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#いい時間とお酒

不味くて美味しいお酒

不味くて美味しいお酒

身についた仕草のように缶のふたを開け、キンキンに冷えた影響で滲み出る水滴が手のひらを濡らす。缶を傾け、冷えたビールを口の中に含む。味を感じるよりも先に、ほどよい炭酸が舌の根元を通って喉にたどり着き、やがて胸の辺りがさっぱりとする。炭酸が薄くなった頃にようやく、ちょっとした苦味と一緒に発酵した麦の香りが口の中に広がる。冷静に考えればそんなに美味しいとは思えない。今冷蔵庫の中で眠っているコーラの方が美

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