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予測は誰のため

厚生労働省クラスター対策班に参加する北海道大学大学院の西浦博教授が最悪の場合の死者数予測を発表して「批判された」というニュースを見て、なんだかなあと気をそがれた。

未来の不確実性を量的に予測することは、リスク判断をして行動を起こしていくために、必ず必要なステップである。専門家が何を考えているかということ、私は是非聞きたいけどな。

その「批判している人」っていうのは「そんなこと言われたら不安になるやんか~!」という当事者(そういう人は多分40万が4万でもおなじ反応をする)ではなくて、「そんなことを(他のバカな奴らに)知らせるな!」と、社会の情報の非対称性に巣食って甘い蜜を吸いたい誰かさんたちなのでは。

ただ、何を言うにしても「伝え方」は、確かに大切である。

つけるたびに「この国はそんなに救いようがないのか」とがっかりするのがいやだから、私はテレビはあまり見ないので、西浦教授の発表もナマでは見ていない。もし見ていたらまた違う印象があるのかもしれない。

けれどもそこは、国難に際して伝え方のプロであるマスコミが彼ら専門家を助けずにどうすんだよ、と言いたい。パニックや恐怖を煽るようなリスク・コミュニケーションをしているのは誰なのかを、もう一度考えてほしい。

「8割おじさん」と揶揄されているらしいが、正しいこと言っているんじゃないの。彼にはこれからも堂々と考え、発信し続けてほしい。

ついでにいうと、未知のことに対する数理的予測というのは機械にやらせても人間にやらせても正答率は低いものなので、事実の経緯がシナリオから外れたからと言って専門家を戦犯のように攻めるのはお門違い。40万人は「それを現実にしないための予測」なのである。

国であれ企業であれ、いいなと思うトップ・メッセージというのは、統べる全ての人々に内在する知性や倫理を信じるものである。真実のみを語ることが、結果として未来への光を感じさせる。

わたしたちは、孤独で弱いが、考えることができる人である。

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