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同じ年の男の下で働くのは嫌よ!

4月、いくつかの会社の新入社員研修の講師として登壇させていただく機会があったなかに「マナー研修」もありました。

と言ったら昔の同僚はプー!と吹き出すかも。「誰がマナーだって!?!」と。

なんてったって、新卒で入ったのはアップル。ただでさえシリコンバレーのベンチャー、しかも、iPod登場未明となると、それはもはや紀元前。

自分で言うのもなんだけど、恐ろしくマナーとか知らない女子でした。本社に行けばみんなジーンズにサンダルで机の上に座ったり床に座ったりして会議をする社風だからとか、そういうレベルの話ではなく。

すっぴんで会社に行くし。暑い日にはハラの出た服で行くし。口のきき方知らないし。モノ食べながら片手で名刺渡すし。女子力とか磨いたってそれで食ってけるわけじゃないと開き直っているからもう最悪。実績もないくせに生意気でね!

まともな研修は受けたことがないうえに誰も注意してくれないので、人並みのビジネス・マナー(精神)を身につけたのは非常に遅く30歳超えてからだった。

今回教える立場になって、それさえ自己流で怪しかったのかもと恥じ入りました。

語先後礼(ごせんごれい)とか、知りませんでした。言葉が先で、お辞儀が後という意味で、商談の時なんかに「よろしくお願いいたします」と相手を見て言葉を発し終わってから、お辞儀をするの。

まあ、わたしのマナー失敗ネタはとんでもなさすぎるのですが、今回取り上げたいのは、そういう話ではなく…

研修の中の「会食におけるマナー編」のQ&Aで、初々しい新卒の女性から質問があったのです。

「お酌は、やはり女性が率先してしたほうがいいのですか?」と。

そっか、そういう発想か。なるほどファッション誌のモテ女子特集ではそれ正解って書いてるわ、たしかに。その質問に根深い社会的暗示を感じる!

その場での答えは「そこに男女は関係ないですよ」という範囲にとどまったのですが、

うん、ソムリエとかバーテンとか、資格でなくてもめっちゃくちゃビールを注ぐのがうまいという特技を持っているなら披露するといいよ。相手に気持ちよく過ごしてもらいたいという気持ちから自分が一歩早く気を配るというのもよし。自分の近くにお皿があって、回すより取り分けたほうがよさそうだなって思ったらその役を買って出るのも素敵ね。

しかし、そのすべては「女だから」ではない。

女だから素早くお酌や取り分けに腰を上げよというのは、「ビジネス・マナー」ではない。そういう時代遅れなことを期待する年配者はいるかもしれないが、それは相手がマナー違反。

会社勤めしてた最後の頃、某取引先との会食に、先方は男性ばっかり、こちらは女性ばっかり(しかし合コンではない)で臨んだときのこと。お酒が回って「あなたたちみたいな人と仕事がしたい、うちに来ないかね?」なんて適当なことをおっしゃる先方(男)に対して、同僚(女)がバッサリ「同じ年の男の下で働くのは嫌だな!」と言い切りました。

こう書くと結構きつい印象ですが、そこは潔く言い切ってもその場の空気を損なわない魅力というか腕力が、わが友にはありました。仕事できる女のひとつの類型かなと思います。冗談にしても、然るべき席を用意して呼んでるかんじじゃなくて、下に侍らす気分で言ってるよね?と、暗に言い当てていました。

ジェンダーについてはみんな、マナー本とか雑誌とか家庭とかテレビドラマとか、いろんなところで、じわじわした社会的メッセージを受け取って育ってきています。わたしも含め誰もがその呪縛から完全に自由ではいられない。しかも、お金の絡むビジネスのシーンでは、稀にですが、信じられないくらい無作法で卑劣な態度でそれを利用してくる人もいます。(上記エピソードはずっとジェントルな事例ですが、それでも、こちらが男性だったらそう言う言い方はしないよね)けど、そんな時に、侍るな。媚びるな。

意味のないところで頭を垂れることに慣れてしまうと、見えないところで自尊心が削れていくから。

男も女も長く働かねばならない時代です。時代は否応なく変わりつつあるのです。そんなビジネスの現場で、自分が女だからって意味もなく一歩引いて男を立てるという古い時代の美徳をもちこんでモタモタしていたら、その意識が足をひっぱって生涯賃金がチャリンチャリン減ってくよ!

今回の受講生のみなさんには、自分はしっかりした良い研修を受けてビジネス・マナーの真髄を学び、型を教わったのだという自信をもって、胸をはって現場に出ていってほしいと思いました。

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