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仮想空間考

久々に、渋谷のスクランブル交差点の近くのカフェの窓際に座った。

この街に住んでいた10年前から店舗の新陳代謝は激しいけれど、見渡す世界は看板だらけ。派手な色遣いに、旬の芸能人のアップ。

それ自体は相変わらずだけど、今はいくつもの巨大な壁面広告がくるくると変わる動画に変わっていて、昔の未来に自分はいるんだなあと感じた。

こういう世界が好きな人もいるかもしれない、が、個人的には、視覚野に招かざる他者の訴えが展開され続けるのは五月蝿い。画面からアドを追い出したくて有料noteを使っているくらいには。

知人で、健康のために流行りのアプリで睡眠測定を始めたらかえって体が重く、もしやと思ってウェアラブル端末を外したら体調が回復したという人がいる。我が子あーちゃんも、わたしが隣で携帯を触ると、どんなによく寝ていてもぐずって起きてしまうという零歳児であった。電磁波過敏症ってやつだろうか?

だから、今では寝室に携帯電話を持ち込まない習慣になった。

何かの小説で、身体に埋め込まれたチップがジオポイントと連動して、街を歩いていると仮想空間の視野にデジタルアドが表示される世界が描かれているものがあったけれど、

もしもそれがまかりとおる時が来るなら、インプレッション勝負を仕掛けてくる企業群の、投資効率の網の及ばぬ辺境の果てに移住したい。狭い日本では逃げ場は少ないな、オーストラリアの奥地か?カナダもいいかも?

と、とりとめもない妄想を転がしながら自宅近くの商店街に戻ってきたら、一角が黒山の人だかり、みんなが携帯端末をのぞきこんでいる。

チラ見したら、やっぱりあれだった。肉眼に見えぬレアなモンスターが現れていたようだ!

仮想空間が売買される時代は、すでに現実になっていた。

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