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【これイチ】これ1冊でわかる『北極海航路』の教科書

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地球温暖化による北極圏での海氷減少やスエズ運河での座礁事故による国際貨物輸送網のリスクなどから、徐々に注目を集めるようになった「北極海航路」について、教科書のように網羅的に、わか… もっと読む
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記事一覧

Voy.12【これイチ】船にも階級制度!?アイスクラス

【これイチ】『北極海航路の教科書』シリーズ **第12航海* 北極海航路を商用利用する船舶であれば、是非とも獲得しておきたい「称号」がある。 「アイスクラス」だ。 そのまま日本語にすれば「氷階級」だが、氷海中を安全に、かつ環境に配慮した航行ができる性能を持つ船舶に与えられる船級証書ということになる。 アイスクラスは「クラス」なので、各船級協会が船舶所有者からの登録申請に基づき認証する船級の一部となっている。 ここで「各船級協会」と書いたのは、アイスクラスの「クラス分け」

Voy.11【これイチ】北極海航路での安全運航

【これイチ】『北極海航路の教科書』シリーズ **第11航海** 【これイチ】シリーズも11航海目を迎えました。 これまでは、北極海航路を利用するためのベースとなる知識や重要な検討事項などについての概論でした。 これからは、北極海航路を利用するにあたり、実際に日々の運航業務・オペレーションにとって重要となる要素について、ひとつひとつ詳細に掘り下げて見ていきます。 ですが、その前に本航海では「船舶」や「海運」の分野で仕事をする私たちにとって、イチバン大事なことについて、もう一

Voy.10【これイチ】Top5ランキング!北極海航路のリスク

【これイチ】『北極海航路の教科書』シリーズ **第10航海** リスクを知って、安全運航! 前航海では、北極海航路利用のメリットについて見てきました。 アジアとヨーロッパを結ぶ航路が短くなるのであれば、「今すぐにでも使いた~い」と思われるかもしれませんが、一旦お待ちください。 はやる気持ちを抑えつつ、本航海では北極海航路利用のデメリットとなり得る「リスク」について見ていきます。北極海航路を利用する上での適切なリスクの把握とリスクレベルの評価は、船舶運航の安全性や経済性を

Voy.9【これイチ】使わないなんて損!北極海航路のメリット

【これイチ】『北極海航路の教科書』シリーズ **第9航海** アトラクティブなメッセージの注意点 北極海航路は地球の極地に存在する航路だ。利用実績も少ないし、永続的な利用にはまだまだ課題も多い。 アジアとヨーロッパを結ぶ航路なら、定番のスエズ運河ルートがある。 しかし、最近になって北極海航路が注目を集める理由は、 メリットがある! からだ。 もしくは、メリットがあると思われているから、それがホントがどうかを検証中といったところかもしれない。 これまで【これイチ】での

Voy.8【これイチ】いつからあるの?北極海航路のヒストリー

【これイチ】『北極海航路の教科書』シリーズ **第8航海** 温故知新とは言うけれど 今日、船舶航行の世界にもデジタル化の波が押し寄せ、AIを活用しての「自動操船」や「運航無人化」などが現実的になってきており、技術革新と共に安全運航の要であった船舶職員の在り方が変わりつつある。 私が航海士だった時代には、GPSで自船のポジションがわかるだけでも相当楽をさせてもらっていたという感じがする。レーダーやGPSがない時代に船員だった人々には尊敬の念を禁じ得ない。 北極海航路でも

Voy.7【これイチ】数字で見よう!北極海航路の航行統計

【これイチ】『北極海航路の教科書』シリーズ **第7航海** 注目量増加のキッカケは何? これまでの航海で「北極海航路が注目されてきている」とか「北極海航路の航行数が増えてきている」などと記してきたが、これは「ニワトリとタマゴ」のようなものかもしれない。 注目されてきたから、その優位性に気付いた船社が航行実績を重ねるようになったのか。航行数が増えてきたから注目されるようになったのか。どちらが起源になったのかは実際のところ、よくわからない。 こういう時(科学的に根拠を示せな

Voy.6【これイチ】使い道は2つ?北極海航路の利用目的

【これイチ】『北極海航路の教科書』シリーズ **第6航海** 素通りでもOK!北極海航路 船の仕事は、貨物や人を目的地まで運ぶことだ。出発地の港を「仕出港(Port of Origin)」、目的地の港を「仕向港(Port of Destination)」という。そして、その両地点間の航行を「航海(Voyage)」という。 仕出港と仕向港が異なる多国間の航海であれば「国際航海(International Voyage)」、同じ国内での航海であれば「内航(Domestic

Voy.5【これイチ】温暖化でどう変わった?北極海の海氷

【これイチ】『北極海航路の教科書』シリーズ **第5航海** 壊れかけのレイゾウコ ♪ 北極海航路における船舶運航の大きな特徴のひとつとして、海氷に覆われた水面をを航行する「氷海操船」がある。この「氷」の存在というのが、なにをおいても北極海航路における安全性や経済合理性、環境保護などのあらゆる観点における最大の関心事でもある。 私が担当した北極圏での天然ガスプラント建設プロジェクトにおいても、北極海航路を経由するロジスティックを計画する使命を背負った瞬間から、この氷との闘

Voy.4【これイチ】海上物流網再構築で注目される北極海航路(スエズ運河座礁事故との関係)

【これイチ】『北極海航路の教科書』シリーズ **第4航海** スエズ運河座礁事故からの教訓を活かせ! 2020年初めより世界中に新型コロナウイルスの脅威が広がり、物流の世界にも大きな混乱を生じさせた。いわゆる「巣ごもり需要」によって個人消費材の世界的な貿易量が拡大したことで、国際物流網の需要が一気に拡大したのだ。平時であれば、この活況は歓迎すべきことかもしれない。しかし事態はコロナ渦だ。外出制限や時短勤務などの制約により港湾労働者が減少され、港湾機能が著しく低下してしまっ

Voy.3【これイチ】海運ルートとしての北極海航路

【これイチ】『北極海航路の教科書』シリーズ **第3航海** 北極海と北極海航路は何が違うの? 北極海航路は、その名が示す通り北極海に存在する航路である。 どちらも「海」を舞台とした言葉を表していることに違いはないが、両者の違いについて触れておきたい。 まず、「北極圏」についての定義を確認しよう。 「北極点」は言わずも知れた、地球の自転軸が通る北緯90度の地点である。「北極圏」とは、北極点を中心に北緯66度33分までの間のエリアを指す。 極夜もしくは白夜が発生する北半球

Voy.2【これイチ】北極海航路も国際航路の仲間入り!?

【これイチ】『北極海航路の教科書』シリーズ **第2航海** 憧れの北極海航路!? 「北極海航路」って言うけど、「航路」ってそもそも何なのでしょうか? 「航路」とは、一般的には「船の通り道」を表しているわけであるが、海運の世界では、「航路」とは何かしらの条約・法律・規則等で明確に船舶の通り道であることを定義している。 身近な例で言えば、東京湾の入り口にある「浦賀水道航路」などである。同航路は、日本の「海上交通安全法」という法律で定められた航路であり、長さ50メートル以上

Voy.1【これイチ】世界を変えるぞ!北極海航路

【これイチ】『北極海航路の教科書』シリーズ **処女航海** 北極海航路って知っていますか? 「北極海航路」が最近注目されてきている! アジアとヨーロッパを結ぶ海上物流網が短縮される!? スエズ運河の代替ルート! 温暖化で北極海の氷が無くなる!? フランスのワインやチーズが安く買えるようになる!? 上記のようなキャッチ―な言葉に見覚え、聞き覚えはありませんか? これらはみんな「北極海航路」の未来を読み解くヒントになるかもしれません。そもそも、なぜ北極海航路につ