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人を生かすのは希望

今回私たちが渡英をしたのは、旦那が大学院に行くことを決心したからですが、今回は、その彼が1月から通い始めたロンドンビジネススクールのスローンプログラムについて紹介します。

まず、MBA(経営学修士)とは

「MBA」はわりとみな馴染みのある言葉ですよね。Master of Business Administration、経営学修士。ビジネスに特化したものなので大学卒業後すぐに進学する人より、数年の実務経験を経てから改めてという人が多い。

海外とは限らず、日本国内にも色々なMBAコースがあります。フルタイムではなく週末コースもあります。かつて私の周りにも何人か、仕事を続けながら履修する人がいたけどすごく大変そうでした。

ただ、外資系大企業の世界では学位がものをいう分野が確かにあります。だからハイキャリアを目指す人たちって、職業人生のどこかで、MBA、しかも行けるならばトップスクールを目指します。

八面六臂の大活躍をしていてキャリアを中断したくない人でも、仕事をしながら実務的な学位を取得できるパートタイムMBAに、死ぬ思いをしてチャレンジするわけです。

もちろんそれを必要としない、別の実力で色んなものを超えていく人もいます。でも、私が、キャリコンとして、若い人から漠然と「外資大企業で上を目指したい」という相談をうけたら、選択肢があるなら学位は取っておくと有利だよって伝える。自分は学卒だけど、一般論として。

E-MBA(エグゼクティブMBA)

そして、さらに実務経験を詰んだ、40歳前後のビジネスマンがマネジメントを学びに行くコースとして「E-MBA(エグゼクティブMBA)」というものがあります。こちらは短期集中コースや、リモートベース+数回のスクーリングで卒業できるコースも多い。

私の旦那が通っているSloan ProgramというのもそのようなE-MBAの一種です。正式名称は、Sloan Masters in Leadership and Strategy。米国のマサチューセッツ工科大学、スタンフォード大学、そして英国のロンドンビジネススクール(LBS)の3校が提供する1年間のフルタイムコースです。

これらの大学は普通のMBAプログラムも持っていますが、Sloanはいっそうシニア向けで、平均年齢42歳くらい。そのなかでもLBSは特に「ダイバーシティ」を特徴に掲げています。(興味ある人はこちらの説明をどうぞ)

旦那の同期は50人くらいで、話を聞いているといろんな種類の人がいるようです。50代の起業家が学び直しにきていたり、バリキャリのシングルマザーがいたり、東アジアの小国から王様の推薦を受けてくる(!)人もいるんだって。一緒にどんな議論するのかな?

エリート間の競争の激しいアメリカやインドの人たちは競って手を上げるプログラムですが、就労が固定的な日本では一部の大企業が幹部候補生を送り込むのが主流のようです。(私にはわかりませんが、日本の大企業の人って「辞めたら負け」的な世界観を持っている人もいますよね)

そこに海外留学経験も駐在経験もないうちの旦那が受かったのは、日本人のくせに自腹で手をあげているという珍しさに加えて、専門分野が事業再生なので、アフターコロナの立て直しに喘ぐ世界でそのスキルが役に立ちそうという、タイミング的な運があったのではないかと思います。

学位や資格はそれ自体はネタにしかならない

さて、MBAホルダーはたくさん世の中にいますが、学位にしろ資格にしろそれを取ったからと言って何かが保証されるものではありません。

卒業後に就職した先で迅速に結果を出せないと、同僚や部下から「あの人のMBAって、Manuke-Baka-AhoのMBAだよね」とひどい陰口を叩かれたり(実際にそういわれているのを聞いたことがある!)します。

でもね、私も東大卒の札を持ってたけど、国内で就職活動では優遇されても、実務でやらかすと「あの子、いい大学出てるのに」とか「東大卒って使えない」とか、言いたい人は言うわけで、気にしてもしょうがない。

45歳で自腹海外MBAっていうのも、えっ、いまさら?仕事辞めて?家族は?元は取れるの?って、普通はみんな、二の足を踏むのだと思います。

学びの本質は、希望である

でも、うっかり関門を突破してしまった旦那が、うわー大変、体力的に死にそうだとかいいながらも新しい環境で楽しそうにしているのを見ると、とりあえず、誰が何と言おうと「やってみたい」から挑戦することの尊さを感じます。

人からの評価ではなく自分のやりたいが原動力なら、そもそも機会の少ないものだから、挑戦してだめでも失うものはないもんね。

このところ日本って、GDPも相対的に落ち込むわ、超高齢化社会になるわ、開発投資も若者投資もないわで閉塞感がつのっていますよね。

閉塞感の中に長く閉じ込められていると、絶望が生まれます。

平均寿命を考えるとこのさきも長く生きちゃいそうだけど、どうしたら幸せに生き抜けるのか、みんな切実に気になるところだと思います。

海外に飛び出せば何かが開けるのかっていうと、そんな単純なことでもありません。我が家も、この先のことなんて何も約束されていません。

Dependantビザでロンドンにいるわたしなど、英語のへたくそな東洋人の母ちゃんにすぎない。でも、何がなくても「こうなるといいな」はある。家族の先を拓くという希望だけは、もりもりにあります。

わたしがキャリコンの資格を取得した2018年頃には「LIFE SHIFT」という書籍がベストセラーになり、東大の柳川教授が「40歳定年説」を唱えて話題になっていました。そこで説かれていたのは、人を生かす希望についてです。

一方で同じ頃、横浜駅前では高度プロフェッショナル制度の法令化を前に、おっちゃんたちがアジテーションをしていました。そこで叫ばれていたのは閉塞感。そして、人を殺す絶望でした。

先行き不透明な世界だからこそ、私は、40歳を超えてからの学び直しに挑戦する旦那は偉いと思います。

年齢は関係ない。人がどう見るかも関係ない。現状に閉塞感があるならば、希望を掴むために学びの機会に手を伸ばすことも考えるといい。大変だけどそれは楽しい。お金は消えるけれど、自分だけの経験ができる。

あとね、今、学びで大変なのは旦那なわけですが、経済面では私が大黒柱として働き続けられるから家族揃って移住できたという側面もあります。

実は、海外に出て活路を拓いている知人には、この「家族」というユニットでうまく共働きのレバレッジを効かせているケースが非常に多いです。ニッチな話ですが、それについてもまたどこかで書きます。

どなたさまも、希望を掴みにゆくライフ・キャリアを。

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