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韓国ドラマの繊細さ、日常を丁寧に描き泣けるヒューマンドラマ5選

❷ マイ・ディア・ミスター 私のおじさん 나의_아저씨(2018)


孤独で生きづらくても人との絆に希望を見出せる、号泣どころか嗚咽するほど泣けるドラマ

是枝裕和監督がこの作品を見て『ベイビー・ブローカー』にイ・ジウン(IU)を起用したほどの名作。
第55回百想芸術大賞でTV部門作品賞と脚本賞を受賞し、2018年の放送から4年経った2022年3月に初の台本集が発売されており、その台本集には作曲家でありピアニストの坂本龍一氏の推薦文が掲載されるほど。
このドラマがいかに素晴らしいかを物語っている。

寝たきりの祖母を介護しながら借金取りに追われ、派遣社員として働く会社では名前で呼ばれることもない。
生きることをあきらめたくなってもおかしくないジアン。
三兄弟の真ん中、家族にも会社でも言いたいことを全て飲み込んで生きてきたドンフン。
感情を持てなくなった2人がお互いを静かに助け合うことで、感情を取り戻せるようになる蘇生のドラマ。
その丁寧な過程を描いた脚本と、俳優陣達の演技が本当に素晴らしい。

また、この2人を取り巻く母親、兄弟、地元の友達、その人達も生きづらさや切なさを抱えて生きているからこそ、あたたかい。
この人達がいたから、2人が希望を持てるようになる、その背景の描き方が秀逸でした。
借金取りのチャンギヨンも切ない役が、上手かった。

1.生命力のない目の演技が凄すぎるIU

警戒心を持っている表情含めて、IUの繊細な表情の変化が素晴らしかった

とにかく可哀想で不幸を背負う役。IUという国民的アイドルが、そのかけらも見えないほど。
歌もスペシャル上手いのに演抜まで超一流で、感性とその表現力は天才的。
ドンフンやその周りの人と出会うことで泣けるようになり、笑うこともできるようになる。
その繊細に変わっていく過程が素晴らしく、見ている側が癒されていく。

2.歩く後姿、その背中の哀愁で泣かせるイ•ソンギュン

踏切を渡る後姿が泣ける

抑えに抑えた演技が見ていてもどかしいほどでした。
感情を出すことができなかったドンフンがジウンと出会い、こちらも泣けるようになり、人に気持ちをぶつけられるように変わっていく。

そして、ジウンが盗聴した電話から聞こえる、ドンフンの声が穏やかで優しい。
電話越しに自分のことをあの声で『いい子だ』と言われたら泣けてきます。
逆にドンフンが電話越しに泣く声が聞こえてくるシーンは切なすぎて嗚咽します。

もう一つ、ドンフンが踏切を渡る後ろ姿、中年の人間が抱えるやるせなさや、諦めなど、哀愁が感じられ、見るたびにこれまた嗚咽。
この後ろ姿で表現しようとする演出と演技力が素晴しくて、後にも先にもこんなに心が揺さぶられるシーンはないです。

この踏切のロケ地情報がたくさんあるので、多くの人が共感したのもわかります。
ロケ地情報を載せてくれているブログがあります。

3.情が深い後渓(フゲ)の人たち

ドンフンの兄弟達の愛情の深さがこの暗いドラマに光を与えてくれる。
長男のサンフンと三男のギフンはともに好き勝手、でも何をやってもうまくいかない。
それなのに、飲んでばかりでひたすらめげない2人の明るさと優しさに救われる。
根底にあるのは、母親への労りと兄弟同士の信頼関係。
すごく仲が良いのに押し付けがましくない、本当に羨ましくなる濃厚な兄弟愛。


もう1人、地元の仲間達が集まる『ジョンヒの店』のジョンヒ。
思う人を忘れられず独りで生きていく虚しさと切なさに涙が止まらない。
毎日仲間達と居酒屋から歩いて別れて、またその居酒屋に独りで帰り、泣きながら自分を励ます姿。100万本のバラの音楽がさらに情感を深めてくれます。

こちらのブログに書かれている内容に共感です。

4.演出、脚本、音楽、全てが秀逸

演出は『シグナル』と『ミセン-未生-』のキム・ウォンソク。
脚本は『また、オ・ヘヨン』、『私の解放日誌』のパク•へヨン。

主演の2人にとっての名言は、というインタビューで
ソンギュン: 僕にとって“何てことない”というセリフは人生に行き詰まった時、自分自身に言い聞かせることで前に進むことができる言葉になりました。

IU:ジアンが後渓メンバーに“今よりつらくないから早くその年になりたい”と言うセリフがあります。
もちろん間違っているのですがジアンがどういう気持ちで言ったのか私には分かるんです。ユラも同じようなことを、よく後渓メンバーに言うのですが私は共感できました。

蘇生されていく2人を見ながら癒されるドラマでした。

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