サラリーマンのプリズム
二十代の半ばに渋谷にすんでいたころ、わたしは、ごはんを食べ損ねた残業日の夜は、いまはもうない「田神」というバーに行って、時々「何か、美味しいもの」をつくってもらっていた。
その夜も一人で田神にいた。お腹も満ち足りてボケーッと飲んでいたら、隣にすわった、3つか5つか年上くらいのお兄さんが話しかけてきた。
カウンターの中の二人が揃ってゴツい大男で、常連さんたちも筋の良いお店だった。一人で酔っていても、変なナンパとかはない、あっても助けてもらえる安心感があって、警戒せずに飲んで