先達はあらまほしけれど
少し前に飲食店における「水で良いですのこと、どう思う?」について、Bar Bossaの林さんが「年長者が若い人に教えないから」と、端的に答えていらしたのを読んで、考えたことがある。
確かに、わたしが社会人になったばかりの頃って、仕事が終わってから美味しいお店に連れてってくれる先輩とか、はしご酒が好きな上司とか、はたまた若者の間隙をついて薀蓄を言うのが趣味みたいなおじさんとかが普通にいた。
お酒の飲み方も、接待の作法も、高級なお店での立ち振る舞いも。そういう年配者から、仕事プラスαなTipsとして教わった。
今はそういうチャネル自体が「時代遅れ」なのかもしれない。
外資系企業では、異性の上司と部下が2人で飲みに行くことが倫理規定でNGと定義されていたりする一周回って、LGBTの上司が同性の後輩を誘って飲みに行く場合は?同性でも本当はいやなのに逆らえない場合は?なんて議論になったりして。大人のコレクトネスの管理は、企業にとっての「今時の課題」というわけだ。
だから当節の作法を身につけたおじさんおばさん(つまり自分の世代)は、わざわざ若者を飲みに誘おう教えようとはしなくなる、
自分の金と時間を使って、うざがられたり、ハラスメントと言われたり、ときには雇用問題になるかもしれないリスクを犯すなんて馬鹿馬鹿しいもん。
とはいえ、若かりし頃の自分においてはそんなめんどくさいことは考えたことがなくて、ただ、好きな人の言は素直に聞き、嫌いな人の言は「はーい」って聞き流してきた。
おかげで、(国内なら)だいたいどんなところに行っても(ゲストとして)堂々と振る舞えるだけの、お作法の基本は身についた。
当時、そこに「育てる」意図(=愛情)があろうとなかろうと、年配者からいろんなことを言ってもらえたことは、大変ありがたかったと思う。
以上、前段。
このコラムの真打は、家事のことである。
このところ、わたしは自分の家事・子育てのスキルの低さにほとほとうんざりしていたのだが「それだって同じことがじゃないか」と思ったのだ。
先日のコラムで、遠方に住む妹が、夕方ワンオペな条件は同じなのに手料理を勉強する余裕がある!という驚きに触れたが、その彼女から赤ちゃんの「お食いそめ」の記念写真が送られてきて、確信した。
やっぱり、年長者からの引き継ぎの有無って大きい!
妹は地元にとどまって家を継いでいる。結婚相手も地元の人で、そちらの家族もすぐ近くに住んで行き来がある。子供のイベント写真は、ジジババだけでなく、オジオバ、いとこも含む一族の集合写真であった。
ちょっとした迷いや悩みは顔を合わせた時に相談できるし、不器用なことをやっていたら「こうしたらいいよ」と教えてくれる人が、それだけ近くにいるのだ。
かたや、タッチベースでアドバイスをくれる年長者が身近にいない核家族のわたしは、行政の仕組みを利用したり、育児書読んだり、友達に聞いたり、ベビーシッターさんに学んだり、プロアクティブに知見をためていくしかない。
この「プロアクティブに」っていうのは結構エネルギーを使う。
長らく企業勤めしかしてこなかったわたしが、バーやレストランでの立ち振る舞いには迷わなくても、家事育児のスコアが低いのは当前!
で、ここが前向きスイッチの押しどころなのだが、
近くに親族がいたらいたで、望まない介入もあったり、相性をなあなあにして通れなかったり、介護・墓地問題にまきこまれたりして、大変さもいろいろあるだろうことは容易に想像がつく。
万事、塞翁が馬!
一つ前の世代から見たら、わたしの家事育児は「あらまあ、ありえないわぁ!」ってことばかりかもしれないけれど。
育児書を読んだら「こんなのできない、できてない」と自信をうしなってばかりだけれど。
「いつまでも子供に愛される母でいたい」なんて、時には欲ばったことを希ってみたりもするけれど。
結局、ひとは自分の選択に責任と信条をもっていくしかないのだ。
よし、開き直ろう。
わたしなりに、ジタバタしながら、ヨーヨーとあーちゃんが自分の翼で飛べるようになることを信じて、育てていくしかないよね。
産んだのは親のエゴでも、子は徐々に自分の人生を歩き始める。
その時になって、いろんな人から教えてもらえるのっていいことだよ、でも、何でもかんでも人の言うことを聞いていちゃダメだからね。
って、
ほらね、
また、スキルが低いくせに、教えたいと思うことが難易度が高いんだけど
さて......ジタバタするか。
One of these mornings
You're going to rise up singing
Then you'll spread your wings, and you'll take to the sky
But until that morning
There's a'nothing can harm you
With your daddy and mammy standing by
子守唄 "Summer Time" より。いろんな人がカバーしてるけど Janis Joplin のが好き。