか」さんのシリーズです。

落ち着いた色調、細かい絵柄、コマ割り設定など、一見、1〜2歳児には難しそうな印象ですが、息子はこのシリーズが大好き。犬のバムとカエルのケロちゃんが仲良く暮らす、なんてことのないおはなしを聞きながら、じっくり絵を見て、おやつのシーンでは「アム!」とつまんで食べる真似をしたり、靴を履き替えさせてもらうシーンでは「クック!」と言って玄関を指差したり、ごまごました発見をしては楽しんでします。どうやら、ケロちゃんに自分を重ねているみたい。

だいたい、ケロちゃんは赤ちゃんそのもの。いつも部屋をどろんこにしたり、おもちゃを全部引っ張りだしたり、とにかくよく散らかすのですが、そのたびにバムがせっせと片付け、掃除し、時にはケロちゃんの耳の中まで綺麗に洗い、美味しいおやつを用意します。「あーあ」とはなるけど、決して怒ったりしません。

ああ、子供のお世話をする保護者の理想型がここに!

省りみれば、わたしは家が散らかっていても仕方ないと放置したり、息子がもっと遊んでほしがっているのがわかっていても時間が来たら問答無用に消灯したり。「フルタイムで仕事しているから」を言い訳に、小さい人のペースにやさしくむかいあい、居心地のいい場所をつくってあげることをおろそかにしがちです。

バムみたいになりたい。自分の手でピカピカにした部屋で、手作りのドーナッツのおやつタイムに、自分はお掃除疲れで、小さい人は遊び疲れで、いっしょにうとうと昼寝をするの。「なんでこんなことしないといけないの」ではなく「きもちよくするのがあたりまえ」なかんじで小さい人のお世話をする。バムとケロの絵本を繰り返し読んでいるとそんなふうに思うようになって来て、これは「丁寧な暮らし」を訴求しようとガンバるお洒落雑誌などより、よっぽど心に響くなあと思うのです。(ロハスとかスローライフとかのブームは常に「そんなん、やってられるか!」と一蹴してここまで生きてきましたから)

と、途中からなんだか反省文になってしまいましたが、繰り返し読むうちに大人の心も豊かにしてくれるこの本、おすすめです。そして、それをプレゼントしてくれた友達に、ありがとう。

表題写真は、数年前に趣味の講座で自作した絵本「ポッピー」より、小さな庭から巣立った鳩の子が、ものしりスズメに「海」を教えてもらう夏。80歳くらいで言ってみたい。「わたしの絵本、オススメです!」と。あはは。

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