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お料理ブートキャンプ

第一子、第二子を同時期に出産した田舎の妹から、産後の夕ご飯はデリバリーの「ヨシケイ」が便利と勧められ、早速、Webから5日間のお試しを申し込んだ。3歳 & 0歳と過ごすワンオペの夕刻が楽になるなら、と。

が!しかし!

自分が何かを大きく勘違いしていた事に気がついたのは、初日の月曜日に、届いた箱の蓋を開けた瞬間。

そこにあったのは、スーパーで売っているような生肉や新鮮野菜。

わたしの期待は「素材は全部、切って味付けも終わったセットで届くから、焼いたり煮たりするだけで10分くらいでできる」的なのだったのに。

配達担当のおばちゃんが、顔合わせの時に「今週のレシピ」と言って置いていったのが本当に「レシピ」だったとは。てっきり、サービス案内のパンフだと思って、目も通さずに放置していたよ。

そこに入っていたのは、レシピを見ながら、切ったり、漬けたり、量ったりから自分でやらねばならぬ素材だった。基本調味料は持ってる前提で。

しかも調理時間のめやすが「35分」って!

省力化どころか、普段わたしが料理に使う時間の倍以上だよ!

そして、今すでに横で「何か食べたい〜」と騒いでいるヨーヨーを、そんなに待たせらないよ!!

その場は取り急ぎ、冷蔵庫の中の野菜と肉切ってスキヤキのタレで焼いて、ゆで卵と漬物を添えてなんとか乗り切った。けれど。

ラクするつもりで申し込んだ5日間が、逆に「お料理ブートキャンプ」になりそうだと悟った瞬間には、膝から崩れ落ちそうになったね。

とはいえ、根がまじめなわたし、届いた素材をもったいなくすることはできず、その後大人用にちゃんと作るべく奮闘した。で、慣れない事にモタモタして、また、あーちゃんをバウンサーで泣かしてしまった。

栄養バランス良い料理がおいしくできたけど、なにやってんだ、わたし。と、思った。

その夜、LINEで妹にクレームを入れた。

「なにこれめんどくさい。わたしにはハードルが高すぎ!」したら、

「難しかった?わたしは勉強のつもりで、よかったけど」だって!?

同じ状況(小さい子供2人)で、どうしたら勉強しようって余裕がもてるわけ!?!保育園に預ける時間が長いから?双方のジジババが近いから??

しかし、「都会は食べに行くところがいっぱいあってええな、無理せんでええんじゃね?わたしは近所のスーパーの惣菜全部食べ飽きたわあ」と、岡山弁まじりなだけ余計に悠長に見えるテキストがポンと続いて、

あー、そうか、彼女の場合、ちょっと食材を買いに出るにも車が必要だし、外食できる場所も少ないし、手に入るサービスも限られているしで、便利な都会生活に甘やかされきっているわたしとは、いろんな筋肉の鍛え方が違うのか。と、納得した。それ以前の、料理が好きかどうかという女子力問題もあるだろうけどさ。

わたしが思うお料理の「ラク」とは、メニューを考えたり買いに行く手間が省かれることは当前、作る手間さえもどうにかなるってことだった。

後になって判ったが、実はヨシケイには今回申し込んだ35分で本格メニューの「バリエーションコース」以外に、15分で作る「クイックダイニングコース」もある。つまり、ちゃんと内容を確認せずに、出来上がりのイメージの美味しそうなコースを脊髄反射で選んだ、自業自得なのだった。妹が使ってたのもどうやら同じ35分コースなんだけど。

さーて、そんなわたしが、どれくらい料理が下手かって言うと、たとえばこの5日間でやらかしたことの一部を紹介すると、

・ 初日の一品が「唐揚げ」だったが、油の温度が160度のあと180度にして2種類の食材を揚げ分けるとか、想像を絶する。まず、揚げ物用の鍋がうちにはない。結局、コンベクションオーブンで焼いた。

・ 「ハンバーグ」とは既成の種を買ってきて焼いたことしかなかった。時間を返してえ!と恨みがましく思いながら肉をねちゃねちゃしている時、あ、玉ねぎの「みじん切り」って、自分サイズの1/4にはしないといけなかったみたい。と、気がついた。「ざく切り」にしてた。

・ 更につなぎの「パン粉」が家になかったところで、たまたまあった菓子パンで代用しようってひらめいてしまった。乾かすつもりで適当にチンしたら黒焦げで煙プスプスになった。考えてみたら糖分はいってるもんね...我ながらばかだとしか言いようがない。

・ 真っ黒焦げをもうひとつ。ニンニクチップを作る火加減をしくじって、あっという間に黒くしてしまった。でも、オイルは香ばしくできたので、ままよーっ!と、そのまま使った。

まあ、そんなこんなで、なんとか5日間、ヨーヨーが保育園に行っている日中に素材を全部切る等のタイミングの工夫をしながら、時に赤子を鳴かせながらもやりきったら、それはそれでいろんな発見があった。

確かにこれは勉強になる。自分レベルでも、1ヶ月も頑張ればそのうち慣れてきて、いろいろストレスなく、レシピも読まずに料理ができるようになるかもしれないという予感を得た。素材の量感とかアレンジの原則も身につきそうだし。大人2人分で週に5,000円くらい。結構多めにできあがり、くいしんぼうの3歳児のも取り分けられる。悪くない。

ヨシケイ、わたしはあなたを「料理の通信教育」と呼ぼう。

そして驚いた事に、泣きそうだった初日には想像もしなかったが、5日目の最終日には「いつか余裕ができたら、この通信教育、再開してもいい」と思い始めていた。目下は全方位的な省力化が優先課題なので、あくまで「いつか」だけど。

なぜかって?

ざく切り玉ねぎのハンバーグでも、ヨーヨーはわたしのぶんまで欲しがる勢いで食べてくれたのだ。普段は嫌がる緑色のものやクリーム系のものも、パクパク勢い良く食べてくれたのだ。

君が満面の笑みで「おいしいねぇ」なんて言うもんだからさ。

はじめてわかったよ、「お料理が好き」という人の心が。

写真は、夕食後、親が目を離した隙のアートワーク by ヨーヨー。第一発見者のパパの「あ〜!」という声に続いてトコトコこちらに逃げてきたヨーヨーに「どんな悪さしたの?」と聞くと「あのね、えーっとね、机にお絵描きしたらどうかな〜?って思ったの。」と。あまりに堂々と答えるので、笑うのを我慢するのが精一杯で、怒る気になれなかった。机に書いちゃダメだよって言ったけれど、どういう対応したらよかったのかしら?

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