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ロスト・イン・トランスレーション?

昔、会社の同僚のKさんから聞いた話なんですが

Kさんが大学の卒業旅行だかでアメリカ横断のバックパック旅行した時、たまたま道連れになった外国人の女の子がいました。

彼女は日本の漢字に興味があるといいます。同じユースホステルに何泊かして仲良くなってきたところで、色んな言葉を英語で書いたリストを渡され、これを漢字にしてほしいと頼んできました。

ロマンチックな関係ではないけど、可愛い女の子の頼み。若いKさんは二つ返事で引き受けました。

“Sun“は、太陽。 “Angel“は、天使。“ Love“は、愛。…という具合に、首をひねりひねり、20個くらいは、翻訳して返したでしょうか。

そして翌日。その女の子が興奮気味に「ねぇねぇ、見て!」と、声をかけてきました。

「もらったカンジの中で、カタチがすっごく気に入ったのがあったからタトゥーにしちゃった!」

嫌な予感…で、息を詰めて振り向いた先には、

気力

…それは、見覚えのある自分の字!

適当に書きなぐった鉛筆書きを、漢字を知らない彫師がそのまま拡大トレースしたらしい入墨が、炎症まだ収まらぬピンク色に二の腕に黒々と刻まれていたそうです。

「いまだに、あのとき“Spirit“に対してその二文字をあててしまった自分の拙さを悔やんでいるよ」と、真面目なKさんは言いました。

「精霊とか、魂とか。せめてタトゥーにするって先に言ってくれたらもっと丁寧な字で書いたのに。」

「まあ、そのカタチが気に入ったっていってたんだから、いいんじゃない?」

聞いていた私たちは、笑い転げながら、無責任になぐさめました。

…ということを思い出したのはね、

最近話題の「ラブ・イズ・ブラインド」っていうNetflixのリアリティ・ショーに出てる日本人男性が、首に「No pain, no gain」てタトゥーしてるって小耳に挟んだからです。

…絶妙なひらぺったさとガクッとなるかんじに既視感があるぞって考えて、Kさんの筆跡で「気力きりょく」って彫った女の子の話を思い出しました。もしかしてその逆やったのかな。

若気の至りなら消すことをおすすめしたい。まだ日本語で「根性」のほうがマシ。

いや、もしかしたら、そこには本人だけの大事な物語があって言霊がのってるのかもしれないか。番組見てないのに余計なお世話ね。ごめんです。

追記 この話を書いたあと、久しぶりにKさんに連絡したら「すごい笑えるけど、これ僕の話じゃないですよ」と言われた。えっ、じゃあ誰だったんだろう?酔っ払ってたか。ないと思うけど、万一これを読んでそれ自分のネタだという方いらしたら、ご連絡ください。すごい笑わせてもらっときながら、ごめんなさいー


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